風神雷神図×紅白梅屏風
風神雷神図に目覚めた経緯
今年の1月に京都建仁寺で俵屋宗達作の「風神雷神図」を観たころには、かなり昔のNHK大河ドラマのタイトルに出ていた絵、という認識のままであったが、今年は琳派の絵師の作品を鑑賞する機会が多かったため、特に10月に出光美術館で観た酒井抱一版の風神雷神図を観たあたりから目覚め、琳派四大巨匠(俵屋宗達、尾形光琳、酒井抱一、鈴木其一)によるそれぞれの風神雷神図の関係などを調べて、そうだ、この四大巨匠版を全部鑑賞しよう、と思い立った。
という経緯があり、では、東京国立博物館所蔵のはずの尾形光琳バージョンはどこで観れるのだろう、と調べると、なんと、熱海のMOA美術館とのこと、それがわかったのが今月上旬だったため、11/24しかない、と予定を組んで朝早くから熱海へ出かけた。
熱海駅前からMOA美術館行きのバスが何本も運行していて1本見送ってからすぐに乗ることができた。坂道を登った、海を見下ろす高台に美術館はあった。さらに長い長いエスカレータを登って展示室にたどりついた。
尾形光琳の誇り
尾形光琳の作品や、酒井抱一の絵などの展示をひと通り鑑賞して順路をたどると、大トリを務めるかのごとく最後の方に展示があり、人だかりがしている。
思いのほか色鮮やかである。色褪せない高価な顔料を使用しているだろうし、保存状態もよいに違いない。
同じ展示室に隣接して展示されているのが国宝:紅白梅屏風図:
この二つの絵は全く関係がないものと考えていたのだが、実は深い関わりがあることが、別室で映写されていた解説の動画により、よくわかった。
というのも、風神雷神図の元祖はもちろん俵屋宗達であり、尾形光琳は宗達の作品に強く心惹かれ、オリジナルを模写して、構図を少々変えて、風神雷神ののっている雲をより濃く描いたほかは元祖を尊重して忠実に描いたとのこと。この天才は模写だけで終わる人ではなかった。同じ構図で紅梅と白梅を配置し、その間に水の流れを配して描き上げたのがこの紅白梅の屏風図であり、晩年の傑作とのこと。評論家の山田五郎氏によれば、「アンサーソング」と。ああ、きっとこの絵を描いて納得、満足したのだろうなと思わされた。このストーリーがものすごく腹落ちして、足を伸ばして熱海まで出かけて、長い長いエスカレータを昇りつめてきて、なんだかこちらも気がすんだ。
ひとつの作品が他の作家に影響を及ぼしたり、影響を受けてオマージュのような作品を残したり、いろいろなドラマがあることを思うと、受け身だとあまり重視していなかった美術品の鑑賞というのも、とても味わい深い。
次は鈴木其一版を観に行こうかと思うが、いつがよいだろう。自分なりのストーリーも考えて作品に会いに行ってみようかと思う。