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【木暮賢一郎×谷本俊介オンライン対談】「未来のフットサルはどこへ行く?」

4月24日(金)、フットサル指導者の木暮賢一郎氏と元立川・府中アスレティックFC監督の谷本俊介氏によるオンライン対談が実現。その模様は木暮氏が主宰するオンラインサロン「フットサル・コーチング・ラボ」の公式YouTubeチャンネルにて無料でライブ配信され、番組終了後の現在もアーカイブで視聴できる。

指導者にとってフットサルの本質を知るだけでは不十分

今回のテーマは「未来のフットサルはどこへ行く?」。そのなかで焦点となったのは、「フットサルはサッカーに生きる」と言われてきた業界において、ボールスポーツとしてのフットサルはこの先、どこへ向かっていくのかということ。サッカーとフットサルはどのような点で親和性があるのか、逆にフットサル独自のものとは何なのか。サッカーから転向してきた選手をどのようにフットサルに適応させていくのか。フットサルは、他のスポーツから何を学ぶべきなのか。第一線を走り続ける2人の指導者が思い描くフットサルの未来像を語り尽くす対談となった。

特に興味深かったのは、サッカーとフットサルには共通項と相違点があることが前提とした上で、フットサルのオリジナリティーをどこに見出すかについて語り合っていたこと。「サッカーで上に行けなかった人がプレーするもの」という、一昔前のイメージをいまだに抱いている人が少なくない現状において、フットサルを見る人もプレーする人も、トップカテゴリーもエンジョイ層も関係なく、フットサルは独自の競技性や楽しみを持つものであり、その一翼を担っているのが指導者だという視点で議論が展開した。

そのなかで、木暮氏と谷本氏からはそれぞれ、いくつもの興味深い見解が語られた。

「サッカーからフットサルに転向してきた場合、僕は選手のサッカー経験やフィジカルなどをいかに適応させていくことを考える。自分の経験では、マインドが一致すれば適応は早いという印象がある。大事なのは、サッカーからきたとしても、フットサル専門でやってきたとしても、その選手をフットサルにどう適応させて、ハイパフォーマンスを出させられるか。その根本は指導者のマインドが影響すると思う」(木暮)

「フットサルは、コートが狭いなかで選手が連動して動くことで相手に対抗していくスポーツ。狭いスペースと限られた時間を考えると、攻撃でも守備でも連動性がないと崩せない。そこを整える過程で、機械的に動かざるを得ないという捉え方がある。よく言えば、協調性を持って、よりシステマチックにやるということ。そう考えたときに、最も合わせやすいものの一つがセットプレー。それらに対して選手が強制感、つまり“やらされている”というストレスを感じてしまったり、自分の頭で考えながらプレーすることが得意ではなかったりする選手は(フットサルに適応するのは)難しい。感覚タイプの選手の方が向いていない」(谷本)

「指導者がフットサルの本質を知っていることはマストですが、それだけでは不十分。指導者の根本や、ボール競技の特性も考えないといけない。フットサルはまだ若いスポーツなので、ボール競技のどこにカテゴライズされているのか。どういう特性なのか。サッカーとの親和性において、あるかなしで言えば、あります。でも、バスケにも、ハンドボールにも、アメフトにも近かったり、様々なところで親和性があるスポーツです。他のスポーツを知ることで、フットサルへのアプローチも変わる」(木暮)

「フットサルは、自分たちの得意な形に何度も作戦を組み直せます。そう考えたときに、攻撃でも守備でも、アウトオブプレーの有効性が出てくる。なぜなら、絶対的に時間が確保されていて、何かしらのコミュニケーションで意図的な組み替えができるから。攻撃でサインプレーを出すこともあるが、守備でも、ボールがアウトしたときにサインを出して、マンツーマンからゾーンに切り替えることもできる。CKなどですでにやっているチームも多いが、定位置攻撃に対して、いきなりゾーンで構えることもできる」(谷本)

「僕と谷本は、1試合のゲームで、何回セットプレーが起きるかをデータで取っている。それは、ゴールクリアランスやキックイン、CKというアウトオブプレーからの再開について。だいたい、1試合で80回から120回。データの解釈は様々だし、この数字はゲーム展開にも左右される。100回のセットプレーがあったとしても、そのうちのいくつがCKからとか、展開次第なので、データ自体は意味があるかはわからない。だからこれは自分たちの解釈にはなるが、この数字の意味は、100回はボールホルダーがフリーであるということ。狭いピッチでは、ボールにプレッシャーがある状態が何よりプレーがしづらいものだが、攻撃ではプレスを受けない状態。12、13秒に1回はアウトオブプレーになる計算なので、そこはもっと突き詰められると思う。谷本tは、そういうことはよく話している。5年後、10年後のフットサルがどうなっていくかはわからないが、そうしたことも理解しないといけない」(木暮)

ライブ配信の終盤には、「指導者がいい選手を育て、フットサルを楽しいと思わせられる。指導者に委ねられている部分がある。それはカテゴリーも関係ない。歴史の浅いフットサルをさらに発展させていく使命があるし、若い指導者とも交流していきながら、彼らにも革新的なアイデア、若い力に期待したい。ゼロからイチを生み出すものではなくても、新しい発見をしたいし、学びを経て、他のスポーツや、世界から真似されるようなものを作りたい。自分自身を含めて、期待したい」(木暮)という想いも語られた。

「フットサルを独自性のあるものにしたい」と話した谷本氏の願いも同じであり、フットサルをフットサルそのものとして認めてもらえるように、指導者として彼らは、探究し続けている。

今回の対談は、技術、戦術を超えた、より普遍性のある内容。それは競技の枠も超えて、多くの指導者、あらゆるスポーツ選手、関係者にも伝えていきたい、アカデミックなテーマに違いない──。

なお、今回の対談を主催したオンラインサロン「フットサル・コーチング・ラボ」には、木暮氏、谷本氏はもちろんのこと、高橋健介氏、須賀雄大氏、内山慶太郎氏、福角有紘氏、窪堀宏一が名を連ねている。これらのメンバーとオンライン・オフラインで交流できるサロンも必見だ。

今回のライブ配信直後の「アフタートーク」も、オンラインサロンのfacebookグループ内で公開中。対談では語りきれなかった話題や、高橋健介氏が友情出演してさらに議論を深めるなど“二度美味しい”内容だ。

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