忘れがたい記憶の断片
一番古い記憶はいつだろうか。
心理学の先生は3歳より前の記憶を人は持ち合わせていないと言った。
何歳かは分からない。
保育園に行く年齢になった頃、
1人で庭の外に出た。
母曰く
「泣きながら家に帰ってきた」と。
少しだけ覚えている。
晴れた日だった。
車の音の大きさ
知らない高校生達とすれ違うこと
新しい世界にあふれていた
それが怖くて泣いたのだろう。
見る物すべてが新鮮だったのだろう。
もう1つ。
いまでも思い出す。
あの都市の喧噪を。
スパイスとゴミと牛のにおいを。
クラクションのうるささと人の声を。
インドの空港から300キロを1人で移動した。
乗ったバスがあっているのか、
表記が分からずいつ降りるか分からない、
ドキドキとハラハラの連続。
これも見る物すべてが新鮮だった。
幼少期の泣いた話と
インドのバスの話の共通点として
僕の中で「忘れられない」ということだ。
匂いと、音、ドキドキ。
そして目に映るものすべて。
そんな話をしたら、
「だから私は写真をとらない。
だって写真にとってもこの感動は残らない。
脳に焼き付けることに時間を使いたい」と横で言われた。