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花に五戒の桜かな

こんばんわ、唐崎夜雨です。
4月8日、浅草寺をお参りしたのち、隅田川の桜を見て歩きました。これが今年の花見らしい花見。
隅田川の堤にタリーズコーヒーがあり、ここのテラスで散歩のひといき、飲むはカフェラテ。カフェで飲むのはたいてい、カフェラテかコーヒー。夏でもホット。砂糖不要。京都のイノダコーヒーは例外。

花は満開、花びらが風に吹かれてときおり舞い降りてくる。
サクラの咲き始めは嬉しいけれど、散り始めが好き。花吹雪になってしまうとそれはそれできれいだけど、世話しない。カフェのテラスに数枚はらりと降りてくるほうが愛おしい。

あだなりと花に五戒の桜かな 其角

これは、のんびりといかぬ様子の花見のようです。
五戒は在家仏教の戒め。不殺生戒、不偸盗戒、不邪淫戒、不妄語戒、不飲酒戒。
殺すなかれ、盗むなかれ、淫らなことするなかれ、嘘つくことなかれ、飲むなかれ、だと思う。

「あだなり」はここでは無駄なこと、無用なことの意味で、花の下では仏の戒めも無駄なこと。
殺生までするというのはいささか行き過ぎでしょう。飲酒はしないわけにはいくまい。浮かれりゃ邪婬もありそうで、妄語も偸盗もありえるでしょう。
ここは厳密に五戒ではなく、賑やかな、かなりハメを外した賑やかな花見を思えば良いのだろう。

『伊勢物語』より
あだなりと名にこそたてれさくら花
 年にまれなる人も待ちけり 

こちらの「あだなり」は不誠実。パッと散ってしまうから桜はイケズといわれるが、稀に来た人に花を散らさず待っていてくれていた。

其角のあだなりとは趣が全然違う。
開口一番「あだなりと」と言い切るところは江戸っ子のイナセな感じがして好きな俳句。
結論は先に言え、待ってらんねぇ江戸の春。

久保田万太郎にこんな俳句がある。
忍(のび)、空巣、すり、掻ッぱらひ、花曇

名詞を「、」で羅列しただけの俳句。トントントンと小気味がいい。
無法地帯なところ、其角の俳句に情景は近いかな。でも花曇りなので爽快感はない。ここが久保田万太郎らしいところかもしれない。

ちなみにこの日も花曇り。


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