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Fieldism New Songs Selection (December 2021 Part.2)

↑Part.1はこちらから

 正月明け仕事が始まって面倒くささを感じている皆様、ご機嫌いかがでしょうか。Ryotaです。

 日本国内でもコロナが再流行して、すでに行こうと思って予約していた公演をいくつかキャンセルせざるを得ない感じになっており、新年早々フラストレーションが溜まっています。今年も他で活動しているイベンター各位に比べてあんまりライブハウスに足を運べなさそうなのに、かといって何もやらずに〇〇大阪に呼びて〜とか無い物ねだりというかワガママなんて言えないんで今はやるべきことをやろうと思います。そもそも「ライブイベント主催する人間が自分の好きなバンド、しかも自分のイベントに呼ぼうとしているバンドのことを理解しようとしないってどないやねん?」ってずっと考えてたので。

 というわけで、前記事でも言及した通り、昨年12月にリリースされた作品で刺さったバンドを取り上げていきましょう。


Of Jams, Smokes, Promises: ibelieveonlyyourself
シングル (Bandcamp: 12/15, ストリーミング: 12/16~17)

 仙台で新しく結成された叙情ハードコアバンドの1stシングル。同じく仙台で活動しているデスコアバンド提婆達多(Devadatta)からSuguru Ohtaka(Vo.)と溝井(Gt., OJSPではBa.)が在籍しております。タイトル名がNapoleonの楽曲からインスピレーションを受けたのもセンスに満ち溢れています。

 同じ東北の叙情ハードコアバンド、A Wish To The Starlit Sky(福島)を彷彿とさせるストレートな疾走パートを基調としながらも、途中7/8拍子を挟んだパートやポリリズムに片足を入れたようなチャグパートなど、緩急のついた曲展開が特徴的なVo. Suguruが称する「俺的叙情STYLE」になっており、オリジナリティが垣間見える楽曲になっているかと感じました。

Vo.のSuguruは歌唱だけではなく、ミックス・マスタリングにも携わっており、彼の多様なスキルが伺えます。


The Northern: Cloudburst
EP(ストリーミング: 12/17)

 カナダ・トロント発プログレッシブメタルコアThe Northernの最新EPから、以前はEarthists.Invent AnimateERRAなど名だたるバンドを輩出したTragic Hero Recordsからアルバム「Solstice」をリリースしていたのですが、今回はセルフでのリリースとのことです。

 ジャケットデザインが主張している通り、スケールの大きいエモーショナルな叙情性と硬質でカッチリとしたテクニカルな刻みを交えたサウンドは美麗。Vo. Nick Papageorgiouの獰猛なシャウトを交えたアグレッシブなパートと、ERRAのJesse Cashを彷彿とさせるDr/Vo.のAdam Linkaの突き抜けるようなクリーンボーカルの対比も見事と言わざるを得ません。

 最近プログレッシブ・メタルコアは似たようなサウンドのバンドが多くてなかなかトレンドが追えていないのですが、このバンドは純粋にクオリティが高いうえに何となくカナダ発の寒さと哀愁漂うオーラが見える気がします。


Certain: Sorry / Live Alone
シングル(ストリーミング: 12/15)

 ex-To The BottomやTime's Up! This YearのHayato(Gt), West Side UnityやFallen GraceのSULI(Vo)が在籍しており、大阪を拠点に活動している叙情ハードコアバンドが3年ぶりに音源をリリース。ぼくのなつやすみ&となりのトトロのような少年時代の田舎の夏休みを彷彿とさせる、哀愁を内包したメロディックハードコアサウンドとVo. SULIの激情的なシャウトをメインに熱量多めに駆け抜けていくスタイルが特徴的です。

 Tr.1の「Sorry」はGUSANOSを彷彿とさせる京都系の単音叙情リードと温かみのあるクリーンのリードギターと一緒に展開される「ぼくのなつやすみ直系モッシュパート」が聴きどころで、Tr.2「Live Alone」は疾走パートともにGt/Vo.のManamiの女性クリーンボーカルで曲に彩りを持たせており、両曲ともそれぞれのベクトルで良さがあふれる作品。

 あまりライブしないほうだと思いますので、まだまだ難しい状況ですが時間があったら是非生で観てほしいバンドの一つ。


All My Paranoid: GELOZIA
シングル(ストリーミング: 12/22)

 東京を拠点に活動するデスコアバンド3年ぶりの音源かつ、Abduction of Belen(解散済)で活動していたVo.Keigoがボーカルを務める最初で最後の音源。筆者は生で1度3年前の町田クラシックスのライブで観たことがあるのですが、あまりのブレイクダウンの重さに腹痛をもよおしてトイレに駆け込んだことがあります。

 自分の話はこれくらいにして肝心の楽曲ですが、表題曲「GELOZIA」は楽曲始まって35秒あたりでずるずると血みどろの体を引きずるようなヘヴィなブレイクダウンを交えつつ、曲が半分過ぎたあたりでさらにスローになる2段構えでフロアのオーディエンスを血祭りにあげること間違いなし。曲中に挟まれるグリッチ的なサウンドエフェクトや、EversolitudeのBa.NORAが携わっているMVも狂気渦巻くサウンドを引き立てていて最高ですね。

 Vo.のKeigoが3月末で脱退するのですが、今後はサポートボーカルを立てて活動を継続していくとのこと。


Lost in again: 1933.
シングル (ストリーミング: 12/22)

 2019年に始動した東京発モダンメタルコアバンドの2ndシングルから。先日アンチノックで先述のAll My ParanoidやダウンテンポバンドBloom in the Crevasseなどを招いてレコ発を行ったのも記憶に新しいですね。

 ローチューニングを用いたアグレッシブなリフワークと空中を浮遊しているかのようなアトモスフェリックなメロディ、そしてところどころ不穏さと緊張感を醸し出すサウンドエフェクトはAvianaを彷彿とさせるリスナーもいたとか。確かにそう言われると何となくEpicenter期のそれが思い浮かびました。December Everydayのひでぽんさんが携わるSurrounding Studioの効果を抜きに考えてもタイトなサウンドだと思います。東京のメタルコアバンドらしく、正統派なところを狙っていると言えます。

 まだ2曲しか楽曲をリリースしていないのですが、十分今後が期待できるはず。SHINOVI Creative (From The AbyssのVo.KoとBa.Yutoがやっているデザインチーム)のジャケットデザインもモダンなメタルコアのアトモスフィアを感じさせます。


Demoralizations: Automaton
シングル (ストリーミング: 12/23)

 ex-EMBARK, HEARTPLACEのDEATHBED(gt), ex-POSTHUMANITYの弦(Vo.)を中心に、今年から始動したエモーショナル・アンビエント・メタルコア/デスコアプロジェクトが、デビュー作「Neo Prove」に続く2作目の作品をリリース(簡単なバンド紹介は「2021年刺さったアーティスト Part.2」でも紹介しているのでそちらも参照)。

 時折カオティックな展開を挟みつつも、叙情メタルコア/ハードコアを続けてきたGt.DEATHBEDのゼロ・グラビティ感のアンビエントなメロディ+時折2010年代初期~中期のMediaskare Records直系のソリッドでタフな緊張感のあるディストーションサウンドの組み合わせに、Vo.弦の高音の金切り声と中低温のグロウルが駆け巡るスリリングなトラック。曲の終盤には、東京発ヘヴィメタルコア/デスコアDelusionistのGt. Daisuke Tabaの複雑で流麗なソロをフィーチャリング。

 バンドの世界観とDEATHBEDのオタク的バックグラウンドが分かりそうな90年代のSFアニメ(タイトルわからなくてすいません)をフィーチャーしたMVにも注目してほしいところ。


makeshift: Hollow square, drowning sun 
シングル(ストリーミング: 12/24)

 Embrace The Wings, RiTTLEBOYなどのメンバーが在籍し、東京を拠点に活動しているメロディックハードコアバンドの最新シングル。また、筆者が携わった企画「Buried Alive」に出演したダウンテンポメタルコアバンドWEDGE//BRINGERで活躍していたVo. Naoki加入後初の音源。正直今までやっていたバンドのジャンルを考えると意外としか言えなかったです。

 日本語詞・単音ギターのメロディーを入れてくる国内の叙情派ハードコアが多い一方で、CounterpartsMayfieldあたりのコード感が特徴のタフで青臭いハードコアを奏でます。Vo.Naoki加入後のライブや音源を聴く限り「以前とはかなりアプローチを変えた」とのこと。本人もそう言っていたし何なら「メロディックハードコアバンドやりだしてからちょっと性格が明るくなったと思う」って呟いてたくらいなので。所々バックで聞こえるクリーンコーラスも哀愁感に拍車をかけていて◎。

 個人的には2:31~のテンポが下がる部分は膝を折って拳を掲げずにはいられなくなります。


END IN BLOOD: the gleam of the gloomy night
EP (フィジカル: 12/27)

 東京を拠点に精力的に活動しているニュースクール・ハードコアバンド。大阪でもCDショップ礎が主催するイベントに出演していたりしていて筆者も何度かライブを観ているのですが、Vo.のANALが中国出張を経てバンドへ復帰し3年半ぶりのEPをDEAD SKY RECORDINGからリリース。

 黒いパーカーやバンダナや手袋をしているモッシャーを思い浮かべそうな関西シーンをはじめとした国内のハードコア+欧州エッジメタルのエッセンスを残しながらも、中世の戦争を彷彿とさせるメロディアスかつドラマティックな展開はより洗練されたかと。うまみ溢れるメタリックなリフや異臭騒ぎ必至なリードパートにはJusticeと言わざるを得ません。フロアが荒れ狂う様が容易に想像できるブレイクダウンパートも必聴。また、Tr.3の「Invariant」はインストながらウォームで煌びやかな音作りが特徴的な、バンドの新境地ともいえる一曲。

 この音源のリリースをもって各地ツアーを回ることも決定しており、(状況次第ですが)2月の名古屋と3月の大阪は観に行こうと思っています。安定感のあるパフォーマンスと熱量はハードコアリスナーじゃなくても観てほしい。


HOUND: REGENERATE
EP(ストリーミング: 12/22, フィジカル: 1月)

 Shark Ethic, ISOLA, G.N.S.D.などで活動しているメンバーが在籍しており、「Play Night」や「Place To Arrive」に携わっている東海地区の人気イベンターぴこがVo.を担当する2019年始動のダウンチューニングハードコアバンド。先月の初めにTEMPLEの企画で初めて大阪来てくれましたが、最高でしたね...。

 彼らのライブで味わえる、危険で緊張感の張りつめた雰囲気をそのまま再現したかのような生々しいサウンドは「ライブハウスで踊り狂うオーディエンス」を容易に想像することができると思います。重厚感あふれるミドルパートからアグレッシヴに攻めるアップテンポ、うねるようなグルーヴ、容赦ないビートダウンが表現する、息苦しくなるような重々しさが醸し出す極悪な雰囲気に吞まれてほしいです。

 国内のハードコアシーンに触れている方はもちろんのこと、KUBLAI KHAN TX, Varials, Knocked Looseあたりのダウンチューニングハードコア好きな方は是非聴いてほしいなって思います。


ZETTON: Operated
EP (フィジカル: 12/22)

※ストリーミングサービスやYoutubeなどでの試聴動画なし、通販サイトなどでお求めください。

 ILSKAStainedで活動中のメンバーも在籍している、全国から注目を集められつつある岡山ハードコアシーンDARKSIDE OYCに所属するバイオレントビートダウンギャングスタZETTON。コロナ禍直前に行われたMOSH ACADEMY 東京OLYMPIK 2020でも「OKAYAMA STYLE」の授業で講師を務めたのも記憶に新しいですね。その時のライブ映像も残ってます。

 国内外の現行メタリックハードコアや、先述の黒パーカー+バンダナ+手袋の怖いモッシャーが出そうな関西極悪ハードコアから影響を受けており、サンドペーパーのように粗くざらついた歪みのメタリックサウンド、聴いてるだけで窒息しそうな圧迫感が耳を支配するミドルテンポ、そして要所でモッシーかつグルーヴィーに煽るアップビートはまさに音の暴力。彼らの極悪さを象徴した禍々しさあふれるジャケットアートからも異様な雰囲気が漂います。

 音楽性が近いところに、大阪のハードコアクルーWestside UnityからUNHOLY11というバンドもいるのですが、そのバンドと併せて聴いてもらえると旨味が増します。


 ということで、2021年すでに終わってしまってますが前回のPart.1も含めて昨年の12月リリースで興味をそそられた音源をまとめさせていただきました。この中で1バンドでも興味が出てきたら、厳しい状況ではありますが是非ライブハウスに足を運んでみてください。素敵な音楽で生活を豊かにしていきましょう。


ここまでお読みいただきありがとうございました。感想とかTwitterやコメントでもらえると筆者が喜びます。

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