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#031 筆記具工房のボールペン

 素材はベークライト。筆記具工房の職人、金崎さんに無理をお願いして、筆記具工房オリジナルより少し太く作ってもらった。ベークライトは堅い素材なので製作するのは大変だったことだろうと想像している。多くの場合、出来上がった製品からは製造までの過程は見えない。しかし、この作品からは職人の手と指、そして真剣な眼差しを感じることができる。
 ベークライトという素材はサラサラとしていながら、指に吸い付くような感じがする。これは金崎さんの仕上げの丁寧さから生まれてきたものに違いない。
 金崎さんが作るボールペンは、リフィルがグラグラすることが全くない。先端の穴をルーペで見てみるとリフィルと軸との間に隙間がない。ゼブラからブレンというボールペンが販売されているが、それの何倍も精度が高い。深夜の静かな書斎でノートと対話するとき、カチャカチャ音は気になるものだ。筆記具に対する信頼感があるとき、その筆記具は手の一部となっていく。
 軸にはMisho 0027 と刻印がある。金崎さんに問い合わせたら、Mishoとは実生とのこと。種子から発芽したばかりの植物のことだ。「材料から製作していく自分の仕事の過程が実生に通じる」ということで、ロゴ的に使っているということだ。職人の心を感じる。

金崎さん撮影 


 0027 は製造番号。27、それは3の3乗。私にとって親しみのある数字。これは結構嬉しい。単純に嬉しい。

 Misyo 0027 と刻印がある筆記具工房のボールペンを使うとき、今後、私も何かを生み出していけそうな気がしている。心だけは40代だ。


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