ペットの歯周病検査にPCR技術を応用、スディックスバイオテック／第92回Growth Pitchレポート

2024年9月4日 19:38

岸田内閣が2022年を「スタートアップ創出元年」と位置付けてから約2年。政府や地方行政、VCなどが中心となり、地方へのスタートアップ誘致や成長支援を推進しています。

大学発ベンチャーも2010年と比べ約10％増加。さらに2022年度から2023年度にかけては500社以上の増加がみられ、直近5年間では年間350社前後で安定的に増えています。

大学発ベンチャーの内訳としては、研究成果ベンチャーが約半数を占め、共同研究ベンチャーが10%弱、学生が立ち上げたベンチャーが3割程度となっています。地域別では関東が多く、九州は7%程度です。

産業分野別では、ITソフトウェア、バイオヘルス、医療分野での増加が顕著です。一方、製造業や化学素材、環境テクノロジー分野は安定的に成長しています。

政府も様々な支援プログラムを提供し、大学発スタートアップの成長を後押ししているなかで、今後この領域はどのように進化していくのでしょうか。

2024年8月8日、福岡市の官民共働型スタートアップ支援施設「Fukuoka Growth Next」は、「Growth Pitch 〜大学発スタートアップ特集〜」を現地・オンラインのハイブリッドで開催。

大学からスタートした4社がサービスや協業ニーズについてピッチしました。本記事では、株式会社スディックスバイオテック（以下、スディックスバイオテック）の模様を紹介します。

鹿児島大学発ベンチャーが挑むペット医療の革新

スディックスバイオテックは、「世界の医療をアップデートする」をミッションに掲げ、PCR技術を活用した感染症の新しい検査方法などを開発している鹿児島大学発のベンチャー企業です。

2023年1月には政府主催の第9回ものづくり日本大賞で優秀賞を受賞するなど、国内でも高い評価を受けています。スディックスバイオテックは、愛玩動物の健康に大きく影響する歯周病の問題に着目しました。3歳以上の犬や猫の6〜7割が歯周病にかかっているとされ、早期発見と早期治療が重要です。

しかし、従来の検査方法では見逃してしまうケースが多く、精密検査をするには全身麻酔が必要でした。そこでPCR技術を応用し、口腔内を簡単に拭うだけで歯周病菌を検出し、その進行度を判定する方法を開発しました。

この検査方法により、専門外の獣医でも客観的な診察が可能となり、悪化前の早期段階で歯周病リスクを検出することができます。さらに、目視では見逃しやすい内側の病変も検出可能となり、より正確な診断が期待できます。

現在ペット市場は拡大傾向にあり、3歳以上のペットの多くが歯周病のリスクを抱えているため、潜在的な市場規模は大きいと考えられます。スディックスバイオテックは、まず国内市場でサービスを確立させることを優先しつつ、将来的には海外展開も視野に入れています。

また、スディックスバイオテックの技術は、唾液での検査や生きたウイルスのみを検出できるなど、独自の特徴を持っています。さらに人間向けの歯周病検査や、新型コロナウイルスやインフルエンザなどの感染症検査にも技術を応用できる可能性があるそうです。

今後の取り組みとして、さまざまな企業との協業を挙げました。動物向け製品の卸業者や地域の動物病院と関連のある銀行、ペット向け保険販売会社などとの連携を模索しています。

これらのパートナーとの協業により、歯周病リスクの低減が全身の将来的な病気予防にもつながるという価値提案を、より多くのペットオーナーに届けることを目指しています。

代表の隅田氏は「今後新たなPCR検査の事業を進めようと考えています。私たちの技術を活かしてご一緒できる機会があれば、ぜひご一報いただけますと幸いです」と語りました。

文・会場写真／株式会社ECHO

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「Growth Pitch」では、福岡市の官民共働型スタートアップ支援施設「Fukuoka Growth Next」が、毎月異なるテーマのスタートアップを招集し、投資家や地域企業に向けてピッチを披露する機会を設けています。

次回は9月12日に第93回Growth Pitch「建設DX特集」を開催します。無料で現地・オンライン共に参加可能です。みなさまのご参加をお待ちしております。