Fender 2020 Player LEAD2のSteve Vaiモデル化 #コスプレ
今回のコスプレモチーフはSteve Vaiモデルとして知られる、IBanez社のJEM777です。
きっかけは、Fender 2020 Player LEAD2のボディーカラーとして採用されたNeon Greenが、IBanez社のJEM777のボディーカラーの一つであるLoch Ness Greenに似ていなくもないと思ったことです。
この色、或いはこれに似た色のギターを愛用するギタリストは決して多くはなく、後に、女性アーティスト/ギタリストのSt. VincentがオリジナルのFender LEAD2を緑にリフィニッシュしたもの(EMGやギター・シンセサイザー用のディヴァイデッドピックアップ等を搭載)を使用していたことを知りましたが、それはそれ、これはこれ。初志貫徹ということでざっくりとしたコスプレに勤しんでみました!
Steve vaiのギター
Steve Vaiは、デビューからこれまでに多種多様のギターをプレイしてきており、その多くはSteve Vaiのサイトで見ることができます。
見られるギターの多くはIbanez社のものですが、「The Green Meanie」と呼ばれるCharvel社の緑色のギターは、Alcatrazzのメンバーとして来日した際にも使用しており、その仕様(ボディーカラー、ピックアップ配列等)からJEM777の原型になったと考えられます。
実は、後年Charvel社によってこのThe Green MeanieのHardtail仕様が製作されていたりします。Hardtail仕様ということでモチーフにすることも考えましたが、おそらくは存在の周知がなされていないと思われますので諦めた次第です。
Ibanez JEM777
JEM777の発売開始は1987年で、上の画像にある通り1987年6月のNAMMで発表されたようです。
その後1987年10~12月号に渡り裏表紙前の見開き(表紙3・表3対向)で紹介は続き、12月号の広告で価格とスペックの詳細が発表されました。
※ボディーカラーが、Desert Sun Yellow(DY)とShocking Pink(SK)の定価は¥190,000であるが、Loch Ness Green(LNG)の定価は¥200,000であるのは、トレモロスプリングカバーにSteve Vai直筆のサインとシリアルナンバーが記入されているため
更に1988年1月号では見開きでNew Products Reviewというページで紹介されるとともに裏表紙での広告掲載が1988年5月号まで続き、3月号ではJEM7という廉価版の追加販売についても掲載されています。
このように当時鳴り物入りで登場するとともに大フィーチャーされ、更には他のメーカー製のカラーリングを似せたギターが楽器店オリジナルで発売されていたりと当時のシーンを席巻していたJEM777ですが、1996年まで生産されたあと、2017年にはJEM発表30周年を記念して復刻版が発売されています。
JEM777の特徴ですが、カラフルなボディーカラー、モンキーグリップと呼ばれるボディー6弦側の穴、Lion's clawと呼ばれるボディー上面トレモロユニット後方のキャビティー、カラフルなプラスチックパーツの色、ピラミッドが徐々に低くなっていく形状のポジションマーク、Steve Vai配線と呼ばれるオートマチックコイルタップなど枚挙に遑がありません。
コスプレ概要
今回のコスプレですが、JEM777の持つ多数の特徴の殆どに背を向けており、基本的には上の画像の通りボディーとプラスチックパーツの色を真似ただけです。 Loch Ness(ネス湖)GreenとNeon Greenでは言葉としての印象がまるで違いますが、ネス湖のグリーンと言われても正直ピンときませんし、あまり気にせず進めてまいります!Lake Placid Blue(プラシッド湖の青)というのもあるわけで、色を表す際の言い回しとして多用されるものなのかもしれませんね。ただ、ブリッジ等ハードウェアの色が真似できてないのは今後の課題です。以下に今回の変更点について記します。
プラスチックパーツですが、上の画像の通りJEM777のそれを踏襲し、ピックアップカバーにはピンクを、ボリューム/トーンノブには黄色を採用しました。
POTにはボリューム・トーンともにCTS社製の500kΩを選択しました。また、フェイズセレクターを流用して、Split Tone Control(ハイカット/ローカットのトーン切り替え)を搭載しています(後述)。
トーン用のコンデンサとして、ハイカット用にはSprague社製Orange Drop(②の印字あり)の0.022μFを、ローカット用には0.001μFを用いました。
DiMarzio SDS-1
ピックアップにはDiMarzio社のSDS-1を採用しました。発売当時JEM777には、DiMarzio社のPAF Pro(フロント・リア)とFS-1(ミドル)が搭載されていました。御存知の通りPlayer LEAD2はシングルコイルピックアップ×2が載っているため、FS-1の採用も検討しました。ただ、外見的にPAF Proに寄せたかったので、同様のポールピース形状を持つ同社のSDS-1を採用しました。どちらも販売開始は1970年代(FS-1:1974年、SDS-1:1977~8年)と古いものですが、現在でも問題なく入手することが可能です。
同様のポールピース形状を持つDiMarzio社のシングルコイルピックアップとしては、 Steve VaiモデルのJEM77WDPに搭載されたDark Matter 2 Middleがあります。ただ、これにはサテン・ニッケルのボビンが使用されていて、ピックアップカバーの装着が可能か否か不明でしたので、今回は採用を見送りました。
DiMarzio社のサイトによると、SDS-1はOutput:200mA、Bass:7.0、Mid:6.0、Treble:5.5であるのに対し、FS-1はOutput:160mA、Bass:6.0、Mid:6.5、Treble:7.5です。また、どちらもハイパワーなシングルコイルピックアップですが、その構造には違いがあります。
FS-1は、通常のシングルコイルピックアップと同様の構造をしており、高出力を得るために細いコイルワイヤーを沢山巻いています。ポールピースマグネットはAlnico5で直流抵抗値は14.23 KΩです。
対するSDS-1ですが、その構造はGibson社のP-90と似ています。上の画像の通り、ピックアップボビンの下でポールピースを挟むように2つのセラミックマグネットが配置されていて、ポールピース自体は鉄製です。メーカースペック上の直流抵抗値は9.36kΩです。上の画像でマイナスネジ様のポールピースを持つLindy Fralin社のSteel Pole(※固定ポールピースのものはメーカー不明)と比較しても中低域は充実していると感じます。
上の画像ですが、向かって左から順にX-1、 SEYMOUR DUNCAN/ SSL-4 Quarter-Pound Flat、SDS-1、Bill Lawrence/L-250の高さを比較したものです。SDS-1の高さは約22.4mmで、通常のシングルコイルピックアップと比べると7mmほど高さが増えるため、Player LEAD2には問題なく組み込めますが、ピックアップ上面をピックガードギリギリまで下げることは困難です。
Split Tone Control
SDS-1ですが、実は既にJake E Leeコスプレの際に、フロントピックアップとして搭載していたりします。スラントがリバースとなり、低音弦側ではやや倍音が強調されるはずなのですが、前述した通りピックアップ自体が豊かな中低域を誇っているため、正直弾いていてもう少し低域を薄めたいと思うこともありました。
今回採用したSplit Tone Controlは、Schecter社のギターに搭載されている回路で、一般的なハイカットトーンと低域を削るローカットトーンを切り替えるというものです。Schecter社の場合、切り替えにはスイッチPOTを採用していますが、今回は前述の通りフェイズセレクター用のON/ON 6Pスイッチを流用しています。
上の画像(2021/4/22誤記修正)の通りに配線すれば1つのPOTでローカットとハイカットを切り替えて使用することができます。
使用してみたところ、SDS-1のように高出力かつ低域の豊かなタイプのピックアップには、ローカットトーンの組み合わせが大変よく合っていると感じました。トーンがフルの状態でも、スイッチを切り替えるだけで少し音色が変わり、ローカット側では少しハイが伸びている感じがします。そこから絞ると徐々に低域が削られていき、完全に絞るとフェイズアウトにも似たカリカリの音になります。ピックアップポジションを問わず自在にコントロールが可能で、かゆいところに手が届くという感じです。
ローカットトーン
上の画像のように、黒のブリッジを上から載せてみると、JEM777への接近具合が増したようなそうでないような、微妙なところです。中途半端なコスプレ具合の外見よりも、今回の収穫はローカットトーンの便利さが再確認できたことに尽きます。
ローカットトーンを多用しているギタリストとして思い浮かぶのは、PERSONZ等で活躍する本田毅です。ピックアップにMonster Toneを搭載したSCHECTER社のストラトタイプを愛用していましたが、通常のシングルコイルピックアップよりパワフルで中低音が豊かなMonster Toneのハーフトーン(センター+リア)はやや中低域が豊かすぎるということで、それをローカットすることによりキラキラとした美しいクリーントーンを生み出していたそうです。
このように、中低域が豊かでパワフルなピックアップとローカットトーンの相性の良さは30年以上前に実証されていたと言えるわけで、もっと早く試してみればと思えど後の祭りです。今後は中低域が豊かすぎるLEAD Original Humbuckerとも組み合わせてみる所存です!
【了】