聖なる侵入

そもそも、不完全性を内包して、世界は創造された。
ディック神学ともいえる二源宇宙創生論から続く、聖なる侵入では、男性性と女性性を司る双子の宇宙の統合が成される。
しかし、ここには善に対する悪という欠陥が常にして内包されている。全能の神は誤りを犯さない。存在の許容された悪意は神の全能を否定する。
宇宙は常にして、欠陥を抱えていて、故に、統合された宇宙もまた、欠陥を抱えている。それを癒す方法というのは、つまりところは現実からの逃避で、現実を破壊することになる。
宇宙そのものが壊れているなら、救いは壊れた宇宙を壊すことのなかにしかない。
現実を変えることはできない。壊れた宇宙を直視できない私たちはこの宇宙を破壊する。内に内に回帰し、誰も手を出せない宇宙をここに作る。
聖なる侵入で、統合されたはずの宇宙は、その宇宙を個々人の内へと引き裂く。神は一つで、神は世界に先立って存在し、神が宇宙だ。神は散り散りになり、一人一人が神として世界を捉える。世界は分断される、現実を喪失する、現実とはなんだ?

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