津野海太郎(1938.4.6- )『おかしな時代 『ワンダーランド』と黒テントへの日々』本の雑誌社 2008.10 『百歳までの読書術』本の雑誌社 2015.7 『最後の読書』新潮社 2018.11 『かれが最後に書いた本』新潮社 2022.3
津野海太郎(1938.4.6- )
『おかしな時代 『ワンダーランド』と黒テントへの日々』
本の雑誌社 2008年10月刊
2009年2月4日読了
https://www.amazon.co.jp/dp/4860110862
「『ワンダーランド』と黒テントへの日々。
1973年、伝説の雑誌「ワンダーランド」創刊。
植草甚一、平野甲賀、片岡義男、小林信彦、岸田森、悠木千帆、唐十郎、長田弘……
<若者文化>が「生まれ」た。
日本のサブカルチャーを誕生させた編集者が綴る、始まりの、話。」
『本の雑誌』2004年7月号〜2008年7月号
連載「サブカルチャー創世記」
巻末の11ページもある人名索引に圧倒される回想録。
早稲田の学生だった1960年頃から始まります。
著者は1938年生まれ、
『新日本文学』や晶文社の編集者でした。
本書刊行時は和光大学図書館長。
https://ja.wikipedia.org/wiki/津野海太郎
「片岡義男と六本木のクレードルで飲んでいたら
「晶文社は会社じゃないよ」と彼がいった。
「じゃあ、なんだい?」
「クラブだね」
ほかの出版社は会社だけど、それにくらべて
晶文社は大学のクラブかサークルみたいだというのだ。」
p.328「会社じゃないよ」
「晶文社では一週おきに
企画室会議という名のあつまりがひらかれるようになった。
出席者は
中村[勝哉]社長以下、
編集責任者として小野二郎、
長田弘、そして私をくわえた
三人の非常勤社員、
それに制作の伊勢さん、
長田といっしょに美術出版社から移ってきた
営業の萬洲氏をくわえた六人。
晶文社がだす本にかかわる
すべてのことがらがここで決定される。
…
原浩子、つづいて
島崎勉、
秋吉信夫、
村上鏡子、
瀬戸俊一、
松原明美
といった人びとがつぎつぎに
編集部員として入社してきた。
入社試験もちゃんとやった。
ひとりしか採用しないのに応募者が四百名をこえ、
それを作文で五十人ほどにしぼって筆記試験をやるのだが、
小野さん作成の試験問題がむずかしすぎて、
いっこうに差がつかない。
やむなく面接を何度もかさね、
最後にのこった何人かをつれて
駿河台下や本郷や新宿に飲みに行く。
それが最終面接。
それまで高得点をとっていた
国立大出の秀才諸君は、
たいていこの段階で脱落の憂き目にあった。」
p.328「会社じゃないよ」
1973年に6号まで発行されて終わった雑誌
『ワンダーランド』を
学生の頃、全冊買っていた私は
著者の若い頃の本
『悲劇の批判』晶文社 1970
『門の向うの劇場 同時代演劇論』白水社 1972
『ペストと劇場』晶文社 1980.6
『小さなメディアの必要』晶文社 1981.3
を読んでみたくなりました。
追記 その後、一冊も読めていません。
津野海太郎(1938.4.6- )
『百歳までの読書術』
本の雑誌社 2015年7月刊
2015年9月9日読了
https://www.amazon.co.jp/dp/4860112741
http://www.webdoku.jp/kanko/page/4860112741.html
「老後はじっくり本が読めると思ったら、大間違いだった。歩きながら本を読む「路上読書」の実践者が、70代を迎えてからの「幻想抜きの老人読書の現実」を、ざっくばらんにユーモアを交えて綴るエッセイ集。
【目次】
老人読書もけっこう過激なのだ
<壱>
本を捨てない人たち
減らすのだって楽じゃない
路上読書の終わり
新しいクセ
遅読がよくて速読はダメなのか
月光読書という夢
「正しい読書」なんてあるの?
本を増やさない法
近所の図書館を使いこなす
退職老人、図書館に行く
渡部型と中野型
<弐>
背丈がちぢまった
ニベもない話
私の時代が遠ざかる
もの忘れ日記
漢字が書けない
老人演技がへたになった
八方にでてパッと凍る
〈死者の国〉から
本から本へ渡り歩く
老人にしかできない読書
ロマンチック・トライアングル
<参>
映画はカプセルの中で
いまは興味がない
病院にも「本の道」があった
幻覚に見放されて
友達は大切にしなければ
書くより読むほうがいい
むかしの本を読みかえす
怖くもなんともない
古いタイプライター
もうろくのレッスン
あとがき」
「【著者略歴】
津野海太郎(つの・かいたろう)
1938年福岡県生まれ。早稲田大学卒業後、劇団「黒テント」で演出家として活動する一方、晶文社の編集責任者として、植草甚一やリチャード・ブローティガンなど60年代、70年代の若者文化の一翼を担う書物を次々世に送り出す。のち「季刊・本とコンピュータ」編集長、和光大学教授・図書館長をつとめる。現在は評論家。
著書に『おかしな時代 「ワンダーランド」と黒テントへの日々』、『花森安治伝 日本の暮らしをかえた男』、『したくないことはしたくない 植草甚一の青春』、『ジェローム・ロビンスが死んだ』、『電子本をバカにするなかれ 書物史の第三の革命』などがある。」
『本の雑誌』2012年2月号〜2015年2月号
連載・加筆・再構成
装丁平野甲賀
https://ja.wikipedia.org/wiki/津野海太郎
1938年生まれの著者が
73歳で開始した連載の進行中に、
吉田秀和(2012年9月、98歳)
丸谷才一(2012年10月、87歳)
中村勘三郎(2012年12月、57歳)
小沢昭一(2012年12月、83歳)
安岡章太郎(2013年1月、92歳)
戸井十月(2013年7月、64歳)
富田倫生(2013年8月、61歳)
中川六平(2013年9月、63歳)
斎藤晴彦(2014年6月、73歳)
木田元(2014年8月、85歳)
赤瀬川原平(2014年10月、77歳)
岩田宏(小笠原豊樹 2014年11月、82歳)
が亡くなったことが記されています。
「人はひとりで死ぬのではない。
おなじ時代をいっしょに生きた友だちとともに、
ひとかたまりになって、順々に、
サッサと消えてゆくのだ。
現に私たちはそうだし、
みなさんもかならずそうなる。
友だちは大切にしなければ。」
p.229「友だちは大切にしなければ」
「丸谷才一氏とは、
1966年、氏の第一評論集
『梨のつぶて』[晶文社 1966.10]
https://note.com/fe1955/n/n49dc2860af81
の編集者として、
御茶ノ水の山の上ホテルで一度か二度、
ちょっと面倒な打ち合わせをしたことがある。
編集者といっても、
じっさいの企画と編集は小野二郎がやり、
私は最後の本づくりを手伝っただけ。
したがって小野さんをあいだにはさんでのつながり。」
p.120「私の時代が遠ざかる」
晶文社の創業者(の一人)、
小野二郎(1929.8.18-1982.4.26)
は私の明治大学文学部の恩師でした。
https://ja.wikipedia.org/wiki/小野二郎
「[急性胆嚢炎で12日間入院した病棟ロビーのリサイクル本棚の]
回遊における最大の収穫が吉田秋生の『BANANA FISH』だった。
私は団塊世代にはじまるマンガ読みの習慣がないので、
マンガについてはなにも知らないにひとしい。
それでもこの作品の評判はぼんやりと知っていて、
機会があれば読みたいとも思っていたのだが、
その機会がなかった。
ところが回遊初日、病棟ロビーのリサイクル棚をのぞくと、
その一巻から七巻までがズラリ並んでいるではないか。
よろこんでその場で四冊、
翌日につぎの三冊を借り、
ほかの本に並行して足かけ三日で読んだ。
あとでネットでしらべたら、
私が読んだ『BANANA FISH』は
フラワーコミックス版といい、
ぜんぶで十九巻あるらしい。すると残り十二冊。
それをどうするかはまだ決めていない。
最近のマンガはどれも長すぎる。おかげで
諸星大二郎の『西遊妖猿伝』も
浦沢直樹の『20世紀少年』も
途中で読むのをやめた。
『BANANA FISH』もそうなる可能性が大きい。
でも三分の一だけでも読めてよかった。
老人にはそれで十分。」
p.212「病院にも「本の道」があった」
津野海太郎さんは、
私の明治大学文学部(1973-78)での恩師、
小野二郎(1929.8.18-1982.4.26)が
1960年に、中村勝哉(1931-2005)と創業した
晶文社の編集長でした。
「「ツノ出せ、オノ出せ、オサダ出せ」の晶文社」 https://www.msz.co.jp/topics/archives/08097.html
私が学生の頃の晶文社は、
小野二郎先生が編集顧問で、
津野海太郎さんが編集長。
津野海太郎(1938.4.6- )
小野二郎(1929.8.18-1982.4.26)
長田弘(1939.11.10-2015.5.3)
津野海太郎『最後の読書』
新潮社 2018年11月刊 262ページ
2019年1月15日拾い読み
https://www.amazon.co.jp/dp/4103185333
https://www.shinchosha.co.jp/book/318533/
新潮文庫 2021年8月刊
https://www.amazon.co.jp/dp/4101202826
「80代になると、本の読み方味わい方は変わる。鶴見俊輔、山田稔、メイ・サートン……。筋金入りの読書家による、老年読書の醍醐味。」
「ついに齢八十。目は弱り、記憶力はおとろえ、本の読み方・読みたい本も違ってきた。硬い本はもう読めないよ、とぼやきつつ先人たちのことばに好奇心をかきたてられる。鶴見俊輔、幸田文、山田稔、天皇と皇后、メイ・サートン、紀田順一郎、吉野源三郎、伊藤比呂美……。筋金入りの読書家による、滋味あふれる読書案内。」
「読売文学賞受賞!
いつまで読める?
80代を迎えた稀代の読書人が綴る、本との付き合い最終章。
目はよわり、記憶はおとろえ、蔵書は家を圧迫する。でも実は、老人読書はわるいことばかりではないよ――。
鶴見俊輔、幸田文、須賀敦子……。長い歳月をたずさえて読む本は、豊かで新鮮なよろこびに満ちている。
親しい仲間や敬愛する先達との別れを経験しながら、それでも本と出会い続けよう。
本を読み、つくり、書いてきた読書人が、その楽しみを軽やかに綴る現状報告。読売文学賞受賞作! (解説・鈴木敏夫)」
https://www.shinchosha.co.jp/book/318533/
酒井順子「その先に、新しい読書の道が」
『波』2018年12月号
新潮社 Webでも考える人
http://kangaeruhito.jp/
「最後の読書」
2017年5月8日~2018年9月5日
連載17篇
毎月、パソコンの画面で連載を読んでいましたが、
本を手にすることが出来たので、拾い読みしました。
1938年4月6日生まれな津野海太郎さんによる
79歳から80歳の文章です。
ウェブでの連載は本として発売されると
同時に読めなくなるのが普通だと思いますけど、
この連載は今でも、
http://kangaeruhito.jp/articles/-/2024
2017年5月8日 01 読みながら消えてゆく
以下、全部無料で読めるようですから、
興味のある方はぜひどうぞ。
本書刊行以降の連載は、
2019年1月13日現在、
http://kangaeruhito.jp/articles/-/2689
2018年12月5日 18 樹木希林と私たち
が最新です。
樹木希林(悠木千帆)さんに興味のある方もぜひどうぞ。
http://kangaeruhito.jp/articles/-/2592
2018年9月5日
17 貧乏映画からさす光 その2
「北原怜子[1929.8.22-1958.1.23]が
「蟻の街」の住民となった50年代初頭、
須賀敦子[1929.1.19-1998.3.20]は
慶應大学大学院(社会学)に籍をおき、
武者小路公秀[1929.10.21-2022.5.23]、
有吉佐和子[1931.1.20-1984.8.30]、
犬養道子[1921.4.20-2017.7.24]
といった他大学の若者たちと、
カトリック学生連盟の一員としての活動をはじめていた。」
p.249「17 柵をこえる」
1946年5月生まれの兄
(カトリック東京教区司祭・1977年11月叙階)
が大学生の頃に活動していた
カトリック学生連盟と同じ団体なんだろうなぁと思って、
2018年6月に、
『須賀敦子エッセンス
1 仲間たち、そして家族』
湯川豊編 河出書房新社 2018.5
https://bookmeter.com/reviews/72864510
https://www.amazon.co.jp/dp/430902677X
http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309026770/
を読みました。
http://kangaeruhito.jp/articles/-/2300
2017年12月5日 08 手紙と映画館が消えたのちに
「映画館時代の映画とのつきあいは「一期一会」が原則だったのである。そこには、ここで見のがしたらもうあとはない、という緊張がたえずつきまとっていた。そして、その緊張感に後押しされて、映画的な記憶力ともいうべきものが、いやおうなしに強化される。
淀川長治、植草甚一、小林信彦、和田誠といった人たちの、映画の細部についての異様なまでになまなましい記憶力――かれらにつづく蓮實重彦や川本三郎や瀬戸川猛資たちをもふくめて、あれはすべてビデオやDVDや YouTube 以前の、町の映画館で鍛えたものだった」
津野海太郎さんは、
私の明治大学文学部卒論指導担当教授・
小野二郎先生の葬儀(四谷イグナチオ教会)で
平野甲賀さんと立ち話をしているのを
見かけたことがあるだけで、面識はありません。
https://kangaeruhito.jp/article/6474
2019年3月13日 21 往年の目力(読書日記)
に登場する川端康雄さんは同級生です。
http://kangaeruhito.jp/articles/-/2116
Webでも考える人 新潮社
2017年7月5日 03 子ども百科というテーマパークで
荒木田隆子『子どもの本のよあけ 瀬田貞二伝』
福音館書店 2017.1
https://www.amazon.co.jp/dp/4834083152
「『暮しの手帖』創刊は一九四八年。
そして『児童百科事典』が一九五一年。
金も資材もない極度に貧しい時代にあって、
すべての面でスキのない美しさと合理性を
しつこく求める反時代的な完全主義という点で、
じっさい、
瀬田の『児童百科事典』と
花森の『暮しの手帖』には、
たいへんよく似たところがあるのだ。」
http://kangaeruhito.jp/articles/-/2821?utm_source=20190411
Webでも考える人 新潮社
2019年4月5日 21 往年の目力(読書日記)
「わざわざ遠方から訪ねてくれた
古い友人と会うために駅の改札に向かった。
この古い友人とは川端康雄氏――
40年まえに最初に会ったときは明治大学英文科の院生で、
ということはつまり、
創設まもない晶文社で
編集責任者として活動する一方、
この大学で教えていた
小野二郎のお弟子さん
(52歳で急逝したかれにとってはおそらくただひとりの)
だったことになる。
師のあとをつぐ
ウィリアム・モリスと
ジョージ・オーウェルの研究者で、
いまは日本女子大でおしえている。
この春、世田谷美術館で
「ある編集者のユートピア・小野二郎」
という展覧会がひらかれる。
そんなこともあって、
ひさしぶりに会いましょうかということになったのだ。
――さてと、近くで一献というのでいい?
私はもうほとんど飲めないけどね。
そこで行く先をなじみのうなぎ屋にきめて
歩きはじめたはいいが、
あろうことか途中で石段を踏みはずし、
つんのめって2段下の街路に
顔面から落ちてしまった。
川端さん、さぞおどろいたろうな。
なにしろ何十年ぶりかで会った私が
いまやまぎれもない老人と化していて、
並んで歩いていたら、
その老人がとつぜん石段から転げ落ち、
額からダラダラ血を流していたのだから。
もちろん私もおどろきましたよ。
でも、すぐには現状が飲みこめない。
仰向けにされた顔の上方から、
川端さんがハンカチやティッシュで
私の額から噴きだす血を懸命に押さえ、
「これはたいへんだ」
とつぶやいている声が聞こえる。
近くを通りかかった年輩の女性が、
すぐにスマホで119番に電話してくれた。」
川端康雄さんは、
私の明治大学文学部の同級生です。
https://www.facebook.com/tetsujiro.yamamoto/posts/1340855612655741
川端康雄
『ウィリアム・モリスの遺したもの
デザイン・社会主義・手しごと・文学』
岩波書店 2016.12
https://bookmeter.com/reviews/62572684
には、川端君からのコメントがあります。
https://kangaeruhito.jp/article/11551
2019年12月17日 28 勉強読書のすすめ
「植草甚一さんやブレイディみかこ氏のほかにも、
勉強読書の魅力を感じさせてくれる本はいろいろあります。
しかし、いまは触れている余裕がないので、
それはまたあらためて。
この齢になると、読書によって知識をふやすとか、
じぶんの人間性を高めるとかは、どうでもよくなる。
教養主義的読書はあくまでも静的だが、勉強読書は動的。
そのつど思い立ってあるテーマに熱中し、
それが終わるころには、またつぎの勉強がはじまっている。
それが正しい読書法だとはいいませんよ。
思い返せば、私の読書は以前から
そっちのリズムでやってきたし、いまもそう。
だから教養というよりは、
そのつどの勉強のために
がむしゃらに本を読んでいる人を見るほうが好き。
もちろんそれが映画や音楽であってもかまわない。
まあ、それだけの話なのかもしれませんがね。」
https://kangaeruhito.jp/article/13188
2020年3月30日 30 落ち着かない日々
「2019年の春から初夏にかけて、
世田谷美術館で、
故小野二郎の活動を中心に
「ある編集者のユートピア」
という大きな展覧会がひらかれた。
モリス研究者の小野は
1960年に発足した晶文社の創業編集者でもあったから、
かれにつづく2人目の編集者だった
私も会期中に呼ばれて話をした。」
小野二郎先生(1929.8.18-1982.4.26)
https://ja.wikipedia.org/wiki/小野二郎二
は、私の明治大学文学部(1973-78)での
卒論指導担当だった恩師です。
聖心女子大学図書館に就職するための
面接を受けることになりました、と報告したら、
髭を剃ってネクタイをして行けよ、と言われたなぁ。
https://kangaeruhito.jp/article/16434
2020年10月14日 33 「こんどは熱中症かよ」の夏(読書日記)
「9月6日(日)
夏のはじめ、岩波新書から
川端康雄の
『ジョージ・オーウェル――「人間らしさ」への讃歌』
という本がでた。
…
学生時代の川端さんは
ウィリアム・モリス研究の
小野二郎のもとで育ち、
1982年に小野が52歳で没したのちは、
師の専門領域をひきついで、
モリス/オーウェル研究を着々と深めてきた。
一方で小野はすぐれた編集者でもあり、
また創業まもない晶文社に
私を引きずりこんだ人物でもあった」
川端康雄さん(1955- )
https://ja.wikipedia.org/wiki/川端康雄
は明治大学文学部の同級生(1973-77)です。
卒業以来お目にかかったことはありませんけど。
https://bookmeter.com/reviews/62572684
https://kangaeruhito.jp/article/47304
2021年2月22日 35 わが人生の映画ベスト10 その2
「白状すると、むかし私は、
植草甚一さん[1908.8.8-1979.12.2]や
淀川長治さん[1909.4.10-1998.11.11]が、
往年のサイレントやトーキー初期の映画が
到達していた高度な芸術性について
熱心に語るのを、なかば「ほんとかね」と
眉に唾をつけてきいていた。
でも、これはまちがいだった。
こんど修復された『M』を見て、
植草さんたちの昔語りが、
ただのおセンチな回想ではなかったことが、
ようやく私にもわかってきたのです。
そして、もしそうだとすると、このさき、
1920年代、30年代の古い映画の
デジタル・リマスター化がいっそうすすんだら――すなわち
『戦艦ポチョムキン』や
『三文オペラ』や
『巴里パリの屋根の下』などの、
これまでは寝ぼけたような画面で
見るしかなかった名作のかずかずが、
『M』に匹敵するレベルで
着々と修復されていくとしたら、
つぎの世代、つぎのつぎの世代にとっての
映画史は、かならずや、私たちのそれとは
かなり異質なものになるにちがいない。
ようするに過去の私が名画座で見たものよりも、
かれら、いってみれば未来の私たちのほうが、
おなじ映画を、はるかに精密な
サウンドや映像で見る可能性があるのです。
「私(すなわち津野[1938.4.6- ])の時代」
などはあっさり跳びこし、
未来に過去が直結する。
しゃくだけどね。
でもまァ、そのとば口を、
ほんのすこし体験できただけでもよしとします。」
https://kangaeruhito.jp/article/293298
2022年2月24日 36 わが人生の映画ベスト10 その3(最終回)
「「わが人生のベスト10」といっても、
現代史がらみの社会派映画ばかりじゃないの。
でも、これはやむをえない。
なにしろ私が育った20世紀半ばの日本は、
敗戦と占領という厚い障壁のうちに
封じ込められていたのでね。
あの当時、世界でなにが本当に生じていたのか――
それを知るには10年も20年も、
ときには50年を軽く越えるほどの時間が必要だった。
その時間のずれを縮めるきっかけを与えてくれたのが、
往々にして、この種の映画だったのです。」
「「最後の読書」は今回が最終回となります。
ご愛読ありがとうございました。
当連載の後半をまとめた単行本
『かれが最後に書いた本』
https://www.amazon.co.jp/dp/4103185341
は、新潮社から2022年3月28日に刊行予定です。
連載の前半は『最後の読書』として
刊行されています(読売文学賞受賞)。」
津野海太郎『かれが最後に書いた本』
装幀 南伸坊
新潮社 2022年3月刊 288ページ
2022年5月6日読了
https://www.amazon.co.jp/dp/4103185341
https://www.shinchosha.co.jp/book/318534/
「樹木希林、橋本治、加藤典洋、平野甲賀……あの世に行った彼らとのつながりをかえってつよく感じる。80歳をこえて深まる読書の記。」
「八十歳をこえると、老いというよりは、もうすぐ死ぬ人間として生きている――。世界をおおった未曾有の蟄居の日々、友だちはあっちの世界に仲間入り。でも、本を開けばまた会える。かれらとのつながりは、いまのほうがつよく感じられる。
樹木希林、鶴見俊輔、池内紀、橋本治、和田誠、加藤典洋、古井由吉、坪内祐三、平野甲賀……ページのむこうにある記憶の重なり。希代の本読みの読書案内、しみじみと完結。」
https://www.shinchosha.co.jp/book/318534/
佐久間文子「かなしみと、不思議なおかしみ」
『波』2022年4月号
福岡市総合図書館予約7人
新潮社『Web考える人』
2018年12月~2021年2月連載
「最後の読書」15篇
「友だちは大切にしなければ」
『暮しの手帖』2021年8-9月号
「小沢さんの三冊の本」
『朝日新聞』2021年5月15日朝刊「ひもとく」
「平野甲賀の青春」
『芸術新潮』2021年8月号
を収録。
『最後の読書』新潮社 2018.11 の続篇
単行本化で割愛された、
「26 高級な読者と低級な読者」2019年10月18日
「28 勉強読書のすすめ」2019年12月17日
「36 わが人生の映画ベスト10 その3(最終回)」2022年2月24日
は、
https://kangaeruhito.jp/articlecat/lastreading
で読めますから、ご覧になっていなければ、ぜひどうぞ。
目次
1 樹木希林と私
2 不良少年の目つき
3 「どうしようもなさ」の哲学
4 往年の目力(読書日記)
5 黒い海の夢
6 ひとりでは生きられない
7 映画少年のなれの果て
8 黄色いアロハの夏がきた(読書日記)
9 もし目が見えなくなったら
10 かれが最後に書いた本
11 落ち着かない日々(日記ふうに)
12 新型コロナ下でカミュを読む
13 「こんどは熱中症かよ」の夏(読書日記)
14 わが人生の映画ベスト10 その一
15 わが人生の映画ベスト10 その二
16 いっしょに消えてゆく
17 平野甲賀の青春
あとがき
https://kangaeruhito.jp/article/293298
2022年2月24日 36 わが人生の映画ベスト10 その3(最終回)
「新珠も高峰も香川も岸も存在しえない環境での輝き――
希林のいう「いまの俳優のうまさ」とは、
いったい、どんな性質の「うまさ」で、
どんなつよさの「輝き」なのだろう。
じつをいうと、この「ベスト10」に
成瀬巳喜男の『流れる』と
是枝裕和の『海街 diary』
を並べてえらんだのも、
そのことをじっくり考えてみたいと、
ひそかに企んでのことだったのです。
1956年 の『流れる』と
2015年の『海街 diary』は、
老若ひっくるめて、
それぞれの時代を代表する女優たちの
集団劇(いわば腕くらべ)という共通点をもっている。
すなわち『流れる』でいえば、
栗島すみ子[1902.3.15-1987.8.16]、
杉村春子[1906.1.6-1997.4.4]、
田中絹代[1909.11.29-1977.3.21]、
山田五十鈴[1917.2.5-2012.7.9]、
高峰秀子[1924.3.27-2010.12.28]、
岡田茉莉子[1932.1.11- ]
たちの。そして
『海街 diary』でいえば、
樹木希林[1943.1.15-2018.9.15]、
大竹しのぶ[1957.7.17- ]、
キムラ緑子[1961.10.15- ]、
綾瀬はるか[1985.3.24- ]、
長澤まさみ[1987.6.3- ]、
夏帆[1991.6.30- ]、
広瀬すず[1998.6.19- ]
……というように。
どちらの映画も私は大好きだし、
女優たちの演技もすばらしい。
いのちあるかぎり、
このさき二度も三度も
見ることになるだろうことは、まちがいない。
でもね、テレビCMのある時代とない時代とでは――たとえば
樹木希林と杉村春子、
綾瀬はるかと高峰秀子、
長澤まさみと岡田茉莉子
とでは、演技の質は
大きくちがっているはずなのですよ。
では、どこがどうちがうのか。
もはやそのことを考えている余裕はない。
ざんねん。別の機会に、またあらためて。」
1938年4月6日生まれな
津野海太郎さん79歳~83歳の連載を、
1955年1月生まれな62歳~66歳の私は、
毎回、読んでいました。
「[1963年10月]『新日本文学』の筆者として出会った
小野二郎[1929-1982]にさそわれ、
晶文社という極小出版社の二人目の編集者になる。
1964年春、木村光一訳『ウェスカー三部作』
という戯曲集を同社から刊行、
私のつくった最初の単行本」p.263
1955年1月生まれの私は、
高校生の頃(1970-73)、
9歳上の兄の本棚にあった、
『ウェスカー三部作』で、
Arnold Wesker (1932.5.24-2016.4.12)
「大麦入りのチキンスープ」1958
「根っこ」1959
「僕はエルサレムのことを話しているのだ」1960
を読みました。
その後進学した
明治大学文学部卒論指導担当教授が
小野二郎先生でした。
読書メーター 津野海太郎の本棚(登録冊数10冊 刊行年月順)
https://bookmeter.com/users/32140/bookcases/11091339
読書メーター 小野二郎の本棚(登録冊数21冊)
アマゾンに書影がない本(5冊)が残念です。
https://bookmeter.com/users/32140/bookcases/11091265
https://note.com/fe1955/n/n64cf2b64efe3
『ある編集者のユートピア 小野二郎:ウィリアム・モリス、晶文社、高山建築学校』世田谷美術館 2019.4
『大きな顔 小野二郎の人と仕事』 晶文社 1983.4 非売品
https://note.com/fe1955/n/nbda874966ad1
マイケル・ボンド作 R.W.アリー絵
『クマのパディントン』
木坂涼訳 理論社 2012.9
マイケル・ボンド作 フレッド・バンベリー絵
『くまのパディントン 改訂版 パディントン絵本 1』
中村妙子訳 偕成社 1987.6
小野二郎 『紅茶を受皿で イギリス民衆芸術覚書』
晶文社 1981.2
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