エストニアと日本で起業し「フェチのCtoCサービス」を提供するまでの話
こんにちは、心臓フェチのヒンメリです。
今回は表題の通り、フェチに悩んで生きてきた私が、これまで何を考えどんなことをしてきたのかを記事にしてみようと思います。
本記事の要点
・美点はもちろん、病気や怪我すらをも含めた「あなたの個性」そのものをフェチコンテンツとして売買できるサービスを開発・提供しています。
・フェチに悩みに悩んで、エストニア共和国と日本にフェチの会社を起業しました。
本記事の対象読者
・フェチをお持ちの方、フェチに興味がある方、フェチに悩んでいる方
・エストニア共和国や日本での起業に興味がある方
・Webサービスのゼロからの立ち上げ(スタートアップ)に興味がある方
はじめに - 自己紹介
心臓フェチのHimmeli(ヒンメリ)と申します。心臓が好きすぎてフェチのために生きることにした人間です。どのくらい心臓が好きかは、下記の記事かTwitterを見てもらえたらご理解いただけるかと思います。
一応エンジニアですが、このフェチの活動のために日本やエストニア共和国に会社を起業し、生活費を削りながらフェチのサービスを自前で開発・運用しています。サービスの企画・開発以外にも、フェチを語る会といったフェチの可視化ワークショップや、記事執筆・プロモーション活動など色々やっています。ニッチな方を取材するメディア「Nichっち」さんに面白い記事や動画にしていただいたりもしているので、ご興味があればこちらもどうぞ。
私は物心ついた時から「心臓」が好きな心臓フェチでした。基本的に、人間そのものにはあまり興味がなく、その人が持っている心臓の良し悪しで人を好きになったり、あるいは興味が持てなかったりする難儀な人格をしています。私にとっての理想の心臓とは、拍動が強く、心拍数の変化幅が大きく、そして不整脈や心筋梗塞といった心臓病を持っていることです。「私、不整脈なんです」と言われると、それだけでその人に好印象を抱いてしまう程です。そして、もしも可能ならその心臓を直接握ってみたいとすら思ってしまうのです。このため医療系の学校に進学しようとも考えました。が、実家が裕福ではなく、医師を目指せるほどの頭を持っていなかったため、エンジニアとして手に職をつけられる工業高等専門学校に進学し、その後の筑波大学大学院でもIT技術を専門に学びました。このような環境では当然、理想の心臓に出会う機会は全くなく、子供の頃から大人に至るまで、ずっと悶々とした日々を過ごしてきました。この感覚をご理解いただけるでしょうか。一般に言う性的欲求のようなものを、私は一生満たすことができないんじゃないか、といった恐れが常に心に渦巻いているのです。また、人間の生きる目的を「種の保存」とした場合、心臓という臓器に性的興奮を覚える私は人間失格なのではないか、という不安感も拭えずにいるのです。
でも、あるとき「心臓病の人が、自分の不整脈心音などを売れる場所や機会を作ったらいいんじゃないか」ということに気が付きました。その販売利益を治療費に充てることができたら、心臓病の人も心臓フェチの人も皆幸せになれる、と。そうした気付きがあって、「フェチコンテンツの販売サービス」を開発したり、同じようにフェチで悩む人のために「フェチを語る会」といったイベントを実施したりするようになりました。私は心臓フェチこそが自分のアイデンティティであると確信し、それまで勤めていた会社を退職し、自らフェチのための会社を起業しました。それが、エストニア共和国と日本に設立した会社です。その会社では「病気や怪我でさえも個性として捉えることができ、あらゆる人がその個性によって正しい利益を得られるようにする」活動を行っています。具体的には下記のような活動です。
人種・性別・国籍に関係なく、誰もが理想のフェチコンテンツを購入/販売できる社会の実現を目指して、フェチのオンラインマーケットサービス「fetiquette」の開発を行っています。
もっと具体的に言うと、
・「心臓病の人が、自身の心音を心臓フェチに販売して治療費を得られる」
・「身体障がいを持つ方が、自身の写真集を欠損フェチに販売して義手の製作費用を稼げる」
といったように、フェチを通じて皆さんの個性に価値を付与して提供・社会的貢献ができるようなサービスを開発しています。
※フェチコンテンツというと何だかエロっぽいですが、サービス上でいわゆる「エロコンテンツ」は扱っていません。あくまでフェチのサービスです。
現在、ユーザ登録数は1000名程度です。コンテンツの購入者には海外の方が比較的多いため、フェチコンテンツの海外向け販売を行いたい方を対象とした機能(自動翻訳など)を今後は追加提供していく予定です。自分の心臓フェチのために、また皆さんのフェチのために今も活動を続けていますので宜しくお願いいたします。
自分のフェチに悩む人は日本だけではなく世界中に沢山いて、そうした人たちは性癖をカミングアウトすることもできずに悶々と日々を暮らしています。そうして悩む人たちに対して、悩んでいるのはあなただけじゃなく、仲間が沢山いることを伝えていけたらいいなと考えています。また、コロナ禍の昨今では、医療フェチのための会社をされている方が、医療服を医療機関に無償提供するという素晴らしい出来事がありました。
こういった、フェチを通じた社会貢献にもつなげていけたら、と思って日々を生きています。私の活動全般や、fetiquetteのサービス開発などに興味がある方は、気軽にお声がけください。
課題と解決策 - フェチのサービスを立ち上げた理由
私がフェチのサービスを立ち上げることにした理由は主に6つあります。下記にその理由を示していきます。
1. 誰もが理想のフェチコンテンツを安全に購入/販売できる場を作りたい
2. フェチを通じた社会貢献ができるようにしたい
現状、ニッチな趣味を持つ人々にとって、理想のコンテンツを買える場というのは多くありません(不整脈が好きだからと言って、不整脈心音を買える場はあまり多くないのは想像に難くないでしょう。他のフェチでも同様です)。そして多くの人は、自分の個性やコンプレックスに価値があって、お金を払ってでも提供して欲しいと願う人がいることを知りません。それが私には残念でならなかったのです。不整脈で悩む人は沢山いて、その心音を愛する人も沢山いるのに、その両者が交わることがない世の中を変えたかったのです。
フェチは美点だけではなく、病気や怪我、コンプレックスでさえ価値のあるものに変換してしまう他に類を見ない分野です。この特性を活かし、心臓病から利益を得る、などの社会貢献につなげたいと思い、フェチのメルカリに近いようなCtoCサービスの構想を練ることにしたのです(当時はメルカリは今ほど有名ではなく、私も知りませんでしたが……)。
なお、実際にどんなフェチコンテンツがどのくらいの価値を持っているのか、というのを別途記事にしました。興味がある方はこちらもご参照ください。
(上の記事の中でも書いていますが、「フェチで稼ぐ」的な表現は、実はあまり好きではありません。あくまで「好きなこと」として捉えたいので……。それでも、コンテンツ販売者には利益も大事だと思うため、あえてフェチで副収入、といった表現をしています)
3. 誰もが他人の目を気にすることなく自分のフェチを満たせるようにしたい
4. 安全にフェチ活動を行い、同じ嗜好の仲間と出会えるようにしたい
昨今ではLGBTQに対する理解が深まりつつあるなど、各人の個性についてとやかく言われることは減ってきておりますが、それでもまだ、特殊性癖は変な目で見られることがあります。「私は高身長の人が好き」「私はイケメンが好き」と発言するのがごく一般的に認められているように、「私は心臓が好き」と、好きなことを好きだと言えるような世の中にしたいと思っています。
そして、マイナーフェチは、自分のフェチを満たせる場が少ないのも課題だと感じています。フェチ界隈のオフ会などは、性癖に絡んでくることもあり問題が発生しやすいため、そこを第三者として間に入ってサポートしてあげることができたらな、と思い、本人確認代行サービスやイベント開催支援サービスなども提供することにしました。
5. 作品の転売、転載などの違法活動をなくしたい
フェチ作品に限りませんが、世の中の多くの優れた作品はポルノサイトなどへの転載が横行しています。当然、無断転載、違法アップロードはご法度です。こうした行為はクリエイターの制作意欲を削ぎ、コンテンツの供給量低下を招くため、結果的に自身の首を締めることになります。私達のサービスfetiquetteでは、コンテンツの売買を行う方には個人情報確認を実施させてもらい、不正転載などを防止する仕組みを取り入れています。こうした身分確認の仕組みはユーザ的には不便であり、不便であるということはサービスの収益減に繋がってしまうのですが、それでも違法転載を防止しコンテンツを保護するための仕組みを実装せずにはいられませんでした。実際にフェチ映像を制作されているサークルさんにインタビューさせて頂いたところ、違法転載問題への対応にものすごく苦慮されていたからです。安心して作品を投稿し、適切に評価される仕組みがもっと流行っていくと良いですね。
ところで、フェチを販売する、購入するということに対して違和感を覚える人が一定数いらっしゃるようです。その気持ちはとても良く分かります。昨今は、無料でコンテンツを入手する機会がとても多いですから。しかしこう考えて頂けたら幸いです。
購入者がコンテンツに対し、製作にかかった費用や時間に見合った対価を支払うことで、クリエイターは利益と実感を得て、よりクオリティの高いフェチコンテンツを提供しよう、という良い循環が生まれる。
もし宜しければ、「フェチを売買する」ということをポジティブに捉え、積極的に取り組むことを検討してもらえたらと思っています。
6. 病気や怪我を含めて、あなたの個性そのものを好いてくれる方が世界のどこかに必ずいることを知ってもらいたい
最後の一つ、これは個人的な願いです。不整脈や動悸が嫌で悩んでいる人は間違いなく沢山いらっしゃるでしょう。それがつらいこと、毎日泣きたくなる気持ちも分かります。でも、私のように不整脈が大好きな人もいるし、その心音にとても尊い価値があると思っている方も、少数ですが必ず存在するのです。もっと言えば、全ての人は心臓が動いているだけで、心臓フェチの方からしてみれば尊い存在なのです。そうした「あなたの価値」をちゃんと知ってもらいたい……本サービスの着想は、元々そこから来ています。
法人化について
多くの方のフェチを支援する組織・サービスを運営する以上は、法人税やオフィスの費用などのコストを払ってでもその信頼性を確保するべきである、と考えました。そして、市場規模やビジネスを行う上でのインパクトを考慮した場合、日本だけではなくグローバルに事業を展開できる体勢にしておいた方が良いとも考えました。そのため、フェチサービスの提供の主体地を日本としたfetiquette Japan株式会社を設立しました。同主体地をエストニア共和国としfetiquette OÜを設立しました(OÜはエストニア語で株式会社のようなニュアンスです)。
エストニア共和国を選定した理由はいくつかあります。
・渡航せずともWeb上で登記作業を行うことができる
・電子行政国家のため、ほぼ全ての企業活動をオンラインで完結できる
・EU圏でのビジネスがしやすい
・申請のためにエストニアの電子国民になるのがなんとなく格好いいから
などです。
なお、このエストニアでの起業にあたって色々調べたりしていた結果、エストニアでSetGoと呼ばれるスタートアップを起業するなどの活動をされている齋藤アレックス剛太さんと繋がりができまして、エストニアで起業するまでの流れの記事などの執筆をお手伝いさせていただくことになりました。エストニアでの法人設立にご興味がある方は、まずアレックスさんの記事を読んでみると良いと思います。
下記の記事など(e-Residency How-To Guide)は私がリサーチし、元となる原稿を書きました。エストニアの税制度に興味がある方は読んでいただけると参考になるかと思われます。
こうしたエストニアでの起業などに興味がある方は、イベントなどでお会いした際にでも気軽に聞いてください。
その他
色々と書いてきましたが、まだまだ書ききれていないことが沢山あります。サービスの開発体勢そのものについてや、今話題の誹謗中傷について。それに対して私達がどう思っており、どういった対応をしていくつもりなのか、などがそれにあたります。誹謗中傷などの重い話題は、時期を見つつ必要そうなら、専用の記事を別途公開するかも知れません(物凄い悩んだんですが、今は辞めておくことになりました)。一部の方の書き込みや悪意のある行動については法的な措置をとらせていただく可能性があることだけは明記しておきます。
実のところ、誹謗中傷までいかなくても、特殊性癖だというだけで「異常性癖者」だと言われたり、「病気や怪我のコンテンツを扱うなんて頭がイカれてる」と言われたりすることも割とあります。その気持ち自体は理解ができるので、そうした意見ともうまく向き合っていきたいと思います。以下のような感じですね。
…と、つらいところも勿論あるのですが、私がやれる限りは引き続きサービスを提供し、少しでもフェチに悩む皆様の力になれたらと考えております。おかげさまで各種メディアやイベントの方からもお声がけいただくことが増えてきておりますので、引き続き頑張って参りたいと思います。どうぞ宜しくお願いいたします。(もし宜しければ本記事や私のツイートをシェアするなどで応援いただけたらとても嬉しいです)
直近のイベントとして、6/12(金)の夜にイベントバーエデン神田様にて心臓実食バーを開催させていただく予定です。心臓の丸ごとボイル+燻製を提供しますので、興味がある方はぜひお越しくださいませ。
追記:6/27(土)の夜に新宿の虚無僧バーでも心臓を提供させていただけることになりました。餃子のやーまんさんと一緒に、ハツ餃子とかハツ焼きとか提供する予定です。土日の方がご都合が良い方はこちらもぜひ!
謝辞
まずはfetiquetteユーザの皆様に御礼を申し上げます。いつも本当にありがとうございます。フェチコンテンツの売買などについては、より便利に使いやすくして行きたいと思いますので、引き続きどうぞ宜しくお願いいたします。フェチコミュニティやフェチマッチング機能については、仕様変更があったり別アプリでの提供に移行していくかも知れません(今の所あまり使って頂けていないので、改良等していきます)。今後、コンテンツの英語翻訳サービスなどの機能拡張も検討しています。
テレビやブログなどで取り上げてくださったメディアの皆様、そして、フェチフェスやデパートメントHといったイベントでお世話になっている皆様にも御礼を申し上げます。誠にありがとうございます。
イベントバーエデンさんや、街コン大手のRootersさんともコラボをさせていただいたりしております。ぜひ、新型コロナウイルスで大変な時期ではありますが、引き続きどうぞ宜しくお願いいたします。
そして、私の思想に賛同して協力してくれているCTO、デザイナ、開発者の皆様も本当にありがとうございます。これからも一緒に良いフェチの世界実現のために宜しくお願いいたします。
最後に、本記事を読んでくださったあなたにも感謝を申し上げます。
誠にありがとうございました。
(開発や活動などに興味がある方は気軽にお声がけください)
それでは、また他の記事などでお会いしましょう。
2020/06/02 Himmeli - ヒンメリ
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私はすべての記事を無料で公開しています。活動を応援してくださる方は、サポート機能やサークル参加などをご検討いただけたら幸いです。サークル参加者専用のSlackコミュニティなどの特典があります(まだほとんど人がいませんが……)。いただいた応援は、イベント開催やフェチコンテンツ制作に使用させていただきます。
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