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【理論編】 "ポイント期待値貢献度" 指標の提案。

こんにちは。

今回は、点数状況も考慮に入れた新指標について、提案します。


▼この記事を読んでわかること

・点数状況も考慮に入れた新指標、"ポイント期待値貢献度" の仕組みがわかる。

自分が他のプレイヤーに比べてどの能力が優れているかがわかる。


1. "和了率" 、"放銃率" は意味のない指標か?

多くの麻雀プレイヤーは気付いているかもしれない。

和了率を上げても、成績は向上しないし、
放銃率を下げても、成績は向上しない。

和了率とは、一局あたり何%和了したかを示す値である。

麻雀は、和了数を競うゲームではない。
和了することで、勝利から遠のく場合もある。

放銃率とは、一局あたり何%放銃したかを示す値である。

麻雀は、放銃数が少ないプレイヤーが勝つわけではない。
勝利のために、放銃をする場合も多くある。

ただ、計算がしやすいために多くの麻雀ゲームで採用されている指標である。


野球というスポーツにも同じ例があるので紹介する。

野球では、バッターを評価する指標に、打率 というものがある。
1打席あたり安打を打つ確率を表したものだ。
(厳密に言うと、1打数あたりだが割愛)

スクリーンショット 2020-08-03 19.33.30

長年この打率という指標で、バッターを評価してきた。
しかしながら、野球は安打を多く打ったほうが勝つゲームではない。

野球は、9イニングの合計スコアを競うスポーツである。

そのため、バッターの評価指標は、安打を多く打ったかではなく、得点にどれだけ貢献したかとすべきであることだ。

スクリーンショット 2020-08-03 19.39.58

そのため、現代は得点と相関が高い指標でバッターを評価する流れが来ている。


そのため、麻雀でも和了率ではなく、より麻雀の目的にあった指標で、プレイヤーを評価すべきであると考える。


2.麻雀の目的とは何か?

プレイヤーを評価するためには、麻雀の目的を明確にする必要がある。

・トップを取る目的。
・特定の対戦相手に勝つ目的。
・大きなプラスは取らなくともマイナスにならない目的。
・自分が和了する目的。
・麻雀を覚える目的。
・仲間と話しながら楽しく打つ目的。
等、人によって様々かと思う。

ここでは、麻雀の目的を、「局を消費する間に、ポイント収支を最大にすること」と定義する。
トップを取ることや、ラスを回避することが目的ではなく、ポイント収支を最大にする上での手段として、"ラス回避" があるのである。


3. "和了率" 、"放銃率" はポイント収支において意味のない指標か?


天鳳鳳凰卓の 4,107,704局を対象に、順位ごとの和了回数を集計した。

10段ポイント配分で、1半荘ごとの和了回数は、以下のようになった。

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約 0.47 の正の相関が見られた。

和了回数とポイント収支は、ゆるやかな相関があることを確認した。


1半荘ごとの放銃回数は、以下のようになった。

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こちらは、約 -0.41 の負の相関が見られた。

放銃回数とポイント収支も、ゆるやかな逆相関があることを確認した。


"和了率" 、"放銃率" は、勝つために意味のある指標ではあるが、もっと適切な指標があると考えた。


4. ポイント期待値を考慮した指標で評価する

またもや野球を例に出すが、各打席に対してどれだけ得点に貢献したかを指標にして、個人を評価する。

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たとえば、ノーアウトランナーなし(左上) から、シングルヒットでノーアウトランナー1塁(1個右) になった場合、そのバッターの得点期待値の追加は、【0.476 → 0.842】 で、0.366点  得点に貢献できた。となる。


麻雀にも同様の方法で、個人の評価ができると考えた。

野球では、アウトカウントとランナーの状況で、得点期待値を計算する。
麻雀では、局情報(東一局等) と 各家の点数状況で、"順位確率" を計算し、それに順位ごとのポイントをかけることで "ポイント期待値" を計算する。

たとえば、天鳳10段のプレイヤーが、
1位 10% 、2位 30%、3位 40%、4位 20% という状況の場合は、
それぞれの順位確率に、ポイントを掛け算して、
ポイント期待値 = 90pt * 10% + 45pt * 30% + 0pt * 40% + ▲180pt *20%
 ポイント期待値は、0.9pt + 13.5pt + 0pt + ▲36pt = 【▲21.6pt】 となる。

この状態から、和了によって、
1位 25%、2位 30%、3位 30%、4位15% という状態にした場合、
ポイント期待値= 90pt * 25% + 45pt *30% + 0pt * 30% + ▲180pt * 15%
ポイント期待値は、22.5 pt + 13.5 pt + 0pt + ▲27pt = 【9pt】 となる。

そのため、この和了は、【▲21.6pt → 9pt】で、30.6pt の価値があるといえる。


より具体的な例を使って説明すると、

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たとえば、南1局2本場 で、27500点持ちの2位から 8000点を和了した。

南1局開始時の順位確率は、1位 30.5%、2位 32.9% 、3位 25.0%、4位 11.6%と計算できる。

そしてこの和了によって、1位 72.4%、2位 22.3% 、3位 4.7%、4位 0.6% と変化する。

これがもしも、10段プレイヤーだった場合、
ポイント期待値 = 90pt * (72.4% - 30.5%) + 45pt * (22.3% - 32.9%) + 0pt + ▲180pt * (0.6% - 11.6%)
37.71 pt + ▲4.77pt + 19.8pt = 52.74ptの価値がある和了となる。


順位期待値の計算は、鳳凰卓の過去数万戦の結果から、機械学習によって求めた。
http://critter.sakura.ne.jp/jun_keisan_setumei.html

上記のサイトを参考にした。(Critter様ありがとうございました。)


このポイント期待値を用いた評価方法は、以下のメリットがある。

【メリット】

1.和了率だけではなく、和了点数も評価できる
2.局消化のための和了の価値も評価できる
3.局消化のための放銃(差し込み)の価値も評価できる
4.和了、放銃、横移動、流局等のイベントに対して同じ単位で評価できる


5.局消化の和了も同じ指標で評価できる!

和了価値を評価する際に、課題であった以下ケースも正しく評価できる。

A. 鳴いて、8,000点 を 3回に分けて和了 する。
B. 立直をかけて、8,000点を 1回で和了 する。

同じ8,000点の収入ですが、ポイント期待値は異なる。

麻雀は、基本的に1局で1人しか和了できないゲームなので、
和了点は低くても、和了ることで相手の和了を防ぐことができる。

しかし、麻雀は、1戦での局数が限られているゲームなので、
3局消費するということは、自分の和了できる機会を損失していることに繋がる。

そのため、和了率や、平均和了点数では、一意に良し悪しを決められない。

しかし、今回提案したポイント期待値で評価する手法であれば、それぞれの和了で何ポイントを獲得したかを評価することができる。

南2局
Aさん 40,000点、Bさん 25,000点、Cさん25,000点、Dさん 10,000点

Aさんが、3回に分けて8,000点を和了した場合、59.14pt の価値がある。
Aさんが、1回で8,000点和了した場合、10.53pt の価値がある。

Aさんの場合は、局消費の価値が高いため、3回に分けて和了できた場合のほうが価値が高いのである。

Dさんが、3回に分けて8,000点を和了した場合、4pt の価値がある。
Dさんが、1回で8,000点和了した場合、35.22pt の価値がある。

Dさんの場合は、局を残す価値が高いため、1回で和了できた場合のほうが価値が高いのである。


このように本指標は、「どのような点数状況で和了したか」「誰から和了したか」も含めて判断することができる。


6.和了、放銃、横移動、ツモられ、流局等のすべてのイベントが同じ指標で評価できる!

これまで和了に関するポイント期待値を説明してきたが、
放銃、横移動、ツモられ、流局 という麻雀におけるすべてのイベントを
同じ方法で評価することが可能
である。

麻雀は、野球と違い、攻撃中も失点することもある競技である。

そのため、これらのイベントの獲得期待値を合算する必要がある。


7.段位ごとのポイント期待値


鳳凰卓以上のプレイヤーを対象に、7,650,000局を対象に集計した。

グラフの上部にある灰色の数字が、各指標の合計値である。

7〜10段の鳳凰卓で、段位が上がるにつれて各指標の合計値が正比例の関係になっていることがわかる。


スクリーンショット 2020-09-26 23.16.02

7〜10段は、放銃のポイントが大きな影響を与えていることがわかる。


4000字を超えたので、本記事は一旦ここまでとする。
興味深い数字が出てきたので、今後も研究を進めていきたい。


【今後の継続調査】

1.段位ごとの各ポイント期待値の分布

段位が高いプレイヤーは、"放銃ポイント期待値" が低くなるのはわかったが、放銃数が少ないのか、それとも、 "放銃ポイント期待値" が低すぎる放銃が少ないのか等の分布を調べてみたいと思った。

そこに上達のヒントがありそうだと感じた。

2.天鳳位の特徴分析

天鳳位のそれぞれのパラメータを分析したい。
(実は、天鳳位17プレイヤーすべての数字は出したが、その話はまた次回。
プレイヤーごとに特徴が出ていておもしろかった。)

3.Suphx の特徴分析

Suphx の何が優れているのか、牌譜を解析してみたい。

4.Mリーガーの特徴分析

Mリーグ の牌譜を使って解析すると、鳳凰卓とMリーグの舞台の違いや、Mリーガーの特徴も調べられそうである。

5.牌譜検討支援システムの提案

天鳳プレイヤーそれぞれの牌譜を解析して、ポイント期待値が悪かった局をピックアップするシステムを作れば、より上達に役立つ牌譜検討のヒントを与えることができるかもしれない。


やりたいことはたくさんあるので、note で共有できたらと思う。


今回は、ここまで。

興味がある方は、フォロー&スキ!を押してもらえると、モチベーションになります。よろしくおねがいします。




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