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【#21】子どもの中のヒエラルキー

小さな子ども(6歳以下)を育てている夫婦から子育ての方法についてよく尋ねられるが、正直なところ、答えに困る。子どもはそれぞれ個性が違うので、一概には言えないのだ。

ただ一つだけ、いろんな親(国籍問わず)を見ていて思うことがある。それは父親が怒った時の怖さが大事ということだ。これがとても効果的に思える。特に男の子には効果が絶大で、しっかりと言うことを聞くようになる気がする。

さすが動物、ヒエラルキーを重んじる本能が働くのだろう。腕力で勝てないと分かると、しっかり従うものだ。とはいえ、今のところ腕力では私も息子にはまだ勝てると思うけど。

お父さんが仕事人間で一切家事をせず、家にいる時だけとても優しい顔をしていると、通常のルールが乱れることがよくある。そして、男の子のヒエラルキーの順位が一気に上がり、ママの言うことを全く聞かなくなる。このパターンを何度も見てきた気がする。

私たち夫婦の場合、どちらかというと私がめちゃくちゃ怖い存在だ。息子に聞いてもそれは変わらない。しかし、夫が家族の枠組みを作っているような気がする。夫が怒ると本当に怖くて、私の怖さとは比べ物にならない。息子もそれを理解していて、夫の言うことはしっかり聞く。

では、シングルの親の場合はどうなの?と聞かれると、家族の中でボスがママ(パパ)であれば、子どもはそのママ(パパ)に従うだろう。ただし、子どもがボスに逆らったら大変なことになると感じていないと、やりたい放題になってしまう気がする

ただ、このヒエラルキーが一気に変わる出来事があった。それは、夫の実家があるフランスで義理の両親と過ごした時のことだ。息子は普段、私たちと暮らしているときはちゃんとお手伝いをしてくれたり、規則正しい生活をしていて、どちらかと言うと自分で言われなくてもやるべきことをこなしてくれる子だった。しかし、パピー(祖父)とマミー(祖母)は久しぶりに遠く離れた孫に会った途端、目がとろけてしまい、息子の言うことは何でも聞いてしまう家来になった。

息子はその状況にすぐに気づき、自分のヒエラルキーを最上層まで押し上げた結果、私は下層の家来となった。理由は簡単で、私は息子と話すときに必ず日本語を使うからだ。息子にとって日本語で話すのは面倒らしく、それが続くと彼はますます日本語を嫌がる。義理の家族が「?」という顔をしても、私は日本語で話し続ける。すると、息子はまるで将軍のように「なぜ我が日本語を話さねばならぬのだ!そなたもフランス語を話すがよい!」と言わんばかりにうんざりする。その結果、私は少し孤立してしまうのだ。

最終的には息子は私に話しかけなくなり、私はさらに孤立するというパターンになる。何かお伺いを立てる時はパパに聞く。それ以外の時は、まるで私がいないかのように扱われる。しかし、寝る前と怪我をした時だけはママのところに来る。「このやろぉー」と思いつつも、可愛い奴めと思いながら寝る前の本(日本語)を読んであげる。

私が彼に日本語で話し続けるのには理由がある。一人一言語の方針で、私は日本語、夫はフランス語を話すというルールを家の中でやってきた。そのため、彼が私と話す時は日本語を使うのが当たり前という習慣を崩したくなかった。特にフランスにいる間は、日本語を話すのは私だけなので、できる限り日本語で話してほしかったのだ。

カナダに戻り3人の生活に戻ると、私の階層はまた上がった。しかし、息子の話し方が以前と全然違う。彼のいとこたちはみんな年上なので、少年ではなくティーンのような口調で話すようになった。私の息子はまだ6歳なのだが、少年らしさが一気に抜け、急にティーンのような口調をするようになった。それは成長としては良いことなのだが、命令形になってしまったのだ。例えば「水!」とか「醤油!」と言った感じだ。おいおい、こちらは家来でもなければ、お前は将軍でもないんだよ。お願いする時は「お願いします。だろ!」と言うと、一瞬黙ってから「お願いします」となる。

息子よ、残念ながら私たちは平等なのだよ。上でも下でもない。小さい頃から私は君を対等に扱っているつもりなのだが。

いつか息子は私より強くなるだろうし、私はどんどん老いぼれていくだろう。しかし、その時が来たらどうなるのか、今から楽しみだなぁ。

話は逸れるが、お猿さんの世界ではママの階級で生まれたその子の階級が決まると言うが、人間もそういうところがある気がする。ママの影響は偉大だ!


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