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気になるあの子

なにを隠そう私には友達が少ない。

大学に入ってからさらに少なくなった。
今はサークルにも入っていないし、授業も1人でとって1人で受けている。

確かに人数としては少ないが、大学から出会い今も関係性が続いている友達はある意味選りすぐられた不思議な子が多い笑

そのうちの1人の話をしたい。

彼女との出会いは2年前の春。
私の猛烈な片思いから始まり、射止めた。

春学期私が後に恩師となる教授の授業を初めてとった時のことだった。

大講義の教室で彼女は私の斜め前に座っていた。

今の時代大学生のほとんどは授業のノートをパソコンかタブレットで取っている。

しかし時代に抗うように彼女はルーズリーフを縦で2つ折にしそれぞれの列にびっしりと手書きのメモを取っていた。

私は斜め後ろからその様子を見てぎょっとした。

それが私と彼女との実に一方的な出会いだった。

大講義で席は余るほどあり、その日の気分によって場所を変え座り放題とはいえど大体自分の定位置は決まってくる。

2回目以降の授業から彼女の定位置も決まり、
私の定位置は彼女の斜め後ろになった。

私は毎回の授業で注意深く彼女を観察した。

ヨシタケシンスケのファイルを持っていた。

時々授業が終わるとお弁当を食べていた。
どうやら自分で作っているらしい。

ルーズリーフの紙を丁寧にファイルにまとめる、
どうやら授業ごとファイルを分けているようだ。

書いていて自分がどれほど彼女を観察していたのかが分かりそんな自分が怖くなってくる。

要は私は彼女と友達になりたかったのだ。

しかし高校のように常に同じ教室では無いし、
私と彼女が一緒になるのはこの授業だけ。

ただ斜め後ろに座っているというだけの私は
どんな風に声をかけたらいいのかさっぱり分からなかった。

話し合いやグループワークの無い講義型の授業だったため余計に話しかけづらい。

よって私の片思いは14回の授業の1回目から最終回まで続いた。

最終回になって初めて、最終レポートをお互いに発表し合うというグループワークが行われた。

内心、「占めた!」と私の心は湧いた。

「ずっと見てました。
 私もヨシタケシンスケ好きです!
 持ち物全て好み一緒です!
 友達になってください」

と授業後いきなり彼女に告白した。

いきなり掛けられたら恐ろしい言葉を
普通にかけてしまう自分が怖いのだが、
こうして私たちは友達になった。

それから秋学期も恩師の授業をお互いとる予定だったため話す機会が増えた。

お互いびっくりするほど興味対象は似ているけれど全然違う。

会って話す度にお互いの違いが露呈していき面白い。

それと同時に隠れて似たフィールドで新たな情報をどんどん集めている彼女を尊敬するとともに羨ましく思っている。

私が旅から帰ってきた今年、社会教育士の授業をとったらなんと彼女もいた笑

なんの相談もなかったのにここにもいるとは!と驚きいた。

週に1回その授業で会うのだが、最近彼女が少し冷たい気がしていた。

あれは雨の日。

一緒に公園で和菓子を食べながら何となく話してた。

私は彼女に自分がバンで日本全国を旅したいという突拍子もない計画を話していて、彼女はいつも通りそれを聞いてくれていた。

彼女が「映画にしたら面白そう」と一言言った。

そこから私の頭の中で電光石火が走り
「ね! 一緒に行こうよ! 映画監督になって!」
と彼女に私の旅を写した映画の制作依頼をした。

あ、もちろん全部妄想だ。
実現すれば最高だが、現実を考えるとなんとも言えない。

その会話があった日からなんだか冷たくなったように感じた。

それがたしか4月の終わりごろだった。

そこから私と彼女の関係は一種冷戦状態のようだった。

彼女はどう思っていたか分からないけれど、少なくとも私はそう感じていた。

なにか大きくて冷たいしこりが心の中残っていた。

話し合いたいけど話し合えない、お互いそれを回避して逃げているようだった。

そして3ヶ月ほどたった今そのしこりがすっかりと消えた。
溶けたと言った方が正しいかもしれない。

それは唐突だった。そして歓喜だった。

その日もいつもと同じ授業があった。

いつも急行電車を避けて各駅で来る私は微妙に早く着きすぎることが多く教室には私だけだった。

少しすると彼女が入ってきて珍しく私の後ろに座った。

「熱海行ってたの?」

「ううん、別所だよ。 別所温泉は長野」

「あ、そうなんだ。ストーリーに上がってた
 マンホールに温泉って書いてあったからてっきり熱海だと思った」

とたわいもない1週間の振り返りをした。

授業が始まる。

いつも通りこの先生の講義はなぜか頭に入ってこない。

どうやら今日はPDCAサイクルに基づき、
社会教育事業を考えていきましょうという趣旨の話をしていたらしい。

最後に10年後の自分のありたい姿を想像しその姿に近づくために現在の自分ができることを考えるというワークを行った。

行動を考える際の指標として自分のロールモデルを挙げることになっていた。

自己表現のロールモデル、リーダーシップのロールモデル、総合的なロールモデル
それぞれ人の名前を入れていく。

私は大学の先輩や恩師、ずっと心にいる赤毛のアンを入れた。

少し個人作業をしてから何人かで自分の書いたことをシェアするワークに移った。

私は彼女と2人でペアになった。

彼女が言った

「私の自己表現のモデルはあなたと久石譲です」

その時の私の驚きようと言ったら笑

久石譲と並んでいるところは恐縮過ぎるのだが。

彼女がまさか自分の斜め後ろで私をロールモデルとして思い浮かべていたとは。

私の中で尊敬の対象あり、時に羨ましくも見える彼女が私をロールモデルだと思ってくれている。

正直最近彼女は私を避けていると思っていたし、
嫌われているのではと心配さえしていた。

自分のロールモデルに嫌いな人を置くとは考えづらい。
最低限ポジティブに認識していてくれてはいるだろう。

ロールモデルとしたポイントとして以下の3つをあげてくれていた。

「自分のやりたいことをすっと人に言えるところ
 
 やりたいことには怖がらず
 とびこんでいけるところ

 自然と人に頼める、人を巻き込めるところ」

なんと。

私はむしろ自分がやりたいと思ったことをすぐに誰かに共有してしまう
(むしろしないとうずうずする)ためその行動はかなり自然でそれがウザがられていないかを気にしていたくらいだったのに。

良いところとしてあげてくれるとは。

そんな出来事があり、私の心の中で起こっていた彼女との冷戦は終わった。

これは数少ない片思いの末に友達になった彼女との一方的な惚気話である笑

(こんなこと書いたらきっと「物議を醸すから!」と怒られる笑)







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