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「ダンキラ!!!」紫藤晶を推して得たもの

■0.はじめに

先日、熱心に遊んでいたアプリゲームのサービス終了が決定しました。コナミの「ダンキラ!!! - Boys, be DANCING! -」(以下「ダンキラ!!!」)です。

ダンキラ!!! - Boys, be DANCING! -公式サイト

このゲームは、「ダンキラ」と呼ばれるダンスバトルを軸に、多様なジャンルのダンス・楽曲と、ダンキラに青春を捧げる少年キャラクターたちの豊富な掛け合いやモーション、また、時に熱く・時に奇想天外なストーリー展開を楽しむことができるものです。

自分はこのゲームに熱中しました。
わずかながら課金もしましたし、グッズやイベントにも出費しました。
そしてサービス終了が発表された今、コンテンツを消費する一オタクとして、改めて考えることがありました。
この文章はその思考の記録です。

なお、本文にはダンキラ!!!の本編ストーリーのネタバレがダイレクトに含まれます。その旨ご了承ください。

■1.お題目「モノ消費からコト消費へ」

「コト消費」という言葉の出どころはマーケティング界隈でしょうか、旅行業やアクティビティの界隈でしょうか……判然としませんが、この言葉を聞くようになってから、それなりの年月が経過しています。

コト消費 -Wikipedia

世の中にモノが飽和し、物質的に満たされた現代人が次に求めるのは精神的な充足であり、それを満たす「コト」(体験)を提供するビジネスモデルに価値が生まれるであろう……。
これらはモノ売りの必然の流れというより、「何かを売らねばならない人々が編み出した知恵」であると、自分は捉えています。
つまるところ、自分は、この「コト消費」という概念に対しては懐疑的というか……ドライでした。

補足しますと、自分は催し物には割と行きます。
特に、好きなミュージシャンのライブにはよく足を運ぶほうです。
しかし、その場では「会場費」や「演者含むスタッフの人件費」などといった運営費にお金を払っている意識であり、自分の精神的充足にお金を払っているわけではないのです。自分の感覚では。

……いきなり話が飛びました。戻します。

■2.ダンキラ!!!の課金モデル

世に数多あるアプリゲームと同じように、ダンキラ!!!にも「ガチャ」のシステムがあります。

ダンキラ!!!では、キャラクター自体はゲーム開始時から全員所持しており、自由にチーム編成ができます。
ですが、定期的にキャラクターの新規カードが実装されます。これらはガチャやイベントにより入手することができ、育成するとゲームやイベントをより有利に進めることができたり、育成過程で開放される新規ストーリーやモーションによりキャラクターへの理解を深めることができたりします。
ガチャを引くには「アクア」が必要です。アクアはゲームのプレイで入手することができますが、リアルマネーによる購入も可能でした(現在は不可能になっています)。
有償の場合、買うアクアの数により単価は異なりますが、10,000円で買えるアクアはおおよそ40連ガチャ分だったかと思います。

自分は買い切り型でないアプリゲームをほとんど遊んでこなかったので判断がつきませんが、おそらく、ダンキラ!!!の課金モデルはいわゆる「ソシャゲ」としてはごく一般的なものでしょう。

■3.述懐:「なかったこと」になった世界

上記のように、自分はそもそも「買い切り型でないアプリゲームをほとんど遊んでこなかった」のでした。
その理由は単純で、「いつかはサービス終了するものだから」です。

世に数多あるアプリゲームの大半は短命で、儚いものです。
たとえゲームをダウンロードした端末を大事に大事に使い続けてゲーム分の容量を取っておいても、サービス終了を迎えれば遊べなくなり、いつかは記録もネットの海に埋もれてしまう。
「なかったこと」になり、虚空に消えてしまうもの。
そういう認識でした。

……というのも、スマートフォンを買ったばかりのころに触れたゲームが、そのような末路を迎えたのです。
無課金とはいえ楽しく遊んでいたのですが、諸事情によりしばらく遊べなくなり、ある日アプリを開いたらお詫びと感謝の言葉が書いてあるだけ。BGMも流れない。しまいにはその画面すら開けなくなりました。

衝撃的でした。

家でのゲームは「ゲーム機とカセット」で遊んできた世代だからでしょうか、ゲーム自体が消失してしまうことが受け入れられませんでした。
その事態を、自分の中で整理することができなかったのです。

せめてアプリが存在した証として……とアイコンは残していたのですが、ある日とうとう虚しさに耐えきれず削除しました。
そのときも、さまざまなことを考えました。
大好きなユニットの画像は単品でスクショしておけばよかった、お気に入りのBGMは録音しておけばよかった。公式サイトまで消えてなくなるとは思わなかった。
しかしその一方で、「このゲームに課金していなくてよかった」と安堵する自分も確かにそこにいました。

今までこのゲームの世界で過ごしてきた時間はなんだったのか。
所詮「なかったこと」で、無駄で、無価値であったのか。

その後、買い切り制でないアプリゲームを遊ぶことはほとんどなくなりました。
逆に、このような事態に至る心配が少ない、買い切り制のアプリゲームはそれなりにダウンロードしていました(Rayark社のCytusシリーズなど)。

■4.「最推し」の人物像

ダンキラ!!!の話に戻ります。
このゲームにおける自分の「最推し」キャラ、つまり一番好きなキャラクターは「紫藤 晶」(しどう あきら)です。

CHARACTER | ダンキラ!!! - Boys, be DANCING! - 

公式媒体での彼の紹介文は「ポジティブ自信度100%の残念美形ダンサー」。
化粧品会社大手のお坊ちゃんで、「この俺」「美しい俺」「魅力的な俺」「輝く俺」その他さまざまな「俺」に絶対的な自信を持っています。
学園屈指の実力者ですが、紹介文どおりのどこまでもポジティブな発想と、キザで突拍子もない言動が目を引く、作品きってのコメディリリーフでもあります。
しかしながら、彼はいつでも大真面目です。そして、彼のゆるぎないポジティブ思考はピンチをチャンスに変えていきます。

晶は、モノやコトの価値を自分で決める人物です。
(少なくとも、自分はそう捉えています。)
作中の晶の言葉に、「友情に時間を使っているのさ!」というものがあります。これは、ライバルチームのメンバーが仲間の問題を解決すべく奔走し、最後には迷信にまで頼る姿を「時間の無駄」と一蹴した、自チームのメンバーをたしなめる言葉でした。

御曹司の晶は、その気になれば実家の財力で何でも手に入れることができてしまいます。
作中でも、途方もない規模の消費行動を繰り返してきました。
その一方で、実家では口にしてこなかったB級グルメや駄菓子やカップ麺といったジャンクフードの類を大変気に入り、愛好してもいます。
彼は、彼自身が気に入れば、それが世間にありふれたものであろうと関係なく称賛します。そして、お金で買えるものは何でも買いますが、お金で買えないものをお金で手に入れようとはしません。モノの対価にお金でないものを提示されたときは、誠意なり成果なり、対象に合った対価を示して入手しようとします(ただし、ルールを把握しているときに限ります)。

おそらく、彼の世界には「無駄」が存在しないのでしょう。
彼のあまりに肯定的な思考回路は時として認知を歪め、それがトラブルを招くこともありますが、そのトラブルすら彼にとっては価値あるものです。彼には世界のあらゆるものが眩く輝いて見えているのだと思います。一番輝いているのは彼自身ですが(自称)。
そして、それぞれの価値を彼なりに天秤にかけ、何をなすか、決めているのだと思います。

……などと書き連ねてはみましたが、単に見ていて面白いので紫藤晶が好きです。

(あ、「晶ビジョンではなんでも輝いてる」って書きましたけど2章のアレとかはさすがに例外ですよ9章はシラフっぽくてよくわかんないけど。
絶対王者のエトワールなら2章のアレも今後の糧にしてしまうでしょうし、是非そうしてほしいですね。9章の試練はもう糧にしちゃいましたし。
次はノエルくんの頑張りどころですね。がんばれノエルくん。)


■5.課金行為とその心境の変化 

晶に限らず、ダンキラ!!!のキャラクターはみな魅力的です。彼らが生きる世界もまた大変に魅力的で、どんどん熱中していきました。
しかし熱中はしましたが、自分はいわゆる廃課金勢ではありませんでした。推し中心の微課金です。売上に貢献してなくてすいません。

当初の課金目的は「推しの強いカードがほしい」だった
と思います。
ガチャによりレアリティの高いカードが入手できれば、推しに新たなモーション(ダンス中に繰り出す技「キラートリック」のことです)をさせることができ、また、一度育成すればあらゆる編成に推しを入れっぱなしにすることができ、要するに色々お得だからです。
(ちなみに初課金の目当ては晶ではなく、イベント「おいでよ!マリンユートピア」で実装された★5霧山おぼろでした。詳細は割愛しますがこのカードで狂ったプレイヤーは少なくないと思います。)

ゲームとの付き合いが長くなり、手持ちカードが充実してくるにつれ、次第に、課金と登場カードの性能があまり関係なくなっていきました。
いつでも眺めたいようなカードが実装されれば、もちろん、手に入れるべく課金します。
そのほかに「イベントや本編の更新などで推しの活躍が約束されると喜んで『ご祝儀』を包む」という、新たな消費行動を取るようになったのです。

もちろん、最推しである晶をはじめ、彼らキャラクターは架空の人物です。
実在しません。ご祝儀包んだところで晶には届きません。
いや仮に届いたとしても晶は大金持ちなので1万2万の課金なんてお駄賃にもなりませんが。

そんなことはいっそ、どうでもよいのです。
自分がお金を払った先は「きっとこれから楽しませてくれるであろうという期待」。
そして、「本当に楽しませてくれた事実」に感謝してお金を払いました。

彼らを生み出し、丹念にバックボーンを練り上げて、魅力的なキャラクターに育ててくれたダンキラ!!!運営チームへの信頼・感謝は、一言では言い表せません。
しかし、自分の課金は「運営費の足しに」「サービス存続してくれ」というような感情によるところは薄く、どちらかというと「自分が認めた価値」への対価として、自分が納得できる額を自分で決めて支払ったものでした。

ああーそうか、そうなんだ、「コト消費」って、たぶんコレだ。
紫藤晶の見てる世界も、たぶんコレに近いんじゃないか。

自分が時間とお金を費やしたこのゲームと紫藤晶が与えてくれたものは単なる「データ」ではなく、「精神の充足」だったのです。であれば、たとえゲームのサービスが終わったところで、紫藤晶が与えてくれたものは消えることがありません。
わたしは紫藤晶のおかげで、新たな価値観を手に入れました。

■6.おわりに

というか当たり前なんですけどね……。
時間やお金は本来費やしたいものに費やすものだって。

自分の本分はアーケードゲーマーです。
ゲーセン通いが楽しくて10年以上続けています。ですが、時には楽しくなくなる時もあります。
正直なところ、クレジットを重ねても思うような成果が出ないときには「いったい自分は何に金を使ってきたんだろう……」と沈む時もありました。
その気持ちともようやく折り合いがつけられた気がします。そうだそうだ、楽しい時間にお金を払ってるんだ。楽しくなくなる前に帰ればいいんだった。気が付くまで長かったな。

ちなみに、ダンキラ!!!はサービス運営の終了後も、「オフライン版」としてアプリが残ることが発表されています。前述のとおり、かつて遊んだゲームの消失に落胆した自分にとっては、これも大変嬉しいことです。
つまり、紫藤晶のレディになるには今からでも遅くありません。晶は自身のファンを誰彼構わず「レディ」と呼びます。男性もレディになれます。
是非。

このゲームのおかげで楽しい時間を過ごせました。これからも楽しい時間を過ごせそうです。本当にありがとうございます。

■7.余談

最新★5紫藤晶「アトラクションは俺!」
まったくだよ。

お読みいただきありがとうございました。

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