新しいパズル大会ツールの提案
この記事は、ペンシルパズルアドベントカレンダー2022の23日目の記事です。
初めての方は初めまして。fffと申します。この2年くらいパズルや謎解きのシステム開発に力をいれています。また、今年の7月からわんどさんと一緒にPuzzle Square JPの共同管理人になりました。パズスクの方でもアドベントカレンダー企画をしておりますのでもしよろしければそちらもどうぞ。
宣伝はさておき。
僕の夢の1つに、ペンシルパズルを広めたい、というものがあります。
これは、パズスクなどで意識しているペンシルパズル文化の普及だけでなく、競技パズル文化の普及も含みます。
※競技パズルが何なのかは「市民のための競技パズル入門」が詳しいのでそちらをご参照ください。
この記事やこの記事やこの記事で様々な競技パズルの未来像が描かれているのに対し、これが現実になったらいいな、そんな夢を僕も抱いています。
さて。
夢は、「こうなったらいいな」というだけでは実現しません。なので僕なりに、自分が出来る範囲でどうしたら夢が実現できるのか考察しました。
現在の競技パズル環境に対する整理と考察
競技パズルを広めていく上で今一番不足している物は、「競技シーンが見やすい環境」だと考えています。
というのも、そもそも競技シーンがよく見えないならば、観戦以前の話になってしまうからです。
WSPC(世界パズル/数独選手権)の応援会では、現地のWPC/JPCのスタッフさんや海外の有志の尽力によりWSPCプレーオフの手元動画が配信されておりました。またPGP/SGPでは問題が事前に観客に配布され、それを元にタイムを予想したり自分でも解いてみたり、という観戦の仕方ができました。
また、国内でも、枝豆さん主催のパズルリーグ「Heads-up Puzzle League」では手元動画を録画したり作問者による解説を追加したりと、競技シーンをできるだけ魅力的に見せる工夫がみられます。
とはいえ、手元動画を取るにはカメラやそれを固定する器具など少し特殊な機材が必要になりますし、人によってはうまく写らないということもあります。
(HPLの動画を見ると分かるのですが、僕は紙に覆い被さるようにして解く癖があるため盤面がほとんど写っていません。なので「うまく写らない」は半分近く自分の話です...。残り半分はピントや画質の問題などです)
この紙でペンシルパズルを解くが故に発生する観戦の難しさを、選手にオンラインツールで解いてもらうことによって解決した事例もいくつかあります。
たとえば(現在は閉鎖されましたが)nikoli.comで行われていた早解き大会は参加者の解答を後から再生する機能がありましたし、LMIで行われているDaily ContestでもPenpa+を拡張し、同様に解答履歴を再生できるようになっています。また、これらのツールは事前に用意された記号(黒マス、線、数字 etc.)を入力する形式であるため、自動採点が可能なことが特徴です。
また、puzzle duelで行われていたduel tournamentでは、普段からPuzzle duelの出題に使われているツールを使って、リアルタイムに1on1の対戦カードが組まれるスイス式トーナメント戦が行われました。
一見するとこれらのオンラインツールの事例は全ての問題を解決しているようにも見えますが、Penpa+やニコリのツールで用意されていない補助記号を入力することが出来ない、という、競技シーンでは時として致命的になり得る課題が残っていると思います。また、ツールの入力には少なからず癖があるため、競技として突き詰める上ではツール慣れによる差が少なからず出る、という課題もあります。
このように、紙ならば盤面の共有が、Penpa他ならば入力の自由度が既存の競技環境の課題である、と僕は考えています。
ツールの提案
さきほどの課題は、「選手1人1人のiPad端末上で紙のように手書きでき、オンラインでリアルタイムに盤面が共有できる」というツールができれば解決することが出来ます。
このツールはさらに、大会運営に必要な機能がそろえることで大会運営コストが下げられる、オンライン化したことにより海外選手も含めた1on1大会などが開催出来るようになったり、一度に複数の提出が受け付けられるようになって採点人員のコストを下げられたり、正解画像と併せて表示することにより観戦者が進捗をよりよく理解出来たり、という点で様々なメリットがあります。
デメリットとしては、開発コスト・運用サーバー代がかなりかかる事が見込まれる点、選手1人1人にiPad端末とapple pencil(ないしそれに準ずる手書き環境)が必要になることなどが上げられます。前者はツールを作りたい筆者が負担すれば解決するのですが、後者はペンシルパズル本来の「紙とペンさえあれば始められる」という長所を打ち消してしまっている点が気になります。
開発
新しいツールを提案したとしても、それが作られなければあまり意義はありません。
幸い、この2年間色々なシステムをつくる経験をしたおかげで、「思いついたツールを自分で作る」という選択肢をとることが出来るようになりました。
このツールを思いついたのが12/5で、この記事が公開される約2週間前のためまだ実装自体は出来ていませんが、このツールの肝である「iPad上で手書き」「複数端末間で盤面進捗をリアルタイム共有する」という箇所については実装することが出来ました。
(参考: https://youtu.be/72Ij0KSAP_E 筆者の手が映り込んでいますので注意)
なので、採点・観戦などのコンテスト機能全体も含めると数ヶ月単位をかければ作れうると思います。
ただ、大変であることには変わりないので色々な方のご意見が頂けるととてもありがたいです。
展望
ここまでこのツールを作る意義を書いてきたものの、このツールが出来たというだけで劇的に競技パズルが広まるかと言われると、残念ながらこのツールだけでは足りず、例えば競技パズルに詳しくない人から見ても「面白い」と思うような大会の見せ方など、色々な要素が必要だと思っています。
ただ、夢は夢で終われないので。自分ができることはとことんやりたいと思います。
筆者の(現時点ではまだ)夢の話につきあっていただきありがとうございました。
雑記
・観客が面白いと思う競技にはどういう要素が必要なのか、それを踏まえ競技パズルを魅せるためにはどうしたらよいのか、などは色々検討していった方が良いと思っていますし、少しずつ他の事例などを勉強していますが、
と書いた通り、まだその前の段階で課題が多いと思っているので触れませんでした。
・ペンシルパズルアドベントカレンダーの記事のためメインでは触れませんでしたが、おそらくこのツールが完成したら、「画像に手書きする」という点ではかなり似ているとは思うので、競技パズル系だけでなく競技謎解き系のイベントにもつかえるのではないかなと思います。