あの素晴らしいショッピングモールをもう一度
近所のスーパーが突如閉店した。
おせちの予約なども受け付けていたのでおそらく倒産に近い形だろう。
閉店のお知らせの張り紙なども一切なく、中で淡々と撤収作業が進められていた。
少し離れた場所に異常な安さで有名なスーパーが出来てからはそちらに客が流れているのを肌で感じる為「…ぁあ。仕方ないか…」とため息が溢れた。
それを機にふと幼い日のショッピングモールでの日々が思い出された。
ジャスコ、ダイエー、サティ。
今となっては全部イオンになっていてお馴染みのテナントがどこも同じように顔を並べている。いつ、どこの店に入っても同じサービスを受けられる安心感は代え難い物があるだろう。
しかしながら、あの頃の個人商店も併設された乱雑とした雰囲気の残るショッピングモールが時々恋しくなる。
エレベーターに乗り込んだ後に乗り間違いに気づいてそそくさと降りた大人達に取り残され初めて迷子になった事、50円で売られていたレモン水とパイン水が美味しかった事、お小遣いを握りしめて従兄弟と2人でスーパーファミコンのソフトを買いに行った事、雑貨店が出していた福袋は本当にお得でワクワクしながら息を白くさせて買いに行った事、行くと必ず立ち寄る食料品売り場の中にある個人の練り天ぷら屋さん美味しかったな…あ、そうそう!お肉屋さんの60円のコロッケ!あれも美味しかった!いまだにあの味に代わる物に出会えていない…など、語り出したら止まらない。
常に私たち家族の生活と共にそこにあり、私たちの成長を長年見守ってくれていたのだ。
定期的に無性に食べたくなるあの店のチープなフライドポテトはもう二度と味わえない。
そんな大型スーパーでさえ、突如として閉店する店舗も少なくない。そりゃそうだ、ほんの1キロ先に吸収合併し名前を変えさせられた同じイオン系列の大型モールがあったりする。
売り場を同じように作り変えられ、個性を失った型抜きモールの成れの果てだ。とても寂しく残念な気持ちになってしまう。
しかしながら私もネットショッピングを良く利用する、どうのこうの言える立場ではない。
昨今の小売業サービス過多ではなかろうか?
宅配はそば屋と寿司屋と中華屋くらいでいい。夜は皆寝てていい。正月三が日は皆休んでいい。街に誰もいないゾンビゲームの世界に入ったようなあの感じは正月にしか味わえなかった。
これから小売業はどのような道筋を辿って行くのだろうか。そして私たち消費者も薄給物価高の時代をどう乗り越えて行くのだろうか。
などと考えていると負のスパイラルに陥るのであーやめたやめた!考えるのやめた!とネットショッピングで買った水を口に運ぶのである。