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歯磨き粉から「幼児食」にピボットし、グローバルを目指す / 黒瀬優作(Oxxx 代表取締役 CEO)

企画・制作:Ambitions

株式会社Oxxx
設立:2021年3月3日

冷凍宅配幼児食「mogumo」を開発・販売。同商品は管理栄養士の監修により、幼児期に必要な栄養が盛り込まれており、家庭での手間は温めるだけ。子育て家庭の課題を解決する食のソーシャルスタートアップ。

共働きの育児経験から親子でうれしい「幼児食」を開発

幼児期は、人の脳が最も発達するとされる重要な時期※です。 しかし現代の子育て家庭の多くは、毎日の献立づくりや子どもの偏食への対応など、幼児食に関する多くの悩みを抱えています。Oxxx代表の黒瀬さんも共働きで愛娘を育てる父親のひとり。「多忙な親の力になりたい」という想いから、栄養バランスと味、豊富なメニューを兼ね備えた冷凍宅配幼児食「mogumo」を開発しました。

「mogumo」は管理栄養士が監修したバランスの良い冷凍幼児食シリーズ。温めるだけで、安心安全な幼児用の食事が完成します。メニューは24種類以上と、毎日でも飽きないラインアップ。さらにパッケージにも可愛らしいキャラクターのイラストを施すなど、子どもにとって毎日の食事が楽しくなることを目指しています。黒瀬さんは「子どもが自らメニューを選び、楽しんで食べる。成長のための大切な幼児期に、日々の食体験を通じて食事の楽しさを伝えていきたい」と語ります。

資金調達後にピボットも、シードステージを駆け抜ける

黒瀬さんは東京の大手企業で営業職を経験後、美容関連のスタートアップに転職。東京から福岡や大阪に拠点を移しながら、地域支店の立ち上げに従事してきました。その後、起業を決意。転勤で暮らしていたことから興味を持っていた福岡を創業の地に定め、FGNへの入居を決めます。黒瀬さんがFGNへ入居を決めた理由は、起業を後押しする環境でした。

「事業を成長させるうえで、環境は重要な要素の一つだと考えています。完全に手探りの状態で事業を立ち上げるより、情報交換ができる投資家や切磋琢磨できる起業家がいる環境に身を置くほうが、事業の成功確率は高まります。そういう意味で、FGNは理想の環境でした」

Oxxxが手がける「mogumo」は2022年5月の販売開始から約1年で、累計販売食数が30万食を突破、累計会員数は1.5万人を超える勢いを見せています。2023年6月には、累計1.8億円の資金調達額となりました。ユーザー(子ども)のデータを分析し、一人ひとりの個性にパーソナライズした幼児食の提供を目指しています。

そんな黒瀬さんですが、当初は「新たな歯磨き粉」の事業を構想していたそうです。FGNに入居し、銀行から1,000万円以上の借り入れを実現。しかしプロダクト検証を進めるなか、理想とする製品開発までには予想を超える資金が必要になることが判明したのです。議論の末、チームメンバーの8割が子育てを経験した親であることから、育児や子どもの成長に寄与する事業を構想。幼児食ジャンルにピボットすることを決意しました。

「借り入れ直後のタイミングでしたし、たくさん期待してくださっていたので、周囲にどう伝え、対話していくべきか悩みました。FGN事務局の皆さんに相談したところ、大手の銀行からFGNに出向していた方がいて、もう“これでもか”というくらい相談に乗っていただきました。融資元の担当者へのコミュニケーションのアドバイスはもちろん、新たな事業の先輩起業家や、VCの紹介などもサポートしてくださいましたね。FGNの事務局には、さまざまな知見を持つプロフェッショナルが集まっていますよね。創業間もないスタートアップが直面する課題に、多くの視点からアドバイスをいただくことができました」

シードスタートアップに背中で語る「世界展開を加速させます」

FGNに入居していた当時を振り返り、ふたつの思い出を語る黒瀬さん。

「まず、毎日行くのが楽しかったんです。校舎をリノベーションした施設なので、学校に通っているような感覚ですね。一時期はせっかく集まったチームメンバーが全員いなくなる苦労も経験しましたが、調子が良いときも悪いときも含め、青春を過ごしているようなワクワク感が常にありました。もうひとつの思い出は、沖縄で開催された国内最大級のスタートアップカンファレンス『IVS 2022 NAHA』にFGNの入居企業枠として参加したことです。当時は創業初期にもかかわらず、著名な起業家から直接事業に対するフィードバックをいただきました。これはFGNに入居していなかったら得られなかったチャンスだったと、今でも印象的な出来事です」

現在はFGNを卒業し、さらなる事業成長に取り組む黒瀬さん。「FGNで創業するシードステージのスタートアップが憧れるような存在になりたいですね。より大きな事業をつくり、背中で引っ張っていくことが使命だと感じています。私たちがFGNでたくさん支えていただいた分、今度はOxxxが支える番。福岡のスタートアップエコシステムを盛り上げていきたいです」と、自身の学舎であるFGNへの恩返しの思いを胸に抱きます。

最後に黒瀬さんはOxxxの事業の展望を語りました。「 Oxxxは『あなたの人生に1番寄り添う』ビジョンのとおり、食育のインフラ企業として、日本になくてはならないサービスを目指します。また日本食は味や安全性などで海外からの評価が高いため、主に台湾やベトナム、シンガポールなどのアジア地域に向けた輸出事業を準備中しています。実は、福岡市長にもグローバルに進出したい想いを伝える機会をいただいて。今後もFGNや行政機関と連携しながら、福岡市からグローバル企業を目指していきます」

※出典:「脳科学の成果を子ども研究に応用するための課題」(こども社会研究13号)


事務局コメント

初めてお会いした時、「歯」に関する事業構想をお聞きして、歯医者を無くすくらいの企業になって欲しいと思ったのを覚えています。しかし、身近な人を助けたいという考えから現在のサービスへピボット。成長している姿はとても頼もしく見えます。(池田)