見出し画像

女性は子どもを産み育てる機械と見做されている|はじめてのnote


はじめに

現代社会において、女性は依然として「子どもを産み育てる機械」として見做されている。これは単なる比喩ではなく、家父長制に根差した女性に対する構造的な抑圧の一部であり、女性の母性が無償で搾取される現実を反映している。

家父長制:一家の長である家長(男)が、家族に対して、絶対的な支配権をもつ家族制度のこと。
抑圧:自我の要求が外部の条件によって阻止されること。

例えば、女性は嫁入りすると、嫁入り先の家族の課長である義父の介護なども背負いこまされる。これは、家父長が強権的であり、女性が弱い立場に置かれている証左である。

その上で、母性という概念は、しばしば「自然な」女性の役割として強調される。が、この「自然さ」は実際には男性中心の社会が作り出したイデオロギーに過ぎない。

ここでは、女性がどのように家庭内労働を強いられ、その結果として母性が搾取されているかを論じる。

家父長制の影響と女性の役割

家父長制は、男女間の権力関係を固定化し、女性を家庭内に縛り付けるための主要な手段となっている。この制度のもとでは、女性の主要な役割は子どもを産み、育てることとされ、これが社会全体の共通認識となっている。この考え方は、女性が「自然に」母性を担うべきであり、男性は外での労働を通じて家族を支えるべきだとする性別役割分業を強化する。

しかし、この役割分担は、女性にとって不公平である。

男性は外部での労働を通じて経済的な報酬を得る一方、女性は無償で家庭内労働を行い、その労働が社会的に評価されることはほとんどない。特に、子どもを産み育てるという行為は、家族や社会の存続にとって不可欠なものであるにもかかわらず、それに対する適切な報酬が与えられることは稀である。

実際、専業主婦の家事労働を年収に換算すると、年2000万円に相当する。それだけの金額を稼ぎ、家庭に入れる男性が少ないことを考えれば、女性は不平等の上で搾取され、家庭に囲い込まれていることがわかる。もちろん、これは専業主婦に限ったことではない。家庭内での雑事は常に女性の役割だとされ、共働きであってとしても女性に押し付けられる。

これは、出産に当てはめても同じことが言える。出産を価値に換算するといくらになるか、という問いに金額を当てることすら、はばかられる。価値づけ仕様のないほどに意味のあることだからだ。しかし、価値づけのしようがない出産という行いを担っている女性は、産休・育休などで職場からの離脱を余儀なくされ、キャリアが絶たれる。

このような状況下では、女性の母性は単なる「自然な役割」ではなく、家父長制社会における搾取の一形態として機能している、と言わざるおえない。男性は女性の母性を利用し、自らの生活の雑事を押し付け、搾取している。

家庭内労働の見えない搾取

女性が家庭内で行う労働は、経済的には無償であり、社会的にはほとんど見過ごされている。この無償労働には、家事、育児、介護などが含まれ、これらの労働がなければ社会は成り立たないにもかかわらず、その価値は経済的に計上されない。

経済学者のアマルティア・センや、フェミニスト理論家のバーバラ・エーレンライクらは、この無償労働が女性に不当な負担を強いていることを指摘している。

これは、意図的なものであり、自然に生じた現象ではない。家父長制社会では、男性が経済的な支配力を保持するために、女性の労働が不可視化されてきた。家父長の権力を維持するために、あえて、女性の労働に価値を持たせなかったのである。

例えば、家事や育児は「女性の役割」として当然視され、これをこなすための努力や時間は軽視される。この「見えない労働」は、女性が社会的に評価されず、経済的な自立を困難にする要因となっている。女性が家庭内で費やす時間やエネルギーは、男性のキャリアや経済的成功を支えるものであり、これが女性の搾取の一環として機能している。離婚した後にシングルマザーが経済的な困窮に悩まされるのは、これが原因である。

母性の美化とその背後にある搾取

社会は母性を「神聖な」ものとして美化する傾向があるが、この美化の背後には、女性の労働を当然のものとして搾取する構造が隠されている。母性は、「女性らしさ」の象徴として称賛されるが、それと同時に、女性はその役割に従うことを強要される。このようにして、母性は女性にとって一種の枷となり、自由な自己実現を妨げる要因となっている。

さらに、母性を美化することで、女性が育児や家庭内労働に対して不満を抱くことが「非母性的」として否定される。「育児が大変だ」「家事が面倒だ」などの発言は、女性自身が母性を手放す発言とみなされ、現代の日本においても一定の批判が集中する。

このような状態が維持され続けることにより、女性は自らの搾取に対して声を上げることが難しくなる。母性を称賛する言説は、実際には女性を家庭内に閉じ込め、経済的に従属させるための手段であり、これが家父長制の維持に寄与している。

まとめ

女性が「子どもを産み育てる機械」として見做されることは、家父長制社会における女性の母性の搾取の一環である。家庭内労働の無償化と不可視化、母性の美化によって、女性は社会的に評価されない労働を強いられ、経済的自立を阻まれている。

このような状況を打破するためには、家庭内労働の価値を再評価し、母性が搾取の対象とならないようにするための制度的な変革が必要である。女性が真に自由に生きるためには、母性の美化に隠された搾取の構造を暴き出し、それに対抗するための社会的な意識改革が求められる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?