【生理不順の治療】~ホルムストローム療法・カウフマン療法~
皆さんこんにちは
産婦人科医の内田美穂です。
皆さんの疑問に思っていることにお答えしていきながら、産婦人科を身近に感じていただくことでかかりつけの婦人科を探す際のご参考にお役に立てればと思っています。
今回は、生理不順の治療法~ピル以外のホルモン治療~「ホルムストローム療法・カウフマン療法」についてお話したいと思います。
また、よくいただくご質問にもお答えしています。
保険適応について
生理不順の治療の一環としてピルを使用することはよくありますが、実は、ピルは生理不順に対して保険適応にはなっていません。
今回は、生理不順の保険適応となっている主な2つの治療法「ホルムストローム療法」「カウフマン療法」について説明します。
その前にまず、生理をおこすにはエストロゲンと黄体ホルモンの二つのホルモンが必要になります。
黄体ホルモンは”排卵によって分泌されるホルモン”と覚えておいてください。
▼「エストロゲン」や「黄体ホルモン(プロゲステロン)」についてはこちら!
①ホルムストローム療法
エストロゲンは分泌されているけれど、無排卵で黄体ホルモンが分泌されていないときに行う治療法です。
無排卵の状態が長期に及ぶと大量の出血を起こしたり、子宮体がん発症のリスクがあがるため治療が必要になります。
この治療をすることにより、20%程度排卵が回復したという報告があります。
若年女性の無排卵だけでなく、40~50歳の閉経が近くなった女性の月経異常にも使用されます。
主な投与方法ですが、生理が始まって2週間後から10日ほどお薬を飲んで生理をおこします。
▼図を使った解説はこちら!
②カウフマン療法
一般的には、より重症な生理不順の方に行われる治療法です。
無排卵でかつエストロゲン分泌もないときに行います。
使用例としては、長期にわたって生理が来ていないような方に使用されます。
長期のエストロゲン不足は骨粗鬆症や脂質異常につながるため、エストロゲンの補充が必ず必要です。
エストロゲンの分泌がある無排卵はホルムストローム療法で治療すると先ほど説明しましたが、生理周期を確立するため敢えてカウフマン療法を選択することもあります。
長期にわたって生理が来ていない場合(エストロゲンの分泌がない)
エストロゲンの分泌があっても月経周期を確立させたいとき
カウフマン療法では、正常な生理周期に似せた体内のホルモン環境をつくっていきます。
一定期間治療を行うことによって10~15%の自然排卵を期待できます。
投与方法ですが、はじめにエストロゲンを補充して、後半に黄体ホルモンもあわせて補充していきます。
▼図を使った解説はこちら!
その他生理不順の治療法
このように生理不順の治療として、ホルムストローム療法やカウフマン療法をあげましたが、すぐの妊娠を希望がなく避妊も希望している場合、または生理痛、PMS、にきびなども同時に治したいという場合はエストロゲンと黄体ホルモン両方が含まれている「ピル」が選択されることもあります。
反対に、すぐの妊娠を希望している場合は「排卵誘発剤」を使用することもあります。
その方の状況によっても治療法が変わってくるので、産婦人科医とよく相談をして治療法を決めていってください。
Q.生理不順の薬はいつまで飲めばいい?
ここでよくある質問です。
A.ホルムストローム療法やカウフマン療法は副作用がなければ継続しても問題ありませんが、3~6か月ほど続けた後、一旦中止して排卵が戻るか様子をみていただいても構いません。
一定期間の治療により、排卵が戻ることもあります。
もし無排卵の状態が続くようであれば、再度治療の再開を検討してください。
それぞれの治療法について理解した上で自分の体に合う治療を選択してください。
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