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#001 トレドへの旅 (フェルマー出版社 発足秘話 1/4)

 それはトレドへの旅から始まった。

 画家の古山浩一さんが講師を務めるスケッチツアー。その年の行き先はスペインのトレドだった。私がペリカン万年筆のトレドというモデルに憧れていることを知っていた古山さんは、トレドへのスケッチツアーに行かないかと誘ってくれた。しかし、私は中学校卒業以来、絵を描いたことがなかった。
「皆さん、絵を描きに行くんでしょ。絵を描かない者が参加しても大丈夫なの?」
「大丈夫、大丈夫、神戸の鞄専門店ル・ボナーの松本さんも行くから、彼と一緒に観光すればいいよ」

 ペリカン万年筆トレドのカタログを出してみた。今まで何度も繰り返して見たカタログだ。美しい万年筆の写真とともに、古都トレドの写真も載っている。円錐形の地形に古い建物が連なっている。その傍らをゆったりとしたタホ川が流れている。その町の迷路のような道を歩いてみたい。タホ川のほとりを歩いてみたい。古都トレドへの思いは日々募っていった。

 ペリカン万年筆トレドを生み出した古都トレド。
 長らく憧れ続けているトレド。

 私は、絵は描かないが、トレドへのスケッチツアーに参加することにした。

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