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【SUGA FUTSAL ACADEMY】第5回「セットプレーの成功率を上げる5つの要素とは?」

フットサルにおいて、セットプレーは非常に重要だ。サッカーに比べ両ゴールの距離が近く1試合中のシュート本数が多いため、当然ゴール前でのリスタートが多くなる。ましてやタッチラインを割った際にはスローインではなくキックインで再開されるのだから、ゴールに直結するプレーが増えるのは自然なことだ。現にFリーグでも、得点の25%近くをセットプレーから上げているチームも存在する。

いくつかあるセットプレーの中で、須賀監督は今回の講義範囲を「コーナーキックとゴール前でのキックイン」の2つに限定。フリーキックなどに比べ頻度が高く、且つゴールも生まれやすいプレーを優先したかたちだ。「フットサルとサッカーで大きく異なるのがセットプレー。より緻密にミクロな視点で取り組んでいるので、その奥深さを伝えられたら」という須賀監督の言葉で講義がスタートした。

まず、須賀監督が「セットプレーの攻守に求められるもの」として挙げたのが以下の5つだ。

・戦術理解力(一つ一つのプレーがどういう意図で行われるのかという、セットプレーのメカニズムを理解する力)
・洞察力(相手の僅かな所作など、様々な情報を基に次を読む力)
・対応力(相手のサプライズにもしっかり対応する力)
・集中力(ゴール近くのセットプレーに常に100%集中して臨む力)
・特殊能力(後述)

試合中は瞬間的にこれらのうちのどれか一つでも欠けてしまうと得点チャンスを逸したり、守備局面では失点に繋がってしまう場合がある。

また、これらの要素はすべてリンクしている。例えば、戦術理解力が無い選手に「集中しろ!」と言っても、具体的に何をどう集中してプレー良いのかが伝わらない。「洞察力を発揮して先を読め!」と言ったところで、そもそもセットプレーのメカニズムを理解していない選手が先を読むのは難しい。よって「この5つの中での優先順位は無く、5つ全てがトッププライオリティでリンクしている」(須賀監督)という。

そしてそんな5つの中でも須賀監督がより詳細な解説を行ったのが「特殊能力」に関してだ。須賀監督はセットプレー時の特殊能力として下記5つを挙げた。

・キッカー
・強シュート
・ボレー
・左利き
・ダイレクトプレー

この中で最も重要なのはずばり「キッカー」だ。キッカーには先ほど紹介した5つの能力が全て必要であり、そのクオリティ次第でセットプレーの成功率は大きく変わる。

ただ単に狙った所にラストパスを出せれば良いというわけではない。スカウティングで得た情報を頭に入れた上で、相手守備陣形と個々のキャラクターを理解し、ピッチ全体の状況を見ながら1%でも成功率が高い選択肢を探す。さらには点差や時間帯、試合の流れも考慮に入れ、様々な情報が入り組む中で瞬間的にベストな判断を下し、且つベストなタイミングでより質の高いパスを出さなければならない。そういう選手が味方にいれば相手陣内でのセットプレーは大きなチャンスになるし、逆に相手にいる場合はより多くのことに注意を払いながら守備をしなければならない。

ファシリテーターとして全5回に登壇した北原亘氏も、名古屋オーシャンズで長らく名キッカーとして活躍した。だが、そんな名手・北原氏に「キッカーとしてこの選手には絶対に敵わないと思った」と言わしめたのが、後に監督としても名古屋を率いた元ポルトガル代表ペドロ・コスタだ。北原氏いわく、「彼は4秒をフルに使える能力がずば抜けていた」のだという。

ご存知の通り、フットサルではリスタートの場面で、準備ができてから4秒以内に蹴らなければいけない厳密なルールがある。それ故に、(サッカーから転向したばかりの選手は特にそうだが)ボールをセットしてからすぐに蹴ってしまう選手も少なくない。もちろん、早いタイミングでパスを出すのがベストな場面ならそれで良いのだが、時にはまだ他の選択肢を選べる可能性を残していながらも焦って不確実なプレーを選択してしまう選手もいる。

だがペドロ・コスタは違っていた。「“4秒しかない”のではなく、“4秒も使える”」と考え、制限時間をフルに使って最適解を見極める能力が別格だったようだ。
また、それを可能にさせていたのが世界レベルのキック技術だ。

「ペドロ・コスタはキックの際、足がボールに触れる直前でも足首を返すことで蹴る先を変更することができたんです。例えばグラウンダーのパスを出そうとキックの動作に入っていても、そのモーションの流れのままファーへの浮き球に変更する、といった具合です。蹴る瞬間のギリギリまで相手DFの動きや狙いを見極める洞察力ももちろん必要で、同時にそれを実現する技術も必要。その2つを兼ね備えていたからこそ“直前で変える”というプレーが可能になるんです。あれはまさしく“特殊能力”だったと思います」(北原氏)

絶対王者・名古屋オーシャンズで9連覇を達成した北原氏は、ペドロ・コスタをはじめ世界トップレベルの選手とも共にプレーしてきた。トップレベルを「肌感覚」で知っているからこそ、直に触れた者にしか分からない感覚を言葉にすることができる。

これまでのレポート記事でも何度もお伝えしてきたが、日本屈指の名将である須賀監督の理論に加え、北原氏のトッププレイヤー目線での経験談や理論が重ねられることで講義の内容はより深く、濃いものになっていた。フットサルに関してこれほどまでに濃密なトークセッションと理論解説が行われている講座は、日本で他にない。このアカデミーでのみ、ご覧いただけるものと言えるだろう。指導者はもちろん、現役のプレイヤーにとっても成長に繋がる情報がふんだんに盛り込まれている。フットサルの基礎から最先端の理論までが一気に学べるこの講座を、筆者個人的にも強くお奨めしたいと思う。

文:福田悠

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