#058 イノシシ革のMUCUのノート
2021年の東京ペンショーの会場を歩いていたら、MUCUのノートを売っている店があった。
「私、このノートを愛用していますよ」と声を掛けたら、
「このノートはうちのオリジナルなんですよ」と返ってきた。
ブース名を確認すると「ANGERS bureau」とある。確かに、あのアンジェビュローだ。見覚えのある品々がテーブルの上に並んでいた。
アンジェビュローはecute上野店、KITTE丸の内店、京都・河原町店に行ったことがある。どの店も、とても個性的で素敵なものを扱っていて、いつもワクワクしながら店内を見て回っている。フェルマー出版社の『万年筆談義』の販売もしてくれていて、小さな出版社も相手にしてくれる店だと感謝している。
MUCUのノートの隣に雰囲気の違う、しかしMUCUのノートと同じスタイルのものが並んでいた。ウン? 見たことがないぞ。革が違う。表面が荒い。手にしてみると硬くてしっかりしている。表面は均一ではなく、天然のシボや色ムラがあり、野性的な雰囲気を発散している。牛ではない。豚や鹿でもない。これは何革だ?
これは何革ですかと聞いたら、イノシシだとのこと。
イノシシ。イノシシ。イノシシ。
子どもの頃、田舎のスイカ畑を荒らしてくれたヤツ。
お前か!
表面がザラザラしている。色ムラが結構ある。多くの日本人が避けそうな色ムラのある革を、そのまま表紙に使っている。これはいい。このように、色ムラのある革表紙のノートに出合うことはあまりない。恐らく消費者からは嫌がられるであろう。しかし、私は大歓迎。こんなにも色ムラのある革表紙のノートを作ってくれて、ありがとう。
買ったその日から愛用のノート群に加わったイノシシ革のMUCUのノート。先日の2023年東京ペンショーの際には、昨年に続き3冊目のイノシシ革のMUCUのノートを購入した。こうやって1年に1冊、今年はどのような色ムラのある革表紙かとワクワクしながら買い足していくのも楽しくてよいものだ。