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トマト缶について・4作目「熱線と料理人」が始まります


 人生を支えるための嗜好品について、ふと考えてみます。

 そう、トマト缶にはいつも助けられています。

 軽い家庭料理をつくるときに重宝しています。そこまで飛びっきり美味しいというものではないにせよ、あると助かるものです。スープにしてもいいし、パスタにしてもいい。赤黒いトマトソースがぐつぐつ加熱する過程で朱色に染まっていくのも楽しいです。

 「トマト缶の黒い真実」という本があってまだ読めていないのですが、もしこれを読んでトマト缶を使えなくなったら、生活の質はそれなりに変わるだろうと思います。トマト缶とはさよならしたくありません。

 本当にちょっとしたもので人間一人の生活全体が支えられている、ということは、本当にあるのでしょう。

 喫茶店のマスターが「煙草が吸えなくなったら困る」と言っていたのですが、ニコチン中毒かどうかという視点より前に、ひとつの嗜好品で自分の頑張りかたを調整する(?)ということがきっとあるのでしょう。煙草、ゲーム、読書、コーヒー、これがないと自分の人生を調整できないもの。マスターには煙草があり、僕にはトマト缶があるわけです。

 ということを家族に話したら、「ふぅん」という感じだった。僕にとっての嗜好品はトマト缶ではありますが、しかし、煙草や読書と違って、トマト缶を調理したものは家庭内でみんなで食べるものなのだから、一人で享受するという感じとは少し違います。家族で、時には大勢で嗜好品を共有するというのはけっこういい感じなことだと思うのだけど……。それを「ふぅん」で済ませるのかいなと思いました。

 トマト缶にせよ読書にせよ煙草にせよ、いずれ一人でしか楽しめなくなる日が来るかもしれません。あるいは一人になったらトマト缶を温めようとも思わなくなる、とも考えられるでしょう。世の中何があるかわからないから。ブチっ!という感じで今の流れが途絶することはあるかも知れないです。そう考えるととても恐ろしく思います。あるいは、一般論として、そういう状況になった誰かが小説を読んで励まされることがあるだろうかとも考えてしまいます。

 何かできることはないのかと考えるのが人情というものだと思います。テレビやネットニュースで悲惨な事件を見る度に、あるいはまったくニュースになっていない人の窮状を知るたびに、人間が回復するのに必要なものはなんだろうかと考えてしまいます。

 カルディコーヒーファームで山積みになったトマト缶を一個籠に入れながら、この一缶一缶が行き着く先に誰かの家があるのだと思います。これを買う人同士で連帯感や人間的接点はありません。夕方6時くらいに、5分か10分、ひとつの店舗に滞在するだけ。しかしトマト缶を手に取って、ふと思うところはあります。

ここから先は告知になります。




4作目「熱線と料理人」は、東京湾から襲来した大怪獣ドラギラガが、自衛隊と攻防を繰り広げる東京、という設定からスタートします。しかしそこで展開するのはほとんど料理の話です。怪獣が破壊した街でただひたすら営業を続けるスペイン料理店が主な舞台となります。主人公はスペイン料理のシェフ・焔武(ほむらたける)と、彼の料理の秘密を探る大学生の優斗の二人。そして怪獣ドラギラガが去った後の街・空木見町で、焔武が料理した最高のパエリア「トドス・ソン・アミーゴス」を巡って幾人かの人物がぶつかりあい、パエリアの謎を解いていきます。

 怪獣は出て来るのですが、凄惨な描写はないのでどうか安心して楽しんで頂きたいと思っています。
 放送は全11回。



24/12/21「熱戦と料理人」第1話
24/12/28「熱戦と料理人」第2話
25/1/4 「熱戦と料理人」第3話
25/1/11 「熱戦と料理人」第4話
25/1/18 「熱戦と料理人」第5話
25/1/25 「熱戦と料理人」第6話
25/2/1 「熱戦と料理人」第7話
25/2/8 「熱戦と料理人」第8話
25/2/15 「熱戦と料理人」第9話
25/2/22 「熱戦と料理人」第10話
25/3/1 「熱戦と料理人」第11話
OCR835 おおさきエフエム
毎週土曜 21:00~21:15
再放送 毎週月曜日 22:00~22:15

 それにしても21時って、わりとやりたいことが渋滞する時間帯ですよね……。少なくとも僕はそう思うのですが、皆様はいかかがでしょうか?夕食を食べたり、好きなアニメを見たり……、そういった時間帯に割り込む形で「お聴きください」というのは節操がないような気もします。もしよかったら、片手間にながら聴きでもする気持ちで、ゆったり楽しんで頂ければ幸いです。

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