Fieldism New Songs Selection May 2022 (Part.1)
↑前回の新譜特集はこちらから
ゴールデンウィークが終わって約1週間、職場の決算(7月末)が段々近づくに連れてプレッシャーを感じている社会人6年目のRyotaです。いつもお世話になっております。
ようやく記事のリリースラッシュもひと段落し、ようやく通常のリリースペースに戻れる...とつかの間の休息を享受しています。
先日Twitterでも告知した通り、10月29日(土)に「Buried Alive II」を開催する予定です。出演アクトはまだ発表できませんが、既に県外からのゲストが何バンドか決まっております(しかも現状初大阪のバンドも...?)ので、今後の動向に引き続きチェック&出演アクトが解禁されたら是非遊びに来てほしいですね。間違いなく前作のメンツより強力な感じになりそうなのでソールドさせたいです。
ちなみに、前回がどんなイベントだったかは下記リンクからご確認下さい。
前置きはこれくらいにして、今回も行きましょう。
リストアップの条件ですが、下記2点です。
1. 5/1~5/10にフィジカル/ストリーミング/DL販売/MVのいずれかが解禁された作品(基本的により多くの人にアクセスできる手段を優先します)。
2. フルアルバム or EPのリリース時期がある程度明確にアナウンスされている作品の先行シングル、および既存楽曲のリマスターやカバー等は選出対象外。ただしアルバムのデラックス盤のみetc.に収録予定の楽曲は選出対象。
1. NOCTURNAL BLOODLUST: ARGOS
アルバム (ストリーミング&フィジカル: 5/4)
ヴィジュアル・シーンの枠を超え、多くのメタル・ハードコアリスナーにも認知されているNOCTURNAL BLOODLUSTが約8年ぶりにアルバムをリリース。メインコンポーザーの脱退、''UNLEASH'' リリース直後のメンバー逮捕騒動、コロナ禍諸々ここ数年続いた苦難を乗り越え、新たにGt. Valtz & Yu-taro (A Ghost Of Flareの中心人物) が加入し新体制になって約1年半、モダンでソリッドな音像にブラッシュアップ / 今までのアグレッシブな楽曲はよりスケールアップし、完全復活を果たしました。
現体制でシングルとしてリリースされた楽曲 Tr. 11 ''THE ONE'' 他3曲含めた全12曲入りのフルアルバム ''ARGOS'' は、100の目を持つという、ギリシャ神話に登場する巨人にちなんだタイトルに違わず隙のない作品に仕上がっており、Tr.5 ''Dagger''やTr.7 ''Cremation (feat. PK of Prompts)'' などValtzが手掛けたデスコアばりのヘヴィネスを押し出した曲から、女性コーラスとギターワークがAGOFのそれを連想させるYu-taro作曲の Tr.3 ''Straight to the sky (feat. Luiza)'', バンドの完全復活を証明する疾走系叙情メタルコアTr.12 ''Reviver'' など、全曲何かしらのインパクトがあります。
''UNLEASH'' のコミック感はもはやなかったこと扱いにされてますが、根本のエクストリームサウンドを再解釈するという判断は、以前の形ではなくても多くのリスナーが期待していたものだと感じます。
2. Silverstein: Misery Made Me
アルバム (ストリーミング&フィジカル: 5/6)
カナダ・オンタリオ発スクリーモ / ポストハードコアSilversteinの最新アルバム。2000年代のエモ・スクリーモを語るには欠かせないこのバンドも結成から20年を超えているこのバンド、作品を重ねるごとにそのサウンドは成熟しつつも、ポストハードコアとしての解釈を広げトレンドを積極的に吸収していく側面を見せております。特にUNFDに移籍後初のアルバムになる前作 '' A Beautiful Place to Drown'' はエレクトロ / ロックサウンドのアプローチを取り入れおり、新鮮味とキャリアの裏付けを両立させた作品でした。
「22年間の活動の中で、最もヘヴィで、最も悲しく、最もキャッチーで、最もエモーショナルな音楽が完成した」とVo. Shane Toldが語る、移籍後第2作となる ''Misery Made Me'' の音楽性は前作の延長上にあります。いつものSilverstein節な楽曲Tr.1 ''Our Song'', Comeback KidのVo. Andrew Neufeldをゲストに加えた骨太なハードコア要素の強いTr.2 ''Die Alone'', ラッパーnothing, nowhere.がfeat.したドラムンベースが特徴的なアリーナロック Tr.10 ''Live Like This'' など、他にもまだまだ言及できますが色彩豊かでバラエティに富んだ楽曲陣はリスナーを飽きさせません。
「パンデミックに直面したことで変わってしまった現実をどう受け入れるか」をテーマにした今作、リスナーの様々な心理状況に寄り添ったSilversteinの集大成的な作品であることは間違いありません。
3. LIKE A KID: HEAVEN OR HELL
EP (ストリーミング&フィジカル: 5/1)
AlternationsのVo. KentoやEternal HostageのGt. Hikaruが在籍している、東京を拠点に活動しているオルタナティヴ・ロック/ポストハードコア・バンドの2nd EP。まだ結成から1年半ながらも、エモ、スクリーモ、ポストハードコア、メタルコア、ポップパンク、オルタナなど様々なバックグラウンドを昇華したサウンドでここ最近周りでの注目度が高まっている印象です。先日知人がサポートベースを弾いているA Brand New Nameの企画でもFall of Tearsと一緒に出演していたのも記憶に新しいです。
1st EP ''HALLELUJAH'' 以来1年ぶりにリリースされた今作は、メンバー達のルーツ&こだわりをどのように2020年代のエモとして再解釈したかを提示した作品に仕上がっており、一音一音こだわったとメンバーが語るトラップ・チルアウトっぽいシンセと上記のジャンルから影響を受けたバンドサウンド、そしてMV曲 ''Sunrise'' みたいに晴れた青空の下を孤独に立ち尽くしたような一瞥の寂寞・儚さを連想させるVo. Kentoの伸びやかなボーカルが組み合わさっており、LIKE A KIDとしてオリジナリティにあふれております。
また、今作からUNBLEEDでも活躍しているGt. Kimuraが新しく正式に加入&作曲はもちろんレコーディング・ミックス・マスタリングにも携わっております。
4. Lost in Seiren: For The Feeling As I Drown
アルバム (ストリーミング: 5/7)
名古屋を拠点に活動しているメタルコア・ポストハードコアバンドLost in Seirenが待望の1stアルバムをリリース。ハードコアやポップパンクが強い印象がある名古屋のライブシーンの中でも異彩を放っており、ピアノ・オーケストレーションなどのアレンジを積極的に取り入たそのサウンドは繊細で美しいことで定評があります。また、Vo. Ryutoの表現する苛烈なスクリーム/伸びやかなクリーンも、大海を連想させるこのバンドの神秘さを後押ししています。
Tr.7 ''Growling Dark'', Tr.3 ''Disrupted'' など先行でリリースされた4曲を含めた1stアルバム ''For The Feeling As I Drown'' は、そんなLost in Seirenの「深海に漂っている」かのような雰囲気を心行くまで体験することができ、悲壮感に包まれた3拍子バラードのTr.4 ''Meltdown'' やツービート&ブレイクダウンを交えたバンド史上最もアグレッシブなTr.9 ''Perish'' 、そして初の非バンドサウンドのみのボーカル曲(のはず)Tr.8 ''Oblivion''など、バラエティ溢れる全10曲が収録。美しい情景に目と魂を奪われて、二度と現実に帰りたくなくなります。
先日行われたYuzurihaのラストショーで久しぶり(筆者が行ったUNWAVERINGのレコ発以来かな?)にライブもやったのですが、誰かその日のライブを観た人の中で今作の楽曲がどのように映ったのか教えてください。
5. Eversolitude: INNER GHOSTS
シングル(ストリーミング: 5/4)
東京を拠点に活動しているEversolitudeが待望の新曲をリリース。2度にわたるボーカリストの脱退からVo. Tayoriの加入 & 改名を経て1年ちょっと、前体制の時期からオルタナティブロック・マス・ポストロック・アニソン・アイドルソングなどの影響を受けつつも、多面的かつ自由でジャンルに縛られないアプローチをとっております。また、このバンドの売りである「糸を丁寧に縫い合わせるようなギターワーク」も作品を重ねるごとに複雑さを増しています。
「ジャンルとかほんとどうでもいいしやりたいこと全部やる」をテーマにした今作は、歪んだギターの音もシャウトも封印&バンドで今までやったことのないリズム回しなど遊び心をふんだんに取り入れてこれまでの作風とは真逆のベクトルへ踏み出しながらも、タッピングとアルペジオを交えた非対称的な(=右と左でやっていることが違う)ギターワークなどは脈々と受け継がれていて、聴いていると ''やっぱEversolitudeだよね'' と感じます。Vo. Tayoriの歌うサビメロが「YOASOBIかな?」って誰かが言ってましたが、何となく納得してしまうのはなぜでしょう?
現体制になってより多くのリスナーにアプローチできる作品をリリースし続けるEversolitude、メタルコア時代から追いかけてきたリスナーがどう思うかわかりませんが、違うバンドになったと自分は微塵も思っていません。
6. Thousand Below: Venenosa
シングル (ストリーミング: 5/4)
アメリカ・カリフォルニア州サンディエゴを拠点に活動しているポストハードコアバンドの新曲。前作 ''Gone In Your Wake'' は初期の2000年代スクリーモ・エモ影響下の叙情的なメロディとちょうどいい塩梅の重量感を保ちながらも激情的な要素は鳴りを潜め、空間の広がりを感じさせるエレクトロサウンドが特徴的な ''Chemical'' など、透きとおったサウンドとVo. James DeBergのハイセンスなメロディが冴え渡るミドルテンポの楽曲が多い印象でした。
古巣Rise Recordsを離れ、(おそらく)インディペンデントになってから初のリリース位になる ''Venenosa'' はそんな前作の作風をアップグレードさせた曲になっており、曲調の疾走感的には ''Disassociate'' 辺りのアグレッシブなトラックを連想させますが、どこか奥行きを感じさせる透明感あふれるシンセアレンジが前面に押し出されています。途中チューニングが一気に下がるブレイクダウンパートはありますが、サビパートではエモーショナルでキャッチ―なJamesのサビメロディを堪能することが出来ます。
現在Savage Hands & Dead Lakesと全米を回っている最中の彼ら(元々Sleep Wakerが参加する予定でしたが)、そろそろ3rdアルバムにも期待したいです。
7. Made In Me.: Weather Re:port
EP (ストリーミング & フィジカル: 5/4)
''ゼノ・ミクスチャー・ロックバンド'' を標榜する横浜町田発Made in Me.が1stミニアルバムをリリース。昨年初の全国流通盤 ''Re:Habilis'' をリリースした彼ら、MVになったリードトラック ''東京回廊'' を始め、ロックやヒップホップ、エレクトロ、ポップスを横断した独創性豊かな楽曲がそろった「ベスト盤のような1stアルバム」の印象で、3月まで「憧れてるのは最上階の方ツアー」が行われていたのも記憶に新しいです。
その勢いを保ったまま前作からわずか半年でリリースされた5曲入りミニアルバム ''Weather Re:port'' は、遊び心あふれつつも「天気をモチーフに繊細な感情やドラマチックな心象風景」をテーマにしたコンセプチュアルな世界観はこれからの暑い季節にぴったりで、夏の教室を連想させる甘酸っぱい青春トラック Tr.1 ''虹橋Realize''、部屋で一人明け方まで酒を片手にだらだら歌詞を書いている情景が見える Tr.3 ''情DARU流'' 、Vo/Syn. のゆかりのボーカル・スポークンワードを前面に押し出したラブソングTr.5 ''雨恋'' など、聴きどころが盛りだくさん。
今月末よりこの作品を引っ提げて「ハズレたままの当たり棒Tour」で再び全国を回る彼ら、さらにツアー以外でもUNMASK aLIVE主催のフェス ''ONE AND ONLY FESTIVAL'' 1日目etc.にも出演するので、今までタイミングを逃してきたからそろそろ生で観たいですね。
8. Varials: The Cycle Of Violence: Chapter 1
アルバム (ストリーミング: 5/6)
アメリカ・ペンシルバニア州フィラデルフィアを拠点に活動しているハードコアバンドVarialsが新体制初になる新曲を発表。前Vo. Travis Tabron(前回の新曲紹介の通り、現在はErase Themで活動)の抜けた穴をGt/Cho. だったMitchell Rogersがリードボーカルに転向 & さらに2017年に一度脱退したGt. Shane Lyonsが再加入したのも記憶に新しい彼らですが、ハードコア・パンクの名門インディーズレーベルFearless Recordsの中でも最もダークでヘヴィな雰囲気を醸し出しています。
今回リリースされた約2分半のショートトラック ''The Cycle Of Violence: Chapter 1'' は前作のフルアルバム ''In Darkness'' でも特徴的だった、Slipknot, Nine Inch Nails, Deftonesあたりのインダストリアル / ニューメタルあたりの影響を感じた雰囲気からさらに一歩進み、Alpha Wolfのようなよりバウンシーでモダンなニューメタルコアへの傾倒が見られた印象です。しかしながら、メロウでダウナーなクリーンボーカルやアウトロの犯罪級のビートダウンなど前作を踏襲している部分も見受けられます。
立ちふさがるものを容赦なく蹴散らさんとばかりのアグレッシブさを一切ブラさずにより多くのリスナーにアプローチできそうな今回の新曲、なぜAll That Remainsの全米ツアーのサポートアクトに抜擢されたか納得して強います。
9. Stand Atlantic: F.E.A.R.
アルバム (ストリーミング: 5/6)
オーストラリア・シドニーを拠点に活動している女性Vo. フィーチャーポップパンクバンドの3rdフルアルバム。2019年に日本が誇るロックバンドONE OK ROCKが北米ツアーを行った際にサポートアクトとして抜擢されたこのバンド、キャッチ―かつフックの強いメロディとVo. Bonnie Fraserの力強いボーカルが売りで世界的にも注目度は高いですが、ポップパンクシーンの話題をかっさらおうとばかりの「問題作」がリリースされました。ちなみに ''F.E.A.R'' は ''Fuck Everything And Run'' の略です。
コロナ禍根で経験した苦難も相まって、今作は「やりたいこと全部やろう」とジャンルやコンセプトに縛られない自由奔放な作品になっています。フィーチャリングゲストを観てもわかる通りポップス・ヒップホップ要素を取り入れたヤンチャな楽曲陣、Royal & The Serpentのキッシュな歌声がエネルギッシュなポップパンクにマッチしたTr.2 ''pity party''、 nothing, nowhere. がfeat.したトラップ調のシンセポップが特徴的な Tr.6 ''deathwish''、疾走感からの退廃的なアウトロがカタルシスを生むTr.13 ''molotov (ok)'' など、一癖も二癖もある楽曲が盛りだくさん。
前作 ''Pink Elephant'' からある種の一線を越え革新的なアプローチをとり自分たちの音楽の限界に挑んだStand Atlantic、今年のポップパンク・シーンを語るには不可欠な作品になりえるでしょう。
Honorable Mentions
というわけで5月の上旬に音源をリリースしたバンドを9組取り上げましたが、Honorable Mentionsとしては、Fearless Recordsの新星ポストハードコアWindwakerのフルアルバム ''Love Language''
オーストラリア・シドニーのポストハードコア・メロディックハードコアHeistsのデビューアルバム ''Troubled Souls''
Pure Noise Recordsの若手カオティックハードコアChamberのEP ''Carved In Stone'' あたりも要注目です。
毎回締めの言葉が思いつかないので(ネタ切れ)、今回からは文末で細かく紹介することが出来なかったけど、注目に値する音源をいくつか上げていこうと思います。
ここまでお読みいただきありがとうございました。気に入ったら是非こちらのnoteや下記Twitterアカウントをフォローしてもらえると幸いです。あと感想やシェアして広めてもらえると励みになります。