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2024年に読んだ本の記録(随時更新)

※FEELCYLCEとは関係のない記事です

2024年11月〜

すべての、白いものたちの ハンガン

代表作『菜食主義者』は手に入らず未読。受賞を知って、唯一電子書籍化されていたこちらをダウンロードしたが、読み終えるのには1ヶ月近くかかってしまった。写真もこの本の重要な構成要素なので、紙の本で読んだ方がいいかもしれない。心の深いところにある悲しみをそっと掬いだすような筆致。寄り添うわけでも、明るく励ますでもないが、こういう眼差しを持つ人がいる、ということがどこか救いになるのかもしれない。

2024年10月〜

推し、燃ゆ 宇佐見りん

数年前の芥川賞作品を今、改めて。作者は当時21歳。文章が若い。アラフォーの自分には首をかしげる表現もあったが勢いがあって読めた。趣味が活力となるのはわかる。主人公は、高校生。辛いなぁ、と思う。「歪(いびつ)だが切実な自尊心の保ち方」という町田康さんの評にしっくりきた。

もう一度、泳ぐ。 池江璃花子

白血病を克服し、五輪への出場を決めた池江選手の手記。闘病の詳細は書かれていませんが、わずかに示される内容から、私も抗がん剤の経験があるため、わかる部分がありました。あの状況下で、ここまで強い気持ちで闘えるのは本当にすごい。それだけ、五輪や水泳への情熱が強いのでしょうね。良い意味で負けず嫌いで、諦めずに邁進する池江選手の姿勢が伝わってきました。特に印象的だったのは、羽生結弦さんとの対談。ものすごい高みの話をされていますが、重圧への向き合い方や自分の限界を超える方法についてのインスパイアされる内容で、読んで良かったです。

暮らしの図鑑 台湾の日々 青木由香

台湾の暮らし、歴史、文化、美味しいものをまるっと紹介した一冊。青木さんの愛情たっぷりの毒舌に思わずクスり。豊富な写真も眺めていて楽しく、台湾の歴史や気候についての解説は、青木さん独特のユーモアが効いていて、ためになる内容でした。

清少納言を求めて、フィンランドから京都へ ミア・カンキマキ

「私は自分の人生に飽きてしまった…中年、独身、子どもはいない。…2009年10月5日。38歳。ここから始まる」
フィンランドではほとんど知られていない清少納言に、ひょんなことから心奪われ、自らを重ね、日本語も話せないのに「セイ」が見た世界を自分も見たいと、日本行きを決意。作者の目を通すと、清少納言がとても現代的でユーモアに溢れた女性に見える。曰く、枕草子は1000年を超えても響く「キャリア女性のブログ」だそう。改めて、現代語訳で読んでみようかな。

2024年9月〜

『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』三宅香帆

働き始めると、それまで楽しんでいた趣味に時間を割けなくなる、という実感を持つ人は多いはず。タイトルから「どうすればもっと本が読めるようになるのか?」を期待すると肩透かし。この本の主題は、「明治時代から現代にかけての労働者の読書事情」です。
『このプリン〜』のように、売れるためにこういうタイトルをつける手法には抵抗を感じる。(というか、まんまと引っかかってしまう自分に腹が立つww)
前書きに出てくる『花束みたいな恋をした』の例えが、分かりやすくてとても新鮮な印象だったが、作中に引用された他の作品がどれも「面白そうだな」と思えるものばかで、その部分を楽しみながら読んだ。

全体的に文章が若々しく、話し言葉に近いスタイルなので、『(読んだふりしたけど)ぶっちゃけよく分からん、あの名作小説を面白く読む方法』や『推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない―自分の言葉でつくるオタク文章術』といった、他の著書の方が、より筆者らしさが出ていて、面白いのでは?と感じた。

『日本マンガ全史: 「鳥獣戯画」から「鬼滅の刃」まで』  澤村 修治

厚みは、一般的な新書の約2倍。圧倒的情報量。面白い漫画のカタログとして軽い気持ちで読み始めてびっくり、学術的な超大作だった。

縄文土器に既に見られる「漫画的表現」(誇張やユーモア)が、平安や江戸文化を経て、明治・大正時代にジャーナリズム(風刺画に始まる4コマ)として花開き、戦時中にはプロパガンダとして、戦後には人々の娯楽として急速に発展。その時代に華々しく活躍したのが手塚治虫。彼がすごいのは、漫画だけでなくアニメにも功績を残したこと。これによって、漫画の表現が二次元だけでなく「映像」にも広がることになり、鬼滅やワンピースのように、言語の壁を超えて世界に羽ばたいていく。

戦前や昭和の漫画は知らない作品も多かったが、時代背景とともにその漫画の意義が簡潔に解説されているので、面白く読んだ。「なかよし」や「ジャンプ」の時代になると、知っている作品がずらりで、もう情報の洪水。笑 メディアミックス(映画化、ドラマ化など)やグッズ展開、さらには世界各国での受容(ヨーロッパで人気の漫画や、中国でヒットした作品など)、まさに漫画にまつわる話が網羅的に書かれていて、「すごい」の一言。この1冊をきっかけに、さらに興味のあるテーマを深掘りしたくなるような一冊だった。

『このプリン、いま食べるか? ガマンするか?一生役立つ時間の法則』 柿内尚文

このタイトルに、美味しそうなプリンのイラスト。思わず手に取ってしまうよねぇ。ちなみに、過去作は『パン屋ではおにぎりを売れ』と、こちらも非常にキャッチーです。著者は広告業界から出版業界に転職し、編集としてキャリアを積んできた方とのこと。どんな本が売れて、読みやすいかを知り尽くしている感!笑 もはや、「読む」ではなくぱらっと「見る」だけでOK(後ろに要点まとめがついてる)というタイパ抜群の本。内容としては、よくある「時間術」だけど、印象的でキャッチーなフレーズのおかげで、思い出しやすく、日常生活に取り入れやすいと感じた。

『銀座缶詰』益田 ミリ

久しぶりに4丁目の交差点を歩き、「銀座っていいな」と思ったので手に取る。内容としては、「40代あるある」のエッセー集で、銀座とは直接的に関係がなかった。(銀座百点のコラムのようなものを想像していた。)
自分もこの年齢に差し掛かっていることもあり、共感できる部分や、反面教師として参考にできるところが多かった。とくに、「過ぎてみれば、30代なんて20代みたいなものだった」という言葉にはハッとさせられた。
「違う誰かのようになりたいと思わないのはいい気分」
益田さん自身、その境地には至れていないそうだが、彼女の漫画の主人公が言うこのセリフは、少し先の未来の希望として覚えておきたいと思った。(2013年2月出版) 

再読)『壁を超えるマインドセット』木村敬一

木村選手待望の2冊目。こちらはさくさく読める実用書のテイストで、彼の波瀾万丈な人生や現在進行形の挑戦、そしてそれらに対する非常にしなやかな考え方をダイジェストで味わえる。発売直後に一気読みしたが、その後はふと思い立った時に適当にページをめくって再読している。
この年になると、努力の素晴らしさも、努力だけではどうにもならないこともよくわかる。だからこそ、木村選手のスタイルがとても素敵だな、と思う。『闇を泳ぐ』と合わせてぜひ!(2024年4月出版)

再読)『闇を泳ぐ』木村敬一

パラリンピック2連覇おめでとうございます!そして今日はお誕生日なんですね。note界隈でも有名な木村敬一選手の自伝。めちゃめちゃ面白い。
今はなき八重洲ブックセンターでのトークショー、満席なのはわかっていたが、どうしても生の木村選手を見たくて、仕事早抜けして売り場で立ち見w 筋肉すごくて、当たり前だけど超アスリート、超金メダリストだった。
ごくごくさらりと書いているけれど、幼少期の話や、プール教室に通い始めた経緯などにハンディキャップの存在は意識する。でも、その一方で、圧倒的に素直、等身大の感覚に共感しきり。木村さんの語る「目が見えないこと」の実態は、誰の心にもスッと入ってくるのでは。この部分は、学びにもなった。
学生時代のエピソードなど、読んでいて思わず吹き出してしまうし、アメリカでの話も本当に面白い。読み応え抜群。子育て中の身からすると、ご両親、特にお母様があっぱれ。巻末のお手紙を読んで思わず泣けたし、それに対する木村選手の反応も実に良くて、あぁ、こんな家族になっていきたいと思った。おすすめの本は?と聞かれると、もうずっとこの本をあげさせてもらってます。新作が出てからは新作も推してます笑 (2021年8月出版)

『バリ山行』松永K三蔵

「バリさんこう」と読む。バリエーション豊かな山歩き、つまり、ルートを外れた危険な登山。前職での失敗から、会社に馴染もうと無理やり参加した登山サークル。そこで出会った社内の変わり者、メガさん。山を通じた彼との交流から、モブオブモブだった主人公の人生に新たな風が吹く。登山の知識がないこともあり、肝心な場面で「これどういう状況?」と思ってしまい没入できず。同僚がたくさん出てくるが、名前を覚える前に読了してしまった。単行本のカバーをめくると、仕掛けが施されている。カバーの模様も、読んだ後だと「あぁ、なるほど」と思うはず。

『言語学バーリ・トゥード: Round 1 AIは「絶対に押すなよ」を理解できるか』川添愛

結論から言うと、「理解するのは難しい」
言葉には、文字通りの「意味」と、それを発した背景にある「意図」があり、後者を正しく理解するためには、相手との関係性や、他の事例を含む膨大な学習が必要になるため。
読めば「なるほど」と思える言語学に関するエッセイ集。全体的にユーモアたっぷりに書かれているが、プロレスの例えが多用されていて、その面白さを完全に掴みきれなかったのが残念。著者が1972年生まれということで、ジェネレーションギャップも少々。大量の挿絵もノイズに感じた部分があった。(出版年 2021年7月)

『「アート」を知ると「世界」が読める』
山中俊之

世界では絵画やオペラなどのアートは「教養」とされ、ビジネスパーソンには必須ですよという話。タイトルと幻冬舎新書という点から内容は予想できたが、目次に現代中国のアート事情とあったので手に取る。(結局はアイウェイウェイで残念)
冒頭から欧米礼賛の雰囲気が強く、これで「世界では〜」と語られると、つい少し反発を覚えてしまう笑 第2部の絵画解説は面白かった。取り上げた作品が有名すぎて、全体的にざっくりした印象だったかも。
(出版年 2024年3月)

『ややこしい本を読む技術』吉岡友治

筆者は元予備校講師。優しい語り口で丁寧に難しい本への挑戦の仕方を教えてくれる。高校生や大学1年生など、難しい本に挑戦し始める年代にぴったり。
ややこしい本を読むというのは、マラソンのようなもの。読む側にも相応の覚悟とスキルが必要。普通の「読書」のように夢中や没入だけは読みきれない、タイトルや目次から内容を予測し、対話しながら読んでいく。この出だしの部分だけでも、すでに重要なことが書いてある。
ややこしい本の具体例としてピケティが取り上げられている笑 とても丁寧に解説されているので、かつて挫折した人はぜひ。ちなみに私は、今回も挫折。笑(2024年7月出版)

2024年8月〜

『聖の青春』大崎善生

大崎先生の訃報に触れて、初めて読みました。とても良かった。カフェで思わず涙ぐんでしまった。29歳で亡くなった天才騎士・村山聖(むらやま さとし)彼の生涯を、師弟関係を軸に描いたノンフィクション。幼少期のエピソード、弟子入りのくだり、その後の快進撃、その裏に常にある病との戦い。ぐいぐい読ませる。将棋のことををよく知らなくても、彼の生き様、あの時代に彼が燃やした命の輝きに胸が熱くなった。また読み返したい。

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