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「デザイン思考やれ」と言われたら社長の机にこっそり置いておきたい一冊、『戦略の創造学』

ある日突然、マネージャーが「ところで、デザイン思考とか興味ある?社長がやれって言ってるんだが」という場面を体験したことがある人は少なくないのではないだろうか。

デザイン思考はおそらく2010年代に多く日本企業でもその重要性が認識され、「とりあえず、XXX万円つかってやってみよう」とかいうこともあったと思う。

そんな時は『戦略の創造学』を経費で購入し、社長室に潜り込んで、そっと机に置いておこう。

デザイン思考の重要性

2020年代に突入してもデザイン思考は引き続き需要がありそうだ。ただ、経営戦略と照らし合わせて導入されなければ、ただの絵に描いた餅どころでなく、社員が辞めていくなどの負のスパイラルに入ってしまう可能性もある。

戦略の創造学』は、日本人/日本の産業には「課題解決のための発想」をするための能力があるという我々にはポテンシャルがあるということの気づきから始まる。それにも関わらず、企業が存続を続けるために必要不可欠なイノベーションが起こせていない理由について(特にプロセス・イノベーションから脱却できない理由)、企業としての目的、戦略やビジョン、そしてそれらを構成するための手段としてのデザイン思考が連動していないこととしている。

高い参入障壁を飛び越えるための「共感」

「プロダクト」から「サービス」への移行、「モノ」から「コト」への移行みたいな話の流れでデザイン思考などが取り上げられることが多い。もちろん、デザイン思考の手法を使うことは有用なはずだが、その理由を本書では改めて気付かされる。

私達が「サービス」を意識しなければならなくなって背景として、「プロダクト」だけでは最終的にはコスト優位性という戦略を取るしかなくなるからということがある。「サービス」には、購入前からのあらゆるタッチポイントが含まれており、それを設計するということで、購入前・購入時・購入後のライフサイクル全般の「体験」を設計することで、他に移行するコストのほうが高くなることを狙っている(本書では逆に、参入障壁を飛び越えるための踏み台になり得ると書いてある)。

この「体験」は、顧客への「共感」なくして作れるわけはなく、ここにデザイン思考の手法が使えるということだ。

こう考えてみると、経営戦略 → 製品・サービス戦略 → 施策 という構造があり、サービス戦略や施策を決めていく手法がたまたまデザイン思考やそれを系譜とするフレームワークだったりするだけなのだ。

逆に考えると、デザイン思考は経営層が現場に実践させることではなく、経営層も含めて一緒に実践することが重要なのではないか。(図式すると以下のイメージだろうか)

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本書には以下のコメントがあり、トヨタ自動車の社長の言葉(”トップダウンとはトップが下に降りること”)が想起され、大変納得した。

共感を生むためには、マネジメントはやはり観察力が鋭くなくてはいけないでしょう
p.248

僕は経営者でもなんでもないですが、デザイン思考とかそういうキーワードだけ出てきた場合には要注意。背景説明がなければ、この本を読んだか聞くか、社長室に忍び込んで置いておきましょう。もちろん、経費で購入して。

もしかしたら社長は理解していて、ミドルマネジメントが理解していない、ということもあるかもしれません(背筋がゾッ。


もしも活動をサポートいただけるようでしたら、書籍の購入費用に当てさせていただきますm(_ _)m