恋とは
長らく恋愛から遠ざかっているためか
恋の始まりってやつがもうわからないんだ私は。
どうやって人を好きになるんだっけ
好きだな、ってどうして気付くんだっけ
好きになるとどうなるんだっけ
私って誰かを好きになってもいいんだっけ
恋をしていないときに考えたって
到底わかるわけがないし
教えてもらってわかるもんでもない。
かつて好きだったあの人の事を
どれだけ思い出せるだろう。
何故あの人の事を好きだったんだろう。
当時は当時でちゃんと好きだったはずだけど
それすら思い出せないぐらい
色んな感覚が麻痺してしまっている気がする。
先日会社の帰り道に
自転車とトラックが衝突したと思われる
事故の残骸に遭遇しました。
何人もの警察官と
同じ作業着を着た会社の人たちが群がっていた。
少しドキドキしながら
その横を自転車で通り過ぎて
暗闇の中
私より少し前に退社した
同じ自転車通勤の同僚の顔が浮かんだ
自転車を見ればわかるけど
戻るわけにもいかず
そのまま走りながらも
どうしても気になってしまい
『ちゃんと家に着いているかい?
今会社の前でトラックと自転車が事故っていた
みんなご安全に!』
と、チーム内の仲良しグループに問いかけた所
すぐさま無事帰宅報告通知が飛んできた。
ビービー震えたAppleWatchの画面を見て
とても安心して
じんわり我が瞳に涙が滲んだのを感じました。
十代後半のある日
私は当時組んでいたバンドのメンバーを一人
癌で亡くしている。
身近な人の死を味わった経験が
まだなかったこともあって
とても衝撃的で
色んな事が心と身体に刻まれて
人の死 というものをとても近くに感じたし
人はいつか死ぬ
もしかしたらこうして会えるのも
今日が最後かもしれない
と、必要以上に感じるようになってしまい
「大切な人を失うかもしれない不安」に、怯えた。
その後、祖父母を看取り
愛犬を看取り
命を全うする という現実にも触れて
「死」というものを
いい意味で現実的に捉えられるようにもなったけど
2年前、不慮の事故で
当時一番仲の良かったと言っても過言ではない友人を
突然失ってしまい
また再び、「突然いなくなる恐怖」を
もしかすると自分が感じているよりも
心の奥底で深く味わいながらも
目を背けていたような気がする。
フロントガラスが粉々に割れたトラックを見て
ふとよぎった顔が
どうしても頭から離れなくなって
きっとほんの5分程度の事だったと思う
失いたくない存在 だと、思った。
勿論、仲間の誰が事故に遭っても
その気持ちは同じなんだけど
何かが違う
特別な何かがそこに生まれたのを
たぶん私は、気付いた。
元々彼はとてもピュアな人で
年上だけどまるで小学生のような純粋さと
仙人のような穏やかでおおらかな雰囲気を持った
不思議な人だった。
一応それなりに婚活を経験した身として
こんなピュアな独身男性がまだいるんだな、と
実感はしていたものの
業務上どうしても
先輩後輩モードから抜け出さないので
異性として意識したことがなかった。
私は今のチームで 誰よりも経験年数が長く
御局化していることもあり
何度となく周りが独身男性を推奨してくれても
なかなか恋愛のスイッチが入りにくい
もはや入らない状態であったり
無意識に
スイッチを入れるべきではないと
感じていたのかもしれないけど。
彼も同様で
素晴らしい人間だなぁと思う反面
私は先輩であり
教える事助ける事ばかりで、その逆がないからか
男女というよりは、教師と生徒のような
母親と息子のような
スイッチを入れにくい理由はあっても
その逆がなかったので
恋愛対象として考えたことはなかった。
家が近所なので
彼を含めた近所住民グループに
大量にもらった野菜やパンをおすそ分けすることがあって
彼はいつも、贈呈した野菜で作ったおかずを
写真に撮って送ってくれるんだけど
それがとても穏やかで温かくて
幸せな気持ちになる事が
私にとってはすごく嬉しかったので
初めて送ってくれた「たけのこご飯」の画像を
実は今でも保存しているというのは内緒の話。
会社での私はお局なので
勿論いい顔ばかりは見せられないし
自分が本来隠したい部分を
既に見せびらかしてしまっていることもあり
気を張って過ごす必要がないというのも利点で
いつも穏やかで
誰に対しても優しくて
決して頼りがいがあるとは言えないけど
感謝の気持ちを忘れない彼の傍にいると
不思議と心が落ち着くのがわかった。
家が近いのを良い事に
時々一緒に帰るんだけど
こんな気持ちに気付いてしまってからも
無理せず飾らずいられることで
一緒にいる時間が苦痛じゃなくて
こうして少しずつ
こんな時間が増やせたらいいな、と思うんでした。
これは恋なのか。
これが恋じゃないなら、何が恋なのか。
もうすぐ40なのに
考えることは何年も何十年も前から同じ
でもひとつだけ
早く答えを出したいとか
早く特別になりたいとか
そういう焦りがないのは
私が大人になったからなのか
同僚という関係性がそうさせるのか
決して自分に自信があるわけでも
相手の素行が把握できているわけでもないのに
時間をかけて
もし間に合わなくても
その時は仕方ないから
ちゃんと大事にしたいな、と 思えるんでした。
今年の流星群や花火が
一緒に見れたこと
2人じゃないし、同じ空間にもいなかったけど
それを
嬉しかったな
と、思う気持ちが 一緒だったら 最高。
このままでもそうじゃなくても
傍にいて恥じない人間でいられるように努力する
という、婚活に励んでみる次第です。