これから
トラウマの治療を始めたいと思う。
そのために転職を兼ねて転居もした。今月から知らない町で暮らしている。
初日からきちんと生活できている。必要な家具は前もって注文しておいた。組み立てられそうなものは組み立てておいた。調理器具も、電化製品も揃えた。仕事は、なんとか普通の人間のふりをしてやっている。今日は大切な大好きな友人が遊びに来てくれ、帰っていった。楽しかったし、うれしかった。
信頼している地元の先生は、専攻外にも関わらずACや複雑性PTSDのことを知っていて、私に仄めかし続けてくれていた。
明確に「複雑性PTSDというのがあって……」と口に出してくれたのは去年の夏だ。私もそうなんじゃないかと思う、当事者の方の漫画を読んでいて、最初は興味深く読んで、でも私はこれじゃないからなと思っていたけれど、自分に重なる部分が多くあることに気が付いた、治療がしたい、と伝えた。
最後の診察の日、紹介状を見せて、話してくれた。
「紹介状には複雑性PTSDと書きました。あなたが4年前より少し良くなったから話せます。4年前には僕は、こういう話はできなかった。あなたは自分の傷を癒そう、隠そうとして頑張り続けてきた。それで少し良くなって、傷口に薄皮ができて、出血はしていないという状態になった。だから話せる。あなたは複雑性PTSDだけど、回復する力がある。回復する力のある人にしか僕はこういう話はしない。ここからが本当の治療のスタートです」
先生は、まずは固めの精神科にかかって睡眠薬だけ貰いながら、心理士を探したらどうかと提案してくれた。
専攻外のことでもなんでも知っていて、いたずらに薬を出すようなこともせず、本当に患者のことを考える良い先生だった。
最後に診断を教えてくれ、背中を押してくれた。
ので、先日その紹介先の病院に行ってきたのだが、結論から言って良くなかった。ひとまず睡眠薬だけもらいながら、心理士の先生を探すことにする。取り組みたいのは認知行動療法以外の心理療法で、SE、インナーチャイルドワーク、DAReあたりだ。カウンセリングと並行して行いたい。EMDRは望んでいない。
治療をして、生きていてよかったと思えるようになりたい。もう我慢に我慢を重ねて最後に爆発するようなことをしたくない。もう頑張りたくない。迎合したくない。怒りを発散させて、嫌だった出来事を終わらせ、許したい。嫌だった出来事そのものも、嫌だった出来事を起こした人間も、嫌だった出来事を忘れられない自分も、嫌だった出来事に遭い続けてきた自分も、許したい。怒りを手放して自由になりたい。
どうか、どうか穏やかになりたい。
絶対に絶対に回復してやる。絶対に幸福になってやる。穏やかに暮らすんだ。
友人と図書館に行ったら、読みたかった本が置いてあったので借りてきた。
私は、ついてる、運が良い、と、初めて思った。