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Fender LEAD2の1954 Stratocaster化 #コスプレ
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今回は、Fender LEAD Seriesの販売開始年である1979年から遡ること25年、生産開始最初期ゆえ各部の仕様が特徴的であると言われる、1954年製Stratocasterをモチーフにコスプレした、Fender LEAD2(オリジナル)をご紹介したいと思います。メイプル1ピースネックで3ピースアッシュボディーを2トーンサンバーストにリフィニッシュし、各部を1954年製Stratocasterに似せる努力をいたしました。
Stratocasterのブリッジ
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Stratocasterに標準で搭載されているブリッジといえば、シンクロナイズドトレモロユニットですね。Fender社初のヴィブラートユニットで、それまでにあったBigsby社のものと比較して、音程の変化の幅が非常に大きくチューニングの狂いも少ないという特徴を有していました。Fender社はその後フローティングトレモロやダイナミックヴィブラートなどを開発し自社のギターに搭載しましたが、音程変化等の点で同様の機能を持っていたとは言えません。御存知の通りJimi Hendrixなど多くのミュージシャンが、シンクロナイズドトレモロユニットの特徴を存分に生かした素晴らしい演奏を残しています。
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そんなStratocasterですが、販売開始当初からノントレモロ仕様のものが併売されていました。1954~1971年頃のシンクロナイズドトレモロユニットはトッププレートとトレモロブロックに分解することができますが、ノントレモロ仕様のStratocasterの、所謂ハードテイルブリッジはこのトッププレートを元に製作されていると考えられます。
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つまり、トッププレートからナイフエッジ加工とボディー固定用の6個のネジ穴を無くし、1弦側にあるトレモロアームを差し込むための突起部を削り落とせばハードテイルブリッジになるというわけです。1972年頃以降のシンクロナイズドトレモロユニットは、トッププレートとトレモロブロックが一体化した亜鉛ダイキャスト製のものに変更されるようですが、左利き用のものとハードテイルブリッジについては変更がなかったようです。
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ただし、サドルについてはプレスタイプのものから、トレモロユニット一体化と同時期に導入された亜鉛ダイキャスト製のものが徐々に使用されていったようです。
Stratocasterのハードテイルブリッジと同様のものはTelecaster Thinline(1972年のWide Range Humbucker搭載以降)にも搭載されます。また、Telecaster DeluxeやStarcaster等の機種にもハードテイルブリッジが搭載されますが、こちらのサドル幅は約10.5mmとやや狭く、LEAD Seriesに搭載のものと類似です。つまり、1972年以降は弦間ピッチの異なる2種類のハードテイルブリッジが存在したことになりますが、その理由は不明です。
1958年頃に発売されたMusicmasterやDuo Sonicなどに搭載されているものは、弦が裏通しではなく所謂トップローディングタイプである点で異なります。
今回のコスプレでは上述のハードテイル仕様のStratocasterをモチーフにしたいと思います。
ヘッド
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ヘッドですが表面の塗装とロゴは残しつつ、周囲のエッジを丸めてリフィニッシュしています。ペグはKluson社の現行品で、ギアカヴァー裏面に何の刻印もない所謂「ノーライン」の仕様になっています。ストリングガイドは1・2弦用に丸形のものを採用し、オリジナルLEAD2に搭載されていた3・4弦用のストリングガイドは取り外しネジ穴を埋めています。
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上の画像はノーマルのLEAD2のヘッドと比較したものです。エッジの面取られ具合が見て取れますね。
ボディー
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ボディーは前述の通り3ピースアッシュボディーを2トーンサンバーストにリフィニッシュしています。また、ピックガードは白の1プライでレバースイッチ仕様のものを製作してもらいました。その他のパーツ類については後述します。
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ボディー裏面です。ネックジョイントプレートはシリアルナンバーの刻印がないニッケルメッキのものを採用しましたが、ストリングブッシュは現行品を採用してしまい詰めが甘くなっております。
ブリッジ
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ブリッジはCallaham社のAmerican Standard用Hardtailです。
ピックアップカバー・ノブ
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ピックアップカバー、ヴォリューム&トーンノブ、セレクタースイッチノブにはFENDER社のPURE VINTAGE 1954 STRATOCASTER ACCESSORY KIT(現在は販売終了)を使用しています。これは1594年製Stratocasterに採用されていた通称「ラウンドピックアップカヴァー」「ショートスカートノブ」「フットボールノブ」の形状を再現したものです。下の画像と比較すると形状の違いがわかりやすいです。
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現行のFender社純正品との比較です。カヴァー・ノブともそれぞれの向かって右がPURE VINTAGE 1954 STRATOCASTER ACCESSORY KITのもので、カヴァーの特徴的なエッジの丸み、ノブ上部直径の大きさとスカート部の短さがそれぞれおわかりいただけるかと。
ピックアップ・コントロール部
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1954年製StratocasterのPOTには最初期ではStackpole社製の100kΩのものが搭載されていたそうですが、その後同社の250kΩのものに変更されるようです。本機にはCTS社の250kΩを搭載しています。3ウェイレバースイッチはCRL社製です。キャパシターはLUXE社によるレプリカで、Cornell Dubiller社製の0.1μFペーパーオイルコンデンサーを再現したものです。
ピックアップはLollar社のTweedというもので、メーカー説明文によれば「1954年のストラトサウンドをイメージし、ストラトらしいカラッと乾いたサウンドが特徴。クリーンサウンドに透明感があり、ベース、ミッドは押さえ気味にする事で歯切れの良さを実現しています。アタックには程よいコンプ感があり、ツイード系のスモールアンプをドライヴさせた時のサウンドはまさにヴィンテージト−ン。 ハイゲインなディストーションを使用する場合でも音が潰れる事がなく1音1音の粒立ちはそのままにクリアなサウンドが得られます。」とのことです。そう言われればそんな感じである気がしなくもありません。
ただ、他の画像で分かる通りポールピースはスタガード(1954年製Stratocasterでは所謂ショートGと言われる3弦のポールピースが低いもの)ではなくフラットな仕様で、これは過去Lollar社がフラットポールピースを標準仕様にしていて、その当時に入手していたものとなります。LEAD2に搭載されているX-1がフラットなのでそれに合わせたということにさせていただきます。ボビンカラーはオリジナルに倣い黒が採用されています。
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ピックアップの直流抵抗値ですが、アウトプットジャックからの測定でフロントが4.62kΩ、リアが5.26kΩです。オリジナルLEAD2搭載のX-1は7~8kΩくらいですので、かなり低めでありマグネットにはAlNiCo2が採用されています。
終わりに
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このように甚だ中途半端ではありますが、1954年製Stratocasterのコスプレを行ったLEAD2をご紹介いたしました。Eric Claptonは主にスライド用として1954年製StratocasterのHardtail仕様を用いていたようですが、画像で見る限り今回のモチーフとした最初期のものではないようです。
また、The Rolling StonesのRonnie Woodがハードテイルブリッジの1955年製Stratocasterを使用しているのは有名ですが、そのほかハードテイルブリッジのStratocasterを使用するミュージシャンとして有名なのはブルーズギタリストのRobert Crayや、ChicのNile Rodgersとかでしょうか。Nile Rodgersの通称The Hitmakerと呼ばれるアレも、いずれはコスプレの対象にしてみたいと思っております!
【了】