#013 小林鞄 トートバッグ
『鞄談義2』で特集した小林哲夫さんの工房に行き、オーダーしていたトートバッグを受け取ってきた。小林鞄の定番の一つで、20年間憧れ続けてきたもの。ガッチリとしていて、A4サイズのファイルが縦に入り、肩にも掛けられるトートバッグ。私の残りの人生のよきパートナーとなってくれることだろう。
実は小林さん、ある年に、もう鞄は作らない宣言をした。理由は、自分の残りの人生の長さを考えると、作った鞄のメンテナンスができないということ。責任を持てない仕事はしたくないと。いい革が入手できなくなってきたのも理由の一つだとのことだった。
「そんなこと言わないで作ってくださいよ。希望者は多いんですから」と事あるごとに伝えていた。
今年になって電話で話していたら、「いい革が手に入るのなら作ろうかな。中谷さん、革を買ってくれないかなあ」と小林さん。
小林さんの心が動き出した。でも革を買うなんて、私にはハードルが高すぎる。でも、でも、やるしかない。よし! 革を買ってこよう。
しかし、私は専門家ではない。革など買ったことがない。どうしよう。
そこで鞄専門店ORTUSに行き、鞄職人の小松さんに革屋を紹介してもらい、その革屋に突撃した。店の人は、ド素人の私に戸惑いながらも革を出してくれた。いろいろと教えてもらいながら、その中でビビっときたものを購入して小林さんに送った。牛の革をまるごと買うなんて初めてのこと。ワクワク・ドキドキの一日だった。
こんな経緯のあるトートバッグ。この話は『鞄談義4』に書こうと思っている。