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「ダイエットリテ」のデザイナーノート

まだ覚えているうちに、再びインタビュー風に書いていきます。自分で自分にするインタビューみたいな。奇妙ですね。きっと、それが読みたいって人も(ごくまれに)いるでしょう。

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ダイエットリテのパッケージイラスト

着想

着想したのは2021年の5~6月くらいだった。当初、2021年のゲムマでは「スウィート・ジューススタンド」というゲームをリリースしようと考えていたんだ。そのための準備を2020年末~2021年2月くらいまでに少しずつ進めていた。ところが、イラストが残念ながら時間がかかっていたーーというより、止まってしまっていた。そこで、どうやら間に合わなさそうだという予感から、急遽、別のゲームをイチから作ろうかと考えていたんだ。また、ちょうどそのとき聖書のエピソードを解説する文庫を読んでいてね。

このふたつが、新たなゲームを生み出すきっかけになった。カインとアベルという、対称的な2人の兄弟になって神への貢物を競い合う。印刷の都合上、そしてイラスト作業の軽減のために、システムはトリックテイキング(手札から毎回1枚出して勝敗を決めるゲーム)でいこうと最初から決めていた。これが、最終的には「ダイエットリテ」の<運動>と<食事>というテーマに置き換わることとなる。

テーマはもっと一般的でキャッチ―なものが受け入れてもらいやすそうだ、と考えていた。宗教色が強いのもあり、最初のテストプレイのときから言うのをためらった(結果、フレーバーはまだ決めかねている、と伝えてしまった)。

カインとアベル? ドラクエの漫画か何か?って言われるのが関の山さ。説明書に割ける文章量の都合もあり、フレーバーテキストは簡略にしたかったっていう理由も含まれる。そこで、イラストをお願いしたばふさんと話し合いを何度か重ね、女性にも受け入れてもらえそうなテーマで、なおかつ対照的な2つのものを扱う、という点から、ダイエットがテーマとして当てはめられた。

システム

システム面は、最初から、トリックを取ったら対応するトラックを進める、というアイデアがあった。ラウンドも6ラウンドだった。

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没になった、テストプレイ時点でのスコアシート

しかしそれじゃ長すぎる。小箱らしく、シンプルな――つまり短時間で遊べる簡潔なルールのゲームにしたかった。うん、いい質問だね。僕は確かに3~5時間くらいかかるような重いゲームも好んで遊んでいる。でも別に、いわゆる小箱ゲームが嫌いってわけじゃないんだ。むしろ、重ゲーマーが持ってくるような小箱は好きな可能性が高い。切れ味がいいものが多いからね。名作だと思う小箱も多い。

例えば「ハゲタカのえじき」「コヨーテ」とか、定番中の定番も好きだし、「ホットドッグ」「破滅の13」「真珠の首飾り」も面白いよね。「トレンディ」もいい。トリテなら「テキサスショーダウン」「ブードゥープリンス」あたりが好きだ。他にも色々あるけど、長くなるから、それはまた別の機会に。

テストプレイ

話を戻そう。枠組みとアイデアは出来上がっていた。もっともテーマはかなり後になってから、そうだな、9月くらいに決まったのだけれど。

じゃあその間、何をしていたかって? もちろんテストプレイさ。キットを準備し、数値を調整した。最初は1~順番に数字が並ぶだけのトラックだったが、面白みを感じなかったので、早々に数値をいじった。2列あったトラックは、みるみる4列に膨れ上がった。でもそんな長さは必要ないことがすぐわかった。そこで半分以下に減らした。1列で十分だとわかったんだ。マス目も16マスに削った。

*下は最終的なトラックの完成画像。

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一風変わったスコアリングトラック

後は数値調整だ。これはテストプレイヤーの意見を取り入れて、何人ならどれくらいトラックが進むか、どういう組み合わせで進む可能性があるか、みたいなことを検討していった。

また、印刷会社、つまり予算の都合でカード枚数を減らすことを最初から余儀なくされた。なにせ個人出版だからね。予算=自分のポケットマネーってこと。「ダイエットリテ」が3人推奨なのはそのせいさ。カード枚数さえ増やせれば4人でも問題なかっただろう。4人でもプレイ自体は可能だけど、コントロールできない部分、つまり手札運の影響が強くなる。これはソロルールでも似た傾向にある。

ソロルールと人数対応

ソロルールは毎回どのゲームにも本当はつけたいと思っているんだ。今回、「ダイエットリテ」でそれが叶って嬉しかったよ。「ダイスマンカラ」では、1人用のテストプレイもしたものの、思うようにいかなかったからね。2~4人用ってことで収まった。(リンク先から入手可能なので、ぜひよろしく! マンカラって何?って人こそ、ぜひ遊んでみてほしい)

ソロゲームはルール把握が可能で、ちょっとした余暇に遊べる。「ダイエットリテ」の場合、ルールさえわかっていれば5分くらいでサッと楽しめる。3人でも15~20分くらいだ。2人でも遜色なく楽しめると思うよ。

ソロルールがついているボードゲームって、手に入れたらとりあえず相手がいなくても遊んでみることが可能だろ? 個人的は、そういう部分も気に入っていてね。特に、ボードゲームを遊び始めた頃は、一緒に遊んでくれる相手を探すのが大変だった。だから家で1人で、よく遊んだものさ。

アートワーク

さて、ゲームができたら今度はイラストだ。これがなきゃ、最終的に多くの人に遊んでもらえない。ボードゲームは遊んでもらってナンボさ。アイコンのアイデアを出し、ばふさんに伝えて、見事なカードに仕上がった。

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ダイエットリテのカードの解説図

トリックテイキングだから、パッと見たときの情報のわかりやすさを重視した。カードゲームだし、入れられる情報には限りがある。手札を持ってカードを広げたとき、カードの中央はあまり見ない。デザイン面では、そういった部分も意識している。

それにこの段階で9月に入っていた。2021秋ゲムマまで2か月を切っている。今回も気づけば、とかく時間に追われる制作となった。

箱もシンプルなものになった。初期デザインはシンプル過ぎたため、忙しい合間を縫って、色味などを変更してもらった。必要なのはカードだけじゃない。トラックを進める駒も必要だ。説明書だって用意しなければならない。書いたら誰かに読んでもらって意味が通じる文章にする。小説との大きな違いは、ルールブックってのは誰が読んでも明確に理解できる必要があるってこと。独りよがりじゃダメなんだ。そこに求められるのは個性とは真逆の要素さ。修正、入稿、また修正。

ものができたら今度は丁合(ちょうあい)、つまり内容物を箱に詰める作業が待っている。やれやれ。まるで仕事みたいな趣味だと思わないか?

気づけばあっという間にゲムマ当日が近づいていた。

リリース

ゲームマーケット2021秋は『ホタルたぬきフェレット工房』という名前での合同出展となった。ホタルシステム、たぬきつね工務店、フェレットゲームズファクトリー、そして春工房の4サークルによるブースとなった。今後、この顔触れでゲムマに出展するかどうかは不明だが、可能性は低いだろう。人生と同じさ。1度きりのお祭り騒ぎってわけ。

修正版しろくまさんからもらったPOP用イラストb
*なお、上記のイラストのキャラクターはダイエットリテには出てこない

ありがたいことに、しろくまさんから、ゲムマ本番直前に「ダイエットリテ」の応援イラストを頂いた。ブースの目立つところに飾って、当日は交代で番をした。

すべてが順風満帆とはいかないにしても、なんとかリリースまでこぎつけられたのは、たくさんの人が協力してくれたおかげさ。購入するしないに関わらず当日、ブースを訪れてくれたすべての人に、改めて感謝の意を表したい。そして、これを読んでいるあなたにも。

本当にありがとう! 特にダイエットリテを買ってくれた人!

3人ベストのトリックテイクだ

――ちなみに。まだまだ売るほど在庫は残っている。HAHAHA(笑い事じゃない)

2022年11月2日更新:
ダイエットリテはオンラインでの通販は扱っていなかった。そのため2021年に手に入れた人はゲムマ会場での1日限定で買った、というレアアイテムであった。が、このたび少部数だが下記のリンクから購入できるようになったので、ぜひ手に入れて欲しい。万が一、売り切れていたら、ごめん!

ダイエットリテ、結構面白いと思うので、興味のある方はぜひ買って遊んでみてくださいな。(上記がもし売り切れていて)欲しい人はツイッターにでも連絡ください。

しーゆー!

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