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無礼な行動が観察者に与える影響~創造性やパフォーマンスをどのように低下させるか~実験2

ある病院の看護師の会話


看護師A: 「ねえ、昨日のマリコさんの態度、ひどかったわよね。」
看護師B: 「えっ、何があったの?」
看護師A: 「佐藤さんが点滴の準備を少し間違えただけなのに、マリコさんが患者さんの前で『何やってんの!そんな簡単なことも出来ないの?』って怒鳴ったのよ。」
看護師B: 「えー、マリコさんらしくないわね。佐藤さん、きっとショックだったでしょうね。」
看護師A: 「そうなの。それを見ていた私たちも本当に居心地が悪くて...」
看護師B: 「うん、そういう場面を目にすると、自分の仕事にも影響出そう。」
看護師A: 「その通りよ。その後、なんだか集中できなくて。薬の確認も二度手間になったし、患者さんへの説明も上手くできなかったわ。」
看護師B: 「わかるー。私も似たような経験あるもの。チームの雰囲気が悪くなると、患者さんへの対応とかも鈍くなっちゃうのよね。」
看護師A: 「本当そう。それに、あんな状況見ると、誰かを手伝おうって気も失せちゃって。」
看護師B: 「うんうん。あんな言い方を見ると、みんなの仕事ぶりに影響するわよね。」

実験1(Porath, C. L., & Erez, A. 2009)では、実験参加者に権限を持つ実験者の無礼行動の影響を調べた実験でした。いわばその場に影響を与えるリーダーが無礼をとった場合と置き換えられます。

では、リーダーや上司でなく、同僚が無礼行動をとり、それを同僚が観察した場合はどう影響を及ぼすのでしょうか?

この研究の実験2では、同僚からの無礼な行動が目撃者のパフォーマンスを低下させるかどうかを検証しています。参加者に直接権限を持たない同僚が無礼を行うとどうなるかです。

実験2

参加者と手順

アメリカの大学生から68名が参加。実験1と同様に、学生にはこの研究の目的は人々のパフォーマンスに影響を与える性格要因を調査することだと説明しました。各セッションは6人の参加者のグループで実施しましたが、グループは4人の参加者と2人の共犯者(サクラ)で構成されていました。

無礼な行動の操作
1)実験の同意書を読む時間が非常に長い共犯者が登場し、他の共犯者がその遅延行動を非難する形で無礼な行動を示す。「どうしてそんなに時間がかかるんだ?バカなのかよ?これくらい簡単なことだから、さっさとやれよ。他のみんなを待たせているんだ」と発言する。(無礼条件)
2)ニュートラル条件では、特に何も発言はしない。

測定方法

1)タスクパフォーマンス:アナグラム(単語並べ)を解く数とレンガの使用方法を考える数で評価
2)創造性:レンガの使用方法をブレインストーミングして創造性の評価とする
3)組織市民行動:追加の実験にボランティアとして参加するかどうかで評価。
4)不健全なアイデア:レンガの使用方法の中で不健全なアイデアを評価。
5)ネガティブな感情:PANASスケールを使用して評価。

結果(表も参照)
1)タスクパフォーマンスの低下:無礼な行動を目撃した参加者は、アナグラムの正答数とレンガの使用方法の数が有意に減少しました(F値はそれぞれ6.90と13.23)。
2)創造性の低下:無礼な行動を目撃した参加者の創造性の評価が有意に低下しました(F値は7.21)。
3)組織市民行動の減少:無礼な行動を目撃した参加者は、追加のタスクを手伝う意欲が有意に低下し、52.3%がボランティアしたニュートラル条件に対し、無礼行動条件では25%のみがボランティアしました。
4)不健全なアイデアの増加:無礼な行動を目撃した参加者は、不健全なアイデアの数が増加しました(F値は4.92)。
4)ネガティブな感情の増加:無礼な行動を目撃した参加者のネガティブな感情が有意に増加しました(F値は42.60)。

実験2は、無礼な行動が同僚間で発生した場合でも、目撃者のパフォーマンス、創造性、市民行動、および感情に悪影響を与えることを示しました。これにより、無礼な行動が組織全体に与える深刻な影響が明らかになりました。
また、この研究では、無礼な行動を目撃することがネガティブな感情を介してパフォーマンスに与える媒介効果も示しており、無礼な行動を目撃するとネガティブな感情が強まり、その結果、アナグラムタスク、レンガタスク、および創造性の評価が低下を明らかにしています。

実験3に続く。


<参考文献>
Porath, C. L., & Erez, A. (2009). Overlooked but not untouched: How rudeness reduces onlookers' performance on routine and creative tasks. Organizational Behavior and Human Decision Processes, 109(1), 29–44.


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