【Femtech-X】#6-1 株式会社TRULY:男女の更年期ケアに取り組むスタートアップ
「Femtech-X」はフェムテック産業の今を伝え、未来をつくるメディアとして、日本のフェムテックプレーヤーの創業の思いや事業概要を発信しています。
第6回では、男女の更年期ケアに取り組む株式会社TRULYのCEO 二宮 未摩子さんにお話を伺いました。
インタビューの様子はYoutubeのFemtech Community Japan 公式チャンネルでもご覧ください!→https://youtu.be/DLVSVV5GnEY
起業の経緯
──今でこそ更年期は少しずつ認知度が上がってきましたが、起業された2019年当時はまだ認知度が高くなかったと思います。特に二宮さんの場合、更年期を迎えていない世代で起業されたということで、フェムテックの中では珍しいタイプだと思います。更年期に特化したサービスの開発のきっかけについてお伺いできますか?
2019年当時は、日本ではフェムテックという言葉すら浸透していませんでした。生理や妊娠、出産の分野ではサービスが生まれ始めていたものの、更年期に関する情報はほとんどありませんでした。
私は自分のつわりの経験から、更年期が次に迎える大きな波だと漠然と不安を抱えていました。ネット上で調べても情報が非常に少なく、「誰もやっていないなら絶対に必要だ」と感じ、使命感に変わりました。
この時期は、実際に自分が何を経験するのか、どういった症状が起こるのか全く予測できなかったので、まずは徹底的に調べることから始めました。そして、そこで見つけた情報の欠如が私の行動の原動力となりました。
更年期に関する大きな課題:タブー感と情報の少なさ
──2024年の今でも同様に情報が少なく、更年期はタブー視され、恥ずかしいと感じる人が多いようです。サービスを利用している方の声や感じていることはありますか?
本当にタブー視されています。また、皆さん非常に我慢強く、不調や不安を一人で抱え込んでいる方が多いです。TRULYのチャット相談サービスを利用する方も、長い間誰にも話せず、病院にも行けないまま、やっと「オンラインなら相談できるかも」と思い相談してくれる方が多いです。
更年期に関する不調を我慢している方がまだまだ多いと感じています。この状況を打破するために、私たちは情報の普及と相談の場の提供に力を入れています。特にオンラインでの相談が普及することで、誰にも話せずにいた不調や不安を解消できる方が増えてきたと感じています。
法人向け、個人向けサービスの具体的な内容
──TRULYでの個人向けと法人向けのサービスのそれぞれの具体的な内容を教えてください。
まず方針として、(1)正しい情報(知識)を知ると、(2)専門家に不安を相談する、そして(3)ケアする(良い商品・サービスを届ける)、というプラットフォームを作っています。
更年期を中心とした正しい情報を知るためには、「TRULY」という公式メディアサイトで更年期世代へ向けた記事を無料で提供しています。これは2020年から啓蒙の一環で作り続けています。気づけばもう450本ほどの記事があって、知らない間にPVもかなり伸びてきました。今後も強化していきたいメディアです。
ご自身の状態も知ることがすごく大事なので、知識だけではなく自分の状態を知るための「MENOPO CHECK」というホルモン値をセルフチェックするサービスも提供しています。
ホルモン検査は今までは婦人科へ行ったり、男性の場合、泌尿器科に行って検査するのが一般的です。しかし、心理的なハードルや、時間帯の制限もあるので検査自体をあまり知らない方も多く、積極的にやられている検査ではないです。
「MENOPO CHECK」の特徴としては、自分が好きなタイミングで検査でき、ご自身の髪の毛を切って送るだけでホルモン値がわかります。髪の毛なので、その日の日内変動にもあまり影響を受けずに、過去3ヶ月分ぐらいの3cmぐらいの長さで、その期間の自分のホルモン値が把握できることがメリットです。
男性版を去年スタートして、2024年6月に女性版もサービスを開始しました。ただ検査するだけではなく、LINE上で結果が届き、TRULYのメディカルチームの専門家による寄り添ったアドバイスや相談も提供しています。
よりセルフケアに役立つ情報に加え、これからは商品やサービスを提供・案内させていただき、セルフケアのソリューションとなるところまで準備しています。
企業向けには「TRULY for Business」という福利厚生サービスとしてLINEチャット相談サービスとeラーニングを提供しています。
そして最後に、「ケアする」については、自社でのセルフケアの商品の準備もしていますが、企業の商品やサービスをより集め、セレクトしてお届けするという仕組みを作っています。
そのため、更年期のソリューションや商品をもっている企業と新規事業や新商品開発、マーケティングのコラボレーションなどを一緒にやらせていただけるようになっています。結果として、多くの方に適切なケアを届けることが可能になります。
毛髪で診断できる検査にした理由
──ホルモン検査というと血液検査が一般的ですが、「MENOPO CHECK」では毛髪検査を採用した理由は何ですか?
最初に、「MENOPO CHECK」を構想し始めた時は、オンラインでクリニックと連携して、近くのクリニックで予約・血液検査だけして、結果などはLINEで届けることを実現しようとしていました。
リアルのクリニックに訪れて検査するという心理的・物理的ハードルがどうしても高く、いくら結果がLINEで届いたり、手厚いアドバイスが届いたとしても負担があり、そこは解決できないのではないかと悩んでいました。
そんな時に、大手製薬会社のホルモン検査技術に出会ったのが大きなきっかけです。毛髪検査技術を活用することで、「MENOPO CHECK」として提供できるスキームも作ることができました。
男性サービスからスタートした理由
──男性の更年期からサービスを始め、6月に女性版もリリースされました。男性の更年期は経済損失が大きい一方で、タブー視されがちです。なぜ男性から始めたのですか?
更年期に関しては男性にもある課題なので、女性に限定しないことは、事業のミッションとしても掲げています。男女の相互理解として、男女それぞれが持つ性差の違いや悩み、不調をしっかり理解しあえる社会を実現したいという想いで、男性に向けてもきちんと寄り添ったサポートをしていくことが大前提にあります。
記事やメディアの方でも、男性の方の情報発信は2年ほど前から強化しています。もっと男性向けにサービスを充実させていきたいと思っていたので、ホルモン検査に関しても、検査技術開発の関係で女性版を待ってからの開始もできました。
社内でもいろいろな意見は出ましたが、私自身は迷いなく男性もしっかりやっていくことが前提なので、男性から先に始めることにしました。
男性と女性の更年期の違い
──男性更年期と女性更年期の違いについて教えてください。
男性は女性と違って閉経というイベントがないので、急にホルモンが一定の期間で急激に低下することはありません。男性は緩やかにホルモンが低下していくため、本来は女性ほどの更年期の症状が起こらないと言われてきましたが、最近の10年間で男性の更年期の患者数が3倍に増えています。
その大きな原因が、ストレスによって男性ホルモン、活性化型ホルモンが急激に低下するような症状が起こりやすくなっていて、それによって男性も更年期の症状が出ていることです。この10年ほどの現代病とも言え、今のストレス社会の環境だからこそ、男性更年期に着目され始めています。
女性と同じような心身共に症状は起こる部分もありますが、逆に性機能で勃起不全のような男性特有の症状も当然出てきます。傾向としては、メンタルの不調が男性の方が強いと言われています。
女性よりも男性の方が不眠や、やる気の低下、少し鬱っぽい症状になるなどのメンタル不調を抱えがちです。仕事に大きな影響が出てしまい、パフォーマンスやモチベーションの低下による生産性が男性の方が更年期によって起こりやすいことが調査結果でも分かってきています。
開発にあたり苦労した点やこだわった点
──MENOPO CHECKの開発にあたり、苦労された点やこだわった点はありますか?
開発も簡単ではありませんでしたが、これからの大きい課題として、これをどうやって皆さんに知って使っていただくかという認知を広げていきたいです。ただ、マーケティング手段がまだタブー視されていたり、男性コミュニティはまだまだ知られてない分野です。
皆さんがもっと手軽にホルモン検査をしてセルフケアをしていただく習慣を作っていきたいですが、スタートアップなので大きく広告を打つやり方はできません。そのような中で、どういう形で世の中にこのサービスを広げていけるかということが、「MENOPO CHECK」の課題です。
後編では具体的なサービスやユーザーからの反応も含めてご紹介します。
https://note.com/femtechjapan/n/nce9ac2e15fad
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