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恵まれた環境、でも「群れない」グローバルを担う起業家マインド / 久我一総(AUTHENTIC JAPAN 代表取締役)

企画・制作:Ambitions

AUTHENTIC JAPAN株式会社
設立:2011年12月

山岳遭難者の早期発見をミッションとした会員制捜索ヘリサービス「コ
コヘリ」、迷子や災害時の捜索サービス「ライフビーコン」を運営するラ
イフハザードカンパニー。

難易度の高い山岳救助を高精度の発信機で変革

事故や災害、遭難から一人でも多くの命を救うことをミッションに掲げるAUTHENTIC JAPAN。創業のきっかけは、祖母が認知症になった自身の経験です。大切な人が迷子になったとき、一刻も早く正確な居場所を知るために、久我さんはオリジナルの発信機を開発しました。その技術を土台に、最も救助が難しいとされる山岳遭難のプロダクトへチャレンジ。2011年にAUTHENTIC JAPAN株式会社を立ち上げ、2016年に山岳遭難者を早期発見する会員制サービス「ココヘリ」をリリース。2024年現在、会員数は15万人を突破。救助対象エリアを山から街、海へと拡大しながらサービスを展開しています。

「ココヘリ」は、会員に貸与される山岳救助用の小型の発信機、そして有事の際には発信機からの情報を元にヘリコプターが救助に向かうことまでを包括した救助サービスです。特徴は、従来のGPSより正確な位置が割り出され
ること。920MHz帯の電波は16km離れていても、さらに樹木のある山中でも受信可能です。「要救助者が“このあたり”ではなく“この真下に”いると断言できるため、早期発見に貢献できます」。この技術とサービスにより、年間
約3000人が遭うとされる山岳事故から、多くの命を救うことができると久我さんは話します。

つながりが生まれるFGN でも群れなかった

AUTHENTIC JAPANがFGNに入居したのは「ココヘリ」ローンチ翌年の2017年。オフィス移転を検討していた際、旧大名小学校の教室を改装してシェアオフィスを新設するという、FGNの取り組みを知りました。

「話を聞き、価格や立地といった条件面の魅力以上に、率直に楽しそうだと感じましたね」

FGNでは交流会やセミナーが頻繁に開催されており、入居企業の多くは積極的に交流を図ります。しかし久我さんは、入居後あえて“つるみすぎない”ように心がけていたとのことです。多くのスタートアップが設立数年で行き
詰まる現実を見据えたうえでの判断でした。

「熱量の高い起業家たちと共に過ごす空間は、たしかに刺激的です。しかしFGNとは、まだ生まれたばかりの企業が集まり、ここから成長していくための場所。そうであれば、居心地の良いこの場所に慣れてはだめ。早く成長し、FGNを卒業したいと、事業に集中しました」

一方、定期的に行われる事務局との面談や、日々変化するFGNという環境から多くの刺激を受けたといいます。

「特に私が入居していた時期はFGN設立初期であり、スタートアップだけでなくFGNの事務局の皆さんも、チャレンジを繰り返している時期でした。彼らのチャレンジを肌で感じ、負けていられないと奮い立たせてもらったこと
が印象深いです。まだ0から1を目指すフェーズの私たちの事業にも『(事務局として)できることはすべてやります』というスタンスで向き合ってくれました」

災害大国・日本の“救世主”へ

今後、AUTHENTIC JAPANは山岳遭難だけではなく、日本で年々深刻化している自然災害の救助にもサービスの幅を広げたいと話します。

「日本では数十年以内に、数百万人規模が巻き込まれる災害が発生する可能性が高いと言われています。警察や消防、自衛隊などの公的な救助も充実していますが、国民一人ひとりが有事に備えておくべきです。私たちの発信機
は災害現場に居合わせた人たちが、相互に居場所を伝え合い、救助しあえるダイレクトレスキューを可能にします」

テクノロジーで災害救助の時間を短縮することを通じて、災害大国である日本の長きにわたる課題に挑みます。また久我さん自身のビジョンとして、これからFGNに入居するスタートアップにエンジェル投資を通じて応援するこ
とを掲げます。

「まず、社会をより良くするためには欠かせない、逆境をはね返す信念があること。そのうえで40代の私にまったく理解できないアイデアを持つ起業家を応援したいですね。それはいわば、革新的である証拠ですから」


事務局コメント

「今のままじゃ、(福岡の起業家は)みんな東京に行ってしまいますよ」と、久我さんに強く言われたことを今も覚えています。彼の一言がきっかけで、FGNにファンド(FGN ABBALabファンド)をつくろうという機運が高ま
り、実現しました。(池田)