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自作ゲーム:架空図書大喜利「ネモリベル」を自らやってみた

 こんにちは。アメリカ文学の大学院生、#ffffff です。

 皆さん、読書してますか。私は研究の対象が対象なので、わりかしいつも本を読んで過ごしています。

 さて、読書と言えば一見、自己との対話孤独な行いであるようにも見えますが、他者と共有できる読書体験というものも多く存在します。子供の頃であれば大人からの「読み聞かせ」、本好きの方であれば一冊の本をみんなで読んで感想を交換し合う「読書会」、さらにスピーチが得意な方なら互いの書評を競わせる「ビブリオバトル」というものもあります。

 楽しそ〜〜〜。

 本をめぐって感想を交わしあったり、時に競わせあったりするのってなんだか知的な感じがして良い。とはいえ、

 本を読むの、面倒くせえ〜〜〜〜〜。

 そう、「読書会」にしても「ビブリオバトル」にしても参加するには何か一冊本を読んでいなければならない。私は先述の通り、結構本を読む人間なのですが、研究や講義のために読むべき本に圧されて趣味としての読書が後回しになってしまうことがよくあります(研究は研究で楽しいんだけど)。だから、

 本を読まずに本好きって名乗れねえかな…。

 と、結構な頻度で考えます。

 私は施川ユウキ氏による、高校の図書館を舞台に「読書家ぶりたい主人公」町田さわ子らの日常を描いた漫画、『バーナード嬢曰く。』のファンなのですが、一巻表紙でさわ子が『カラマーゾフの兄弟』を手に言っているセリフ、

「一度も読んでないけど私の中ではすでに読破したっぽいフンイキになっている!!」

 これがめちゃくちゃ分かってしまう。文学の院生をしている私がそうなのだから結構な人が共感してくれるのではないでしょうか?

 特に本を読むことなく本好きの人間とハイセンスっぽい会話をしたい…。待てよ?

 自分で考えた架空の本についてだったら、別にいくらでも話せるくない?

 たどり着いてしまいましたね、真理に。そう、架空の本であればそもそも読むこと自体が不可能。これなら誰も気後れすることなく語ることができるのです。そこで、このようなゲームを考えました。名付けて

 架空図書大喜利「ネモリベル」

 'Nemo liber' はラテン語で「無い本」という意味です。文学の人間、ラテン語好きがち。ルールは以下の通り。

【ルール】

プレイ人数:3人〜

プレイ時間:60分〜

① 最初の10分間はプレイヤー自身のこれまでの読書遍歴や興味・関心をメモに書き出す時間とします。

② ゲームホストを1人決め、ゲームホストはメモの内容を明かします。残りのプレイヤーはそのメモを参考に、架空の書名を1人1つあげていきます。このときプレイヤーがあげるのはあくまで書名のみ、その内容をプレゼンしてはいけません。

③ ゲームホストはその中で一番読みたいと思った書名をあげたプレイヤーに1ポイント入れます。ゲームホストを変えて同じことを繰り返し、全員がゲームホストを終えた時点で一番ポイントが高かったプレイヤーの勝利。

 その場で実際の本を読んでいなくても、それまでの読書経験を絞り出せば遊べてしまう読書ゲームの誕生です。ちなみに、これ同じゲームがすでにあるんじゃ無いかと思って探してみたところ、「架空読書会」というものを見つけました。

 あれ、もしかしてこっちの方が今回のテーマとして合うくない…?

 しかもめちゃくちゃ面白そうですね。ともあれ、思いついてしまったのでやっていこうと思います「ネモリベル」。

 ゲームテスターに誘ったのは学部時代の同級生であるこの2人。

 はじめに、10分間時間をとって自身の読書遍歴、興味・関心を書き出していくのですが、この作業が結構楽しい。自分の好きなものごとについて敢えて時間をとって書き出すことって実はそう無いのではないでしょうか?10分という制限が無ければ無限に書けてしまいそうです。

 さて、書き終わったところでゲームマスターを山川君にして1ターン目のスタートです。(ちなみに3人とも離れて住んでいるのでLINEで通話しながらテキストメッセージでグループチャットにメモを載せています。ウィズコロナの時代も安心。なお、ここからは当時の空気感を再現するために対話形式の記述になります。)

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#ffffff(以下、シロ):初っ端からむずくない?

屋上浪漫野郎(以下、屋上浪漫):架空の書名とはいうけど、小説だとタイトルから内容の把握がしづらいから、タイトルから中身がわかる専門書の方があげやすくなるかもね。

 そしてあがった2冊(架空)がこちら

シロ:

『心身一元論者が語る心身二元論 -自然科学的側面からのアプローチ-』

屋上浪漫:『絶望と信仰』

山川:どっちもありそ〜〜。

シロ:『絶望と信仰』は民俗学的な要素もありそう。

山川:迷うけど、シロに1ポイントかな。

 シロ、1ポイント先取!

シロ:これ、どれだけ相手の趣味をキーワードとして抽出できるかだから専門的な語彙知識があるほど有利になっちゃうな。

 2ターン目は屋上浪漫君をゲームマスターにしてスタート。

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シロ:三島由紀夫の波、最近また来てるよね。

山川:三島由紀夫死んで50周年だっけ?

屋上浪漫:周年て(笑)

シロ:記念しちゃダメでしょ(笑)

 さてこのターンではどんな書名(架空)があがるのか…

シロ:『不道徳性の歴史〜逆読みの世界史~』

山川:『鹿児島県の離島の生活史 こんな文化があったのか!』

屋上浪漫:ブックオフなら両方買ってる。

シロ:山川君のに関してはもうあるだろ(笑)鹿児島県っていうのがまたいい。(三者とも鹿児島の大学出身。)

屋上浪漫:いや〜、悩んだけどシロかな。

 シロ、2ポイント先取!

シロ:捻くれた目線が好きっていうのがミソだったかもね。

屋上浪漫:「逆読み」っていうワードに惹かれてしまった。

 ここで私が2ポイント取ったため勝者に決定しました!もっと大人数でしたら最後まで勝敗がわからなくて、より一層面白いのかもしれない。

 続く3ターン目、最後に私がゲームマスターになります。

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シロ:敢えて特定の書名を出さずに書きました。

山川・屋上浪漫:むっっっず!

 2人とも大学での専門が近かったのでこのように書いてみましたが、確かにこれだと架空本でもあげにくいかもしれない…。とはいえ、ここは旧知の仲、あげてもらった書名がこちら

山川:『オースターとデリダ-現実と非現実のあいだ-』

屋上浪漫:『性癖の社会学〜スタンフォード監獄からの指南』

屋上浪漫:オースターとデリダ、とは?

シロ:私の卒論じゃん(笑)

山川:ちょっとズルかったかもね(笑)

シロ:山川君はメモを見るまでもなく私の趣味を知ってるもんな…。図書館で2冊並んでたらどっちも借りるんだけど、買うなら屋上浪漫君の方かな。山川君のはすでに論文で読んだことがあるテーマだから。

屋上浪漫:サブタイトルをつけるほど有利になるところがあるかもね。

山川:スタンフォード監獄実験っていうのがずるい(笑)

シロ:哲学、心理学好きは惹かれちゃうよね(笑)

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%83%89%E7%9B%A3%E7%8D%84%E5%AE%9F%E9%A8%93 (スタンフォード監獄実験 -Wikipedia)

 こうして「ネモリベル」第一テストプレイは幕を閉じました。もしかしたらこのゲームの真の面白みは、ゲームホスト側が「どんな興味を持っていると思われているか」が明かされるところにあるのかもしれません。

 今回のテストプレイでは専門的な知識が必要になる側面が多かったのですが、例えば架空のライトノベル縛りなんかも面白いかもしれません。ラノベのタイトルって内容がそこに集約されたものが多いしね。

 ちなみに後日、知人・Nさんと2人プレイをしてみました。2人でまわす場合は大喜利よろしくゲームマスターの琴線に触れるものが出るまで1人で架空タイトルをあげ続けなければならないので、なかなかシビアです。

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 文学の知識がむしろ仇となり、名作SFのパロディめいたタイトルしか考えられない挙句、ハイテク=コンピュータで思考が止まっている私(最後の『マザーファッキンコンピュータ』に関しては語感でしかないけれどそれなりに気に入っている)。

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 的確に好みのツボをついてくるNさん。『教育税』は多分アカデミズムに対するシニカルな批評本なんだろうな…。

 それでは読んでいただきありがとうございました。素敵な「本好き」ライフを!


よろしくお願いします。