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波エネルギーで発電する「洋上パワーステーション」を開発/第91回Growth Pitchレポート

地球温暖化対策の議論は長年進められており、2015年のパリ協定では世界の気温上昇を1.5度に抑える目標が掲げられました。2050年に向けてCO2排出をネットゼロにする「カーボンニュートラル」の達成が全世界的に求められています。

近年あらゆる分野でCO2排出削減に向けた技術開発が行われていますが、それぞれに課題は山積しています。今後、エネルギー市場を取り巻く環境はどのように進化していくのでしょうか。

2024年7月11日、福岡市の官民共働型スタートアップ支援施設「Fukuoka Growth Next」は、「Growth Pitch 〜エネルギー特集〜」を現地・オンラインのハイブリッドで開催。

エネルギー領域でビジネス展開する4社がサービスや協業ニーズについてピッチしました。本記事では、Yellow Duck(イエローダック)株式会社(以下、Yellow Duck)の模様を紹介します。

Yellow Duck株式会社
https://yellow-duck.jp/

海の再生可能エネルギーで電力供給の限界を突破

Yellow Duckは、波エネルギーを利用した発電システム「洋上パワーステーション」を開発している企業です。この技術は、地球温暖化対策としてのカーボンニュートラル達成に向けた重要な取り組みの一つとして位置づけられています。

従来の再生可能エネルギーには設置場所の制限や安定供給の課題がありました。Yellow Duckが開発を進めている洋上パワーステーションは、これらの課題を解決し、海の再生可能エネルギーを効果的に利用する技術として期待されています。

システムの中核となるのは、直径約4メートルのパワーセルです。現在の試算では、このパワーセル1基で一般家庭10世帯分の電力を生成することができ、もしこの数字を達成することができれば、これは同じ面積に設置した太陽光発電の5倍の発電量となります。

さらに、これらのパワーセルを連結することで、設置場所や必要な電力量に応じてサイズや形状を柔軟に変更することが可能です。例えば、3キロ四方の海域に展開すると、原子力発電所約1基分の発電量に相当します。
現在は建設コストの抑制と、事業開始までの期間短縮を目標に、開発が進められています。

日本の海を活用した新エネルギー産業の創出へ

今年度(2024年)は実証実験を行い、その後改良を重ねて2027年の販売開始を目指しています。また、2025年の大阪万博への出展も決定しており、世界に先駆けて海の再生可能エネルギーによる電動モビリティの充電と走行を実証する計画です。

しかし、プロジェクトの推進にあたっては課題も存在します。主な問題は資金調達と人材確保です。現在、補助金や支援金を活用しながら開発を進めていますが、十分な資金の確保が難しい状況にあります。また、製品の認証取得も重要な課題となっています。

代表の中山氏はこの技術が日本のエネルギー構造を変革し、環境に大きく貢献する可能性があると強調しています。「日本は世界第6位の海洋大国です。この海をエネルギー源として活用すれば、将来的にはエネルギー輸出国になる可能性もあります。環境に貢献しながら日本の産業構造を変革していきたい」と語りました。

現在、Yellow Duckでは実証実験のためのスポンサーや協力企業を募集しています。洋上パワーステーションは、日本初の海洋再生可能エネルギー産業として、世界に向けて発信される可能性を秘めた技術であり、今後の展開が注目されています。


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「Growth Pitch」では、福岡市の官民共働型スタートアップ支援施設「Fukuoka Growth Next」が、毎月異なるテーマのスタートアップを招集し、投資家や地域企業に向けてピッチを披露する機会を設けています。

次回は9月12日に第93回Growth Pitch「建設DX 特集」を開催します。無料で現地・オンライン共に参加可能です。みなさまのご参加をお待ちしております。

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