違法アップロードや転売行為に対して、会社側・サービス側で対応努力をすべきだと思う話(Pornhubに無断転載されて)
こんにちは、心臓フェチのヒンメリです。フェチを通じて個性やコンプレックスを価値にするサービスの開発をしています。
今回の記事では、以前から「なんかやだなー……」と考えていた違法アップロードと転売行為について私なりの意見をまとめてみます。感情論で書き殴るのではなく、何が良くて何が悪くて、どうすればより良い社会になるのか、といった観点で記載したつもりです(口調が丁寧だとは言ってない)。
本記事の要点
・違法アップロードや転売行為について、実際にあった被害例や、そうした行為が生まれてきた歴史・背景などにも言及します。
・現在人気のサービスはCtoCが大部分を占めていますが、それが著作権侵害といった問題も引き起こしてしまっています。違法転載がしやすい仕組みのサービスが人気を博してさえいる始末です。
・違法アップロードや転売行為は、一部のサービスに利益をもたらす場合があります。これが事態をややこしくしており、対応が遅れる原因でもあります。
・でもそろそろ法整備したりサービス側で対応していなかいと、コンテンツ界隈が壊滅的になる可能性が出てきています。
・違法アップロード/転売行為をする人の大義名分は大体論破できます。良い転売と悪い転売についても述べています。
・Pornhubはめっちゃやばい気がします。コンテンツの権利を守る気がさらさらない(ように見えます)。最大手のサービスなら、そういった権利を守る活動をやっていくのが求められる時代ではないでしょうか?
本記事の対象読者
・クリエイターやモデルの皆様
・Webサービスを開発されている皆様
・権利の保護に興味がある皆様
・違法アップロードや転売行為の実情を知りたい皆様
それでは、現状把握→実被害→歴史と背景→今後の流れで解説していきます。
サービスへのアクセス数から見る違法アップロード
早速ですが本題へ。まずは違法アップロードから。
2020年現在、インターネットは違法アップロード問題に直面していると言わざるを得ません。まずは下記を御覧ください。
紹介元:「世界でアクセス数の多いウェブサイトトップ100をマップにしてみたら、意外な勢力図が見えてきた」
https://finders.me/articles.php?id=1230
英語原文はこちら:
https://www.visualcapitalist.com/ranking-the-top-100-websites-in-the-world/
こちらは世界でアクセスが多いウェブサイトを挙げ、そのアクセス数を円の大きさで表現したデータです(2019年6月のデータ)。
その上位10サービスは下記のようになっています。
1位 Google.com (月間アクセス数604.9億)
2位 Youtube.com (月間アクセス数243.1億)
3位 Facebook.com (月間アクセス数199.8億)
4位 Baidu.com (月間アクセス数97.7億) ※中国の検索エンジン
5位 Wikipedia.org (月間アクセス数46.9億)
6位 Twitter.com (月間アクセス数39.2億)
7位 Yahoo.com (月間アクセス数37.4億)
8位 pornhub.com (月間アクセス数33.6億) ※世界最大のエロ動画サイト
9位 Instagram.com (月間アクセス数32.1億)
10位 xvideos.com (月間アクセス数31.9億) ※現在2番手のエロ動画サイト
もう少し下まで見ると、14位がAmazon、17位がNetflixです。このうちCtoC(Customer to Customer : ユーザ同士でのコンテンツ提供サービス)で動画や画像コンテンツを扱うものは太字に書いた5つです(Facebookは実名交流SNSの側面が強いので、微妙なところですが外しています)。
Google, Yahoo, Baidu, Wikipediaといった検索・情報提供サービスを除けばほぼすべてがユーザ同士によるコンテンツ提供サービスだと言える現状になっています。
そしてこれらのコンテンツ提供サービスは、いずれも「簡単に、誰でもコンテンツをアップロードできること」という特徴によって発展してきました。それは誰もが気軽にコンテンツを提供し、これまで眠っていたデータを皆で閲覧し感想をシェアできるようになる一方で、著作権侵害といった問題も引き起こしてしまいます。
近年Youtubeは権利侵害についての対応を積極的に押し進めていますが、今からわずか15年前、Youtubeに初めて動画が投稿された頃は違法動画ばかりであったと言います(今もテレビ番組とか漫画のネタバレ動画とかめちゃくちゃありますが……)。詳細は下記をご参照ください。
Youtube以外のCtoCサービスはどうでしょうか。TwitterやInstagramは最近、ネットリテラシの向上に伴い転載や違法アップロードが減ってきましたが、それでもテレビ番組の録画映像や漫画の転載などは後を立ちませんよね。PornhubやXvideosはもはや言うまでもないでしょう、真っ黒です。世界最大の不法撮影物サイト、とまで言われています。
実際、Pornhubにいたっては「Private動画」と「動画ダウンロード可能」という違法転載を前提にしたシステムが構築されているような気さえします。前者は「友達」であるユーザ同士でのみ、お互いが投稿したPrivate動画を閲覧できるようにする仕組みです。後者はその通り、どんな動画でもダウンロード可能な仕組みですね。
あるユーザは、特定のユーザが投稿するPrivate動画が見たい。見たくてたまらない。ど~~~しても見たい。でも、見るには相手に友達として認めてもらわないといけない。そのためには、何か相手の興味を引くための貢ぎ物が必要だ。それなら、他からダウンロードしてきた自分好みのコンテンツをアップロードしてから友達申請してみよう……。よし行けた、やったぜ。もっとアップロードしたら、他のユーザからも友達登録されやすくなるよな。どんどん上げちゃえ。……そういう流れがシステムに組み込まれている気がするのです(あくまで私の意見ですよ)。そして実際、このシステムでPornhubは急成長を遂げました。世界最大のエロ動画サイトとなり、エロに関する統計データなどを公開して世間に貢献している……ように見えます。でも、いつまでたってもPornhub側の違法アップロードに対する対応はお粗末です(詳細は後述します)。そしてコンテンツの製作者やモデルの方々は傷つき続けています。
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この記事の推敲を手伝ってくれた方の意見も載せておきます。
Pornhubのprivate、動画ダウンロード機能は違法転載を誘発するやろうけど前提は言い過ぎかも? 違法性のないアップロードされた動画を個人で楽しむためにダウンロードすること自体は合法なため。(とはいえ各国の法的にアカンエロ動画を所有するっていう他の罪を誘発しそうではある)
確かに個人で楽しむ分には合法ですね。ご意見ありがとうございます!
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情報に溢れた今の時代では、一部の人、というかもしかしたら過半数の人は「漫画やテレビのコンテンツを勝手にメディアに載せてはいけない」ということすら普段意識していないかもしれません。ちなみに無断転載の投稿をリツイートするだけでも著作権侵害になり得るので気をつけてくださいね。
コンテンツを気軽に投稿したり、それによって収益を誰もが得られたりといった画期的な仕組みなどが発達してきたのはとても素晴らしいことです。ですが、そうした技術の進歩に比べて、教育・行政の整備が付いてこれていない気がします。こうした著作権などの権利侵害への対応が見直されるべき時代になってきているように感じます。
チケット転売への苦情の数やフリマアプリの現状から見る転売問題
次は転売問題について。独立行政法人国民生活センターは、全国の消費生活センターにおける、コンサートやスポーツなどの興行チケットのインターネットにおける転売に関する相談件数を集計しています。
引用元:「インターネットでのチケット転売に関するトラブルが増加しています!」
http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20190606_1.html
もはや解説不要なレベルで伸びてきています。2019年のラグビーワールドカップ日本大会、そして2020年のオリンピック・パラリンピック。これらのチケットがどう扱われ、どれだけトラブルが発生したかも簡単に想像がつくでしょう。
実際のところ、「転売」というのは「安く仕入れて高く売る」という市場経済に則った形式ではあるため、どこからが転売なのかの定義は難しくもあります(いい転売と悪い転売の違いについては後述します)。このために、どれだけ転売による被害が増えてきているのかの把握が困難なのも事実です。
しかしヤフオクやメルカリで「マスク」を探せばどれだけ転売が蔓延っているのか一目瞭然でしょう。現在は「ホッチキスの芯」になっているかもしれませんが……。
違法アップロードがサービス提供側にとって(他者を攻撃しつつも)集客効果があると同じように、転売行為もサービス提供側にとって(他者に迷惑をかけつつも)収益につながる点が、さらに自体をややこしくしています。
例えば、企業からしてみれば商品が売り切れることそのものは嬉しいことです。あるいはメルカリやヤフオクにおいてそれらの商品が転売されれば、フリマサービス提供者には販売手数料による利益が上がります。
ここで気になる点がひとつ。実際のところ、ヤフオクやメルカリといったサービスにおいて、転売による収益は全体の何割を占めているのでしょうか? これはずっと前から気になっていてたまに調べるのですが、検索すると「メルカリを使って転売で儲ける方法」といった記事、アフィブログ、Youtuberによる転売講座動画、情報商材などがわんさか出てきてまったく分かりません。"転売"の文字が楽しそうに踊り狂うその検索結果画面を見るたびに私は世の中に絶望した心持ちになります。この気持ち、分かってもらえるでしょうか……。
メルカリの決算情報資料も軽く拝見しましたが、そのあたりについては触れられていないように思えます。結構重要な情報だと思うのですが……(余談ですが、USメルカリの出品物の真贋鑑定サービスはちょっといいなと思いました)。
そして本記事を執筆している2020年7月30日現在、メルカリアプリでは、出品物の違反報告をする際に「悪質な転売商品のため」という項目はありません。また、出品ガイドラインにおいても「メルカリ内で購入した商品を著しく高い金額で転売することは禁止」という記載があるものの、よそ(メルカリ以外の場所)で購入した商品の転売についての記載は基本的に見当たらないように思えます(チケット類についてのみ、個別に「転売目的だとみなされるものは禁止」とあります)。マスクの転売防止への対応も、国からの要請があるまでは未対応だったのも含めて、そのあたりもうちょっと積極的に対応して欲しいな、と私は感じています(転売の定義が難しいので無いのだろうな、というのは分かるのですが)。このような環境では、転売が蔓延ってしまうのもやむなしなのかもしれません。変えなきゃ、世界。
実体験・実被害から見る違法アップロードと転売
さて、ここまで色々お話してきましたが、この記事を書こうと思ったことの起こりは、私が自分のサービスで提供している心臓フェチの方向けの動画がPornhubに転載されたからです。転載禁止、と日本語と英語で動画内に書いてあるにも関わらず……です。お知らせくださった方、ありがとうございました。
今回違法転載された作品は、私の活動に興味を持ってくれた方に報酬を払って撮影した、いわゆる共同製作作品でした。あ、ちなみに全然エロ動画とかじゃないですよ。私のサービスはそもそもエロ動画の投稿禁止なので……。心音フェチとかお腹の音フェチといった、ニッチな性癖を持つ方向けの動画です。エロとはなんぞやみたな問答になりそうですが、ASMR動画みたいな感じだと思ってもらえればいいと思います。私の提供するサービスそのものについては下記にまとめているので、興味がある方はご参照ください。
私のサービスでは、こうした違法転載を防ぐために、コンテンツ購入ユーザのメールアドレス認証と電話番号認証を行っています。にも関わらず、堂々と違法アップロードする方がいるのには驚きました。電話番号や決済情報があれば、ある程度特定できるの知らないんですかね……。違法アップロードは利用規約における不正利用にあたるので、プライバシーポリシーに書いてある通りに該当人物を特定することもできなくはありません。
なんにせよ私はめちゃくちゃ嫌な気分になりました。その時の私の心境を表現すると下記のような感じです。
作品がエロサイトに転載された……それをモデルさんが知ったらどう思うか分かっとるんか? 本人めちゃくちゃ傷つくに決まっとるやんけ。ひとりの人生をぶち壊すかも知れんのやぞ。それに加えてもう二度と同じような作品を作られへんのやぞ、それも分かっとるんか? おまえそれ自分が好きな作品やからこそ上げたんやろ。それによって確かにお前は「友達」が増えて動画を沢山見られるようになって今はウハウハかもしれん。けど同じモデルさんの作品見られんようなるんやぞ、それでもええんか? そんでそれを皆が続けたら、おまえの性癖を満たすための最高の作品を誰も作らなくなるけどおまえほんまにそれでええんか?
とはらわた煮えくり返しながらDMCA違反申請(デジタルミレニアム著作権法に違反してるので削除してくれ要請)を行いました。めっちゃ面倒くさくてわかりにくい英語のフォームで……。実は違法アップロードはこれが初めてではないので勝手は分かっていますが、それでもなかなかに面倒くさかったです。
参考までに、違法アップロードを教えてくださった方とのお話の内容についても載せておきます。DMなのでえらそうなこと好き勝手に書いてますが許してください。あとPornhubじゃなくてPornohubって書いてますね。
そして同じタイミングで、下記のツイートを拝見しました。一部引用。長いけど転売被害に遭いつつも戦っている店舗側の切実な思いが述べられていますので、よければTwitterの方で続きを確認してください。
以下はホットケーキミックスやドライイーストが買い占めされた時に困った方の実際の声です。
実際のところ、皆さんも身近に困ってる人、沢山いますよね?
助けたい、力になりたいと思うの自然ですよね……?
つーか私だってあつもり仕様のSwitchほしいわ……!!!
といったこれらの体験や思いが重なって、本記事を書くに至りました。
正直、どうしてここまで違法アップロードも転売問題も野放しになっているのかが分かりません。世の中は私なんかより頭のいい人がいっぱいいるはずなのに、どうしてこうなったの……。
サービス提供者側の視点に戻ると、以下のような被害もあります。これからサービスを開発される方はご留意ください。
・ポイント還元:Paypayなどによるポイント還元祭などは、転売ヤーに悪用されやすい傾向にあります。ポイント獲得活動のことをポイ活と言ったりしますが、これもひどいケースだとポイント取得専用のツールが存在していたりします。具体的にはクレジットカード決済後、すぐにキャンセルすることでポイントだけ得ようとするといった攻撃が実際にあります。
・特定の行動でポイントもらえるキャンペーン:SNS抽選やお友達紹介キャンペーンなど。これらは転売とは少しズレますが、組織的にこれらの特典を搾取しようとする組織が存在します。IPチェックや、身分認証は無駄です。中国、ベトナム、インドネシアあたりが実際に組織的に攻撃してきたのを体験したことがあります。悪用されないような仕組みを事前に検討しておくのが寛容です。
一般の方にも身近で、よりタイムリーな被害といえば三浦春馬氏のグッズでしょうか。他者の不幸に便乗して不当な利益を得ようとするこの感覚、正直理解出来なさすぎてワケがわかりません。マスクみたいな必需品を買い占めるのもそうだけど、転売屋の人たちって頭の中どうなってるの……?
被害は創作活動にも及びます。私は同人誌、特に同人小説を書いたりもします。小説はまだマシですが、イラスト同人誌を描くクリエイターの方にとっても違法アップロードや転売には頭を抱えていることでしょう。
このように、違法アップロードや転売はもはや身近に存在しており、見逃せるようなレベルではなくなってきました。でも人任せにはせず、私は本気で何か対応を考えていきたいと思います。みなさんも何か良い対策があればお知らせくださいね。
なお、参考までに、一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構が公開している漫画や動画の海賊版サイトに対する現状も載せておきます(2019年のデータ)。残念なことに、日本からのアクセスが多数を占めるようです。
引用元:「海賊版サイトによる被害の現状とCODAの対策」
原文PDFに下記リンクからアクセスできます。
違法アップロード・転売行為をする人の主張/それに対する反論
ではここで、これらの行為を行う人達の言い分等について見ていきましょう。
まず違法アップロードについて。
★違法アップロードをする人の目的
① 収益が得られるから。
②「アップロード友達」が増えることによるメリットがあるから。
(③ 自己満足のため)
軽く違法アップロードの歴史に触れると、違法アップロード問題が顕在化してきたのは2002年のWinnyというP2Pソフトウェアによるコンテンツの交換が有名になった時期や、2005年のYoutubeの台頭あたりからかと思われます。それ以前にも違法アップロードはありましたが、その違法アップロードファイルが他の人の目に触れる機会そのものがあまり多くありませんでした。
Youtubeは上記の①:再生回数による収益の仕組み
WinnyやPornhubは上記の②:友達が増えることによる特典
が目的になりますね。今はもはやWinnyを知っている人のほうが少ないかもしれません。私もあまり詳しくないので間違っていたらすみませんが、Winnyには多く違法アップロードしているユーザは他のファイルの違法ダウンロード速度が早くなる仕組みとかがあった気がします。参考までにWikipediaのリンクを貼っておきます。
★違法アップロードをする人の大義名分
① データは誰も見られないよりも、見られてこそ意味があるから。
② それによって多くの人が作品などを楽しめるから。
③ 素晴らしい作品を布教したいから。
パッと思いつくのはこのあたりでしょうか。
①は、この中で一番筋が通っているかもしれません。確かに昔のVHS(ビデオ)主流だったころの番組などは今では入手不可能なものも多く、それらがYoutubeなどにアップロードされれば、資料として大変な価値があるでしょう。個人の記録を集団の記憶に変換する、そう考えれば意義はあるのかもしれません。このケースは最もグレーゾーンに近い分野です。でも、本当にそういった文化的な価値として持っているメディアを活用したいのであれば、それはメディア博物館などのしかるべき場所に提供すべきなのかもしれません。それが現在無いようであれば、そうしたメディア・コンテンツを専門的に扱う組織を非営利組織として立ち上げても良いかもしれませんね。
②と③の主張は流石に通らない気がします。作品の良さを知らしめたいのなら作者のSNSをフォローしてシェアすればいい話です。むしろこの行為はクリエイターにとって有害以外の何物でもないことは、先に私が太字の関西弁で述べたところで分かっていただけていると思います。
次に転売行為について。
★転売行為をする人の目的
① 収益が得られるから。
② 情報商材などを売るためのきっかけになるから。
(③ 人助けのため)
①と②の目的はまあ、わかりきってるので特に触れません。
問題は③のケースで、本当にただの善意で買い占めて転売する人が多数いらっしゃいます。あるいは、転売しないまでも「品薄になってるからとりあえず多めに買っておこう」という思考の方は多いでしょう。実例は下記。
知り合いのママさんが「ホットケーキミックス、今転売されてるみたいでお店にないね、私たまたまあるの見つけたから、必要な人の手に届くように、そこにあるの全部買ってメルカリで出すことにした!」って言ってて正気で言ってるのか突っ込んでほしいのか判別つかない…
こういう例を見ると、学校の道徳の時間などで違法アップロードや転売行為についてちゃんと教育することの必要性を感じますね……。
さて、それでは転売の歴史について。
転売行為は、仲卸業者や「せどり」とは違いますが、それらの起源はおそらく同じです。日本の場合はかなり古くからの歴史があるようです。
300年前、紀州で出来たみかんは船を使って江戸に出荷されていました。
ある年は、紀州のみかんは大豊作でした。商人はこぞって江戸に向かおうとしました。しかし、江戸への航路は嵐に閉ざされて出荷が困難でした。
江戸に出荷出来ないならば、紀州のみかんは大量に余ってしまいます。そうすれば、紀州のみかんの値段は大暴落します。一方、江戸にはみかんが届かないのでみかんの価値は高騰します。需要と供給のバランスが崩れて相場のズレが生じた状態です。
ここに目をつけたのが、紀伊國屋文左衛門です。彼は、大金を借りて紀州の価格崩壊したみかんを買い漁りました。そして、荒れ狂う嵐にも負けずに命懸けで江戸にみかんを送り届けました。紀州で安く買い叩いたみかんを、江戸で高く売る。これが、最初のせどりだったようです。
なるほど、このケースでは叩かれるような悪いことをしてはいなさそうです。これを根拠に、転売屋は下記のようなことを主張したりします。
★転売行為をする人の大義名分
① この「せどり」とビジネスモデルは全く同じで何も悪くないから。
② 転売によって遠方の人、イベントに参加できない人が素晴らしい作品を手に入れられる手助けをしているから(その作業台、手間賃として利益くらい得てもいいよね?)。
①については、もっともらしいことを言っているような気はします。なので調べてみました。そうすると、下記の記事が完全な回答を述べてくれていました。
シアーズ・ローバックは大量の商品を売り捌くことで、規模の経済を最大限に生かすことができました。カタログに掲載された商品は、農村の人々が地元の商店で買う場合の半額近く安くなることも珍しくなかったようです。転売屋と仲卸業者や小売店との違いは、ここにあります。
転売屋は商品の価格を高騰させますが、仲卸業者や小売店はそれを引き下げるのです。「そんなバカな!」という声が聞こえてきそうですね。仲卸業者にせよ小売店にせよ、商品が流通する過程で利益を上乗せしています。私たちの日常的な感覚からいえば、これらの企業は余計な利益を貪る存在で、彼らを介さずに生産者から直接商品を仕入れたほうが――いわゆる「中抜き」をしたほうが――安くものを手に入れられそうです。
ところが現実は違います。たとえば海外から資材を輸入する場合が顕著ですが、自分で人を雇って買い付けに行かせるよりも、仲卸業者を利用したほうが、大抵は安上がりです。仲卸業者は現地で商品を安く仕入れるノウハウを持っていますし、シアーズ・ローバックと同様に規模の経済を生かすこともできます。
さらに重要なのは、仲卸業者同士が競争をしているという点です。顧客はより安い仲卸業者から仕入れようとするため、価格の競争が起こります。そして商品の価格は、より安い、より適切なものに近づくのです。
品薄を発生させて価格を高騰させるような転売行為は、社会全体にとっては迷惑な存在です。「悪い転売」と呼ばざるをえないでしょう。
私から何かを補足する必要はなく、もう完全に論破してくれていました。素晴らしい記事だと思うので、ぜひ一度全文を読んでみてください。
……と思ったけど推敲していて一つ補足が思い当たりました。現代において物品の売買を行う場合は、たとえ個人であろうとも古物商許可を取得する必要があります。もちろん該当するケースと該当しないケースがありますが、組織だって、あるいはそれをビジネスとして転売行為を行う場合には必要なケースが多いでしょう。古物商許可を持っていない時点でアウト、と言えるような時代もすぐそこかもしれません。
さてそれでは②について。転売によって遠方の人、イベントに参加できない人が作品を手に入れられるから……これは転売屋が数人しかいない場合はたしかにそうかも知れません。でも今は違いますよね? 明らかに転売屋があらゆる人気商品を買い占める時代になっています。この説明は全く理にかなっていません。
そして、列に並んだりするから手間賃として上乗せ価格で販売する? これも理屈が通りません。そのグッズ等を購入した収益は、その本人に利益が行くから買うのです。コミケの同人作家などは読者に素晴らしい作品を届けるために、何百時間という時間をかけてさえ、赤字すれすれの原価価格で頒布していたりするのです。それを買い占めて勝手に個人の利益にして良いと、本当に思っているのでしょうか……?
ちなみに私がやっていた小説本はページ数が多くなる関係で特に印刷費が厳しい分野です。余るの覚悟で、滅茶苦茶多めに刷ってさえ200Pの新書判サイズの印刷費が20万円、挿絵依頼費も含めると原価が一冊辺り650円くらいでした。それを700円で頒布しているのです。知り合いとか隣り合ったブースの人には無料で配ったりもしますし、まず利益はでません。そして実際、滅茶苦茶在庫が余るのです……。
そうした事実を知ってなお「コミケに来られない人向けに善意でやっている」とか言えるのでしょうか……?と思います。そんなに善意でやっているなら、利益ゼロでもいい、くらいの意気込みは見せてほしいものです。マジで。
転売行為への対応……個人/サービス/行政として
さて、ここまで現状や歴史について触れてきました。それではこれから、我々は何を気をつけていけばよいのでしょうか。
ユーザ側の視点としては、違法アップロードをしない、転売行為をしない、というのはもはや言うまでもありませんね。この記事をここまで読んでくださっている皆様なら大丈夫だと思います。
では、サービス提供者の視点としてはどうでしょうか。サービスを提供している方はあまり多くないと思いますが、私が実際にそうなのでここについても書いておきます。
★ サービス提供者全体としてのあるべき心構え
先に挙げたポイント還元キャンペーンや、特典付与などのプロモーションを行う場合……そして任天堂Switchをはじめとした人気商品の販売時には、悪意のあるユーザ、すなわち転売ヤーたちが攻撃をしかけてくることを予め想定して対応しておかなければなりません。
自分のサービスの利益が減るから対応しない?
そんなコストを掛けている余裕はない?
そんなことは言えない時代になってきています。SQLインジェクションを始めとした個人情報抜き取り/サーバダウンのための攻撃には当たり前のように対応するのに、違法アップロードや転売に対しては何も対応しないのでしょうか。大手のサービスであればあるほど、それは通用しなくなっていくと思われます。
私のサービスでは、利益を捨ててでも身分確認システムを実装しています。ユーザには負担をかけてしまうことになり、結果として収益は減ってしまっているのですが、それだけの対価を払ってもコンテンツの違法アップロード/転売行為の防止が大事だと思っているからです。それはこのサービスがそもそも違法アップロードをなくしたいという思いから来ているサービスでもあるし、私のサービスに投稿してくれているサークルさんの思いでもあるからです。ひいてはモデルさんのためでもあるし、フェチ界隈全体、コンテンツ界隈全体のためでもあります。サービスは今は赤字ですが、このスタンスは変えるつもりはありません。(なので、もしよかったらサービスを使ってくださいませ……身分証明書確認をクリアしたユーザだけが参加できるイベントの企画とかもできます……。個人撮影とかチェキ会とかオフ会とかにどうぞ……!)
ただ悔しいかな、効果的な違法アップロード防止策を行うためには利益が必要なのも事実です。「実体験・実被害から見る違法アップロードと転売」の項のDM内で述べたような、Web上をクローリングして違法アップロードされたコンテンツを探すようなシステムも実装を検討しましたが、これはめちゃくちゃお金がかかります。あるいは違法転載防止ラベルなどを流行らせるために、知名度が必要だったりもします。残念ながら、これらは私には持ち合わせがありません。
なので、Pornhubやメルカリといった大手のサービス側で対応してもらえるのが理想ではあります。専用のAPIの公開、不正な転売の報告の利便化、ガイドラインの強化など。私のこの声が届くこともきっとないのでしょうが、それでも誰かに共感をしていただけたら幸いです。
ちなみに、私が酷いと感じたPornhubの著作権侵害被害申告フォームはこんな感じです。
これの何が酷いかというと、
・該当の動画のURLから直接侵害報告できない。
・該当の動画がプライベート設定になっていたときに内容を確認できない。
・そもそもこのフォームがあるページを見つけることが大変。
・侵害被害報告をするのに住所や氏名といった個人情報が必須。
・「あなたは嘘ついていないよね」「嘘ついてたら罰せられるかもよ」「このフォームを悪用したらあなたのアカウントを停止するかもしれないよ」といった内容にチェックさせられる。
・「著作権者の名前が、無効化されたコンテンツの代わりにPornhubで公開されること」、「この申請に記載した個人情報が、コンテンツのアップロード者に転送される場合があること」について同意してサインしなければならない。
パッと挙げただけでこれだけ酷い点があります。いや私がアメリカのDMCAに詳しくないだけなのかもしれないけど。嘘の申告に対応するためなのかもしれないけど。でも「それ、侵害されているって主張する方にやらせるか?」ってことが多くないでしょうか? 少なくとも私は、なんで侵害されている側の私がこんなことを書かないといけないんだ、と感じました。被害者側に寄り添って違法アップロードと戦う姿勢が全く感じられません。
あ、もし、同じように違法アップロードで悩んでいる方がいらっしゃいましたら気軽にお声がけください。対応のお手伝いしますので。
★ 国(行政)としてのあるべき心構え
ここまでに述べたような違法アップロード/転載防止の仕組みを後押しするような体勢が国や法律として必要だと感じます。個人情報保護法が強化されて、Webサービスのセキュリティは重要視されるようになりました。同様に違法アップロードや転売行為に対する刑罰、ないし、それらを防止するための仕組みの構築にかかる費用のサポート、そして教育。これらの体制の構築が行政には必要だと感じます。
現状では、免税の仕組みやキャッシュレス化の仕組みなども、転売ヤーに良いように使われて悪用されています。もっと本腰を入れた対応が取られないままだと、日本はコンテンツビジネスにおいて無法地帯になるか、あるいはギッチギチに法律で表現が縛られて、身分確認をしないと好きなものも買えないディストピアが待ち受けているような気がします。そんな世の中にならないことを私は願っています。
各サービスの権利保護への動き
さて、ここまで割と絶望的な内容を書いてきた気がします。ここらで希望が必要だと個人的に感じたので、各種サービスが権利保護のためにどのような動きを見せているかを軽く触れておこうと思います。
1. Youtube
YoutubeはGoogleがやっているだけあって、高度な技術と人的リソースを使用した有用な対策が行われているように思います。Youtubeでは、似たような動画がアップロードされるとそれを自動で検知してくれて、著作権侵害報告を楽にできるような仕組みが整備されています。また、チャンネルの収益化を行う際には審査が必須であるため、違法アップロードチャンネルが収益化される可能性が低めになっています。これらの対応、さすがGoogleさん、といった感じです。
2. アル
「アル」はマンガファンのけんすうさんによって立ち上げられた、マンガファンによるマンガファンのためのサービスです。このサービスは色々すごいところがあるのですが、私が一番凄いと思っているのは、かつてから2chや5chなどの掲示板・TwitterなどのSNSで使われてきた「レス画像」を合法的にブログで使えるようにしたという点です。
いえ、合法です。
確かにこういう画像をブログなどに掲載するのはかつては違法でした。
が、アルが違法ではなくしてくれました!!!!
ちゃんと権利をとって、使えるようになっている画像は下記から探せます。
このように権利を保護するためのサービスは、これから企業のCSR(社会的責任)として求められる時代になってきたように思います。私もこのような画期的な権利保護の仕組みを考えて提供したいものです。
余談ですが、けんすうさんは集英社×ビジネスプランのマンガテック2020のメンターさんでもあります。私も何かアイデアを応募してみようかなと思っているので、興味がある方はぜひチェックしてみてください。
3. Amazon
転売については、Amazonさんがいい仕事をしてくれているそうです。マーケットプレイス(マケプレ)も以前は転売の温床で、商品がない状態ですら受注することができて転売ヤーに良いように使われてしまっていたようです。が、それらの行為に対する取り締まりが年々厳しくなっていっている模様です。Amazonを拠点にしている転売屋(本人はセドラーと言っています)の例では、売上金の入ったアカウントがそのまま利用停止になったりしているようです。さすがAmazonさんです!!
しかしこうした転売屋のブログを読んでみると、我々とは思考の構造が全く違うということが否応なしに分かってきてしまいます。そのブログへの直リンクを貼りたくないので一部引用しますが、アカウント停止になったその人はこんな感じのことを書いています(引用元を記載しないわけにはいかないのがつらいところです)。
ところで読者の皆様はこの方をご存知でしょうか? 億万長者としても有名な、Amazonの会長さんのジェフ・ベゾスさんですね。実はこの方はTwitterもやられているんですが、悲劇に見舞われている僕は、Amazonに売上金を凍結されている全ての日本人を代表して抗議すべきだと考え、彼にメッセージを送りました。
おうベゾスの旦那、儲かっとるか?とっとと売上金返してアカウントも再開せえや。おどれに150万円パクられたままじゃワシのメンツが丸つぶれや。この業界では舐められてメンツを潰されたが最後、ワシらはメシを食えんのじゃ。(意訳)
とメッセージを送ってみたものの、ベゾスからはスルーされてしまいました。
引用元:下記画像参照(アクセス非推奨)
Amazonの会長に、Twitter上で、勝手に日本人を代表して、転売の利益を返せよって絡みに行く……これって正気で言ってるんですかね……??? でも、他のブログを見てもわりとこういう思考の方が多そうな雰囲気がしました。もしかして私が気がついていないだけで、もう日本は終わっているのでは……?
個人的に、これからの日本の転売問題については、任天堂やメルカリの対応に期待しています。特にメルカリには日本最高レベルの技術者の方が沢山在籍していらっしゃるので、何かしらの凄い対応をしてくれることでしょう(逆に言うと、それだけの技術力があるのだから対応してくれないと困ります)。
最後に自己紹介
最後になりましたが自己紹介を。
心臓フェチのHimmeli(ヒンメリ)と申します。心臓が好きすぎて、フェチのために生きることにした人間です。どのくらい心臓が好きかは、下記の記事を見てもらえたらご理解いただけるかと思います。
私は、人種・性別・国籍に関係なく、誰もが理想のフェチコンテンツを購入/販売できる社会の実現を目指して、フェチのオンラインマーケットサービス「fetiquette」の開発を行っています。
もっと具体的に言うと、
・「心臓病の人が、自身の心音を心臓フェチに販売して治療費を得られる」
・「身体障がいを持つ方が、自身の写真集を欠損フェチに販売して義手の製作費用を稼げる」
といったように、フェチを通じてユーザの個性に価値を付与して提供・社会的貢献ができるようなサービスを開発しています。
権利保護・安全確保もサービス立ち上げ理由の一つであり、コンテンツを購入したり、イベントに参加する方の本人確認を代理で行ったりするサービスなども提供しています。サービス立ち上げにおける思いは以下の記事にも記載しています。
ご興味がある方は、twitterアカウントをチェックしてみてくださいね。
フェチなどでお悩みの方は気軽にヒンメリまでご相談ください。
現在、私は各種フェチ界隈において、お互いのフェチの理解を深めやすいようなフェチ可視化支援サービスを別途開発中ですので、そうしたサービスが皆さんのお役に立てれば幸いです。
また、権利保護のためにこういうことをして欲しい、こういう仕組みを作って欲しいという意見がありましたらお知らせください。私でできる範囲であれば、実現のお手伝いをさせていただきます。
さて。次回の記事は、同人即売会等のイベントやギャラリーにおけるセクハラ問題について書く予定です。重いテーマが続きますが、ぜひ宜しくお願いいたします。
あ、もし良かったら私の小説も読んでみてくださいね。今書いているのはこれです。特殊性愛者の悩みを描いた小説。
かつて発刊して今も在庫を抱えている同人誌はコレ。
さて、今回の記事はここまでです。
それではまた次回の記事でお会いしましょう。
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追記:本記事公開直前に、マスク転売OKになるという報道があったのを知りました。なぜ……どうして……。