
泣きながらアジフライを食べる女たち
昨日は夜ご飯の際、珍しくおばちゃんが食堂にいて
食事が終わったおばちゃんと
ちょっとお話ができました。
その宿がいっぱいだった時に泊まっていた、前回と前々回の宿は おばちゃんの親せきが経営しているところだった。
普段から仲良しみたいなので、そっちのおばちゃんが元気かどうかも聞いたところ、持病のリウマチがひどくなってしまって 子供がいる鹿児島本島に引っ越したんだとか。
それで宿が続けられなくなって、たたんだみたい。
会えなくなって寂しいけど、子供と一緒だし元気そうだから大丈夫だって。
おばちゃんは自分の娘を亡くしてしまって、さぞかし寂しいんだろうな。お孫ちゃん家族が移住して宿を手伝ってくれているとは言え、ぽっかり空いた心の隙間がなかなか埋まらない様子だった。
娘さんはずっと私の行く末を気にしてくれていたから、今回伝えようと思って来たんだけど、実はもうすぐお嫁に行こうと思ってるの。
そう伝えた途端、それまで寂しそうにしながらも気丈に娘さんの話をしてくれていたおばちゃんが涙をこぼして 何度も『おめでとう』と言ってくれた。
私も、『本当は娘さんにも、直接お伝えしたかったんだけど・・』と言いながら堪えきれずに涙が出て
会いたかった
会えなくて寂しいね って一緒にボロボロ泣いて
泣きながら私はアジフライを食べた。
『幸せになってね』というおばちゃんに
『結婚しても仕事は辞めないから、また来るからね。』と言うと
とても喜んでくれた。
思えばずっと私は婚活中だった。
御子ちゃんみたいな子に相手がいないなんて世の中の男たちは見る目がないよね~ってニコニコケタケタ笑ってくれた娘さんは、もういないけど
私には今、家で帰りを待ってくれるタミオ君がいることを
口に出すことで実感してさらに心臓がぎゅっとなる。
目の前には、私の幸せを泣いて喜んでくれるおばちゃんがいて
遠く離れた他人なのに、こうして家族のように関わり合えるようになったことにも 感謝の気持ちでいっぱいだ。
私がお手紙を書いたり、お土産を送ったりするたびに
おばちゃんは私に電話をかけようと思うんだけど、番号がわからないんだって。
私と同い年のお孫ちゃんが
『ちゃんと携帯に登録はしてあるんだよ。』と言って笑う。
紙に書いてほしいと言われたので
小さい紙に名前と電話番号を書いて渡した。
おばちゃんの携帯ケースのポケットには
いくつか手書きの番号が入っていて、そこに混ぜてくれた。
おばちゃんも『これあたしの』と言って、手書きの番号をくれた。私は登録したけど、これも記念にもらっておくね ってメモを財布に入れた。
ビービー泣きながらご飯を食べて語り合う私とおばちゃんの元に、小学生のひ孫ちゃんがやってきて
『ここで写真撮るとオーブが移るんだよ。だからきっといつもここにいるから大丈夫だよ。』と言った。
もう泣かないの、と言ってひ孫ちゃんがおばちゃんの頭を撫でる。
おばちゃんも私もいつまでもポロポロ涙を零しながら、先に寝るね と言って出て行ったひ孫ちゃんにお礼を述べて おやすみ する。
ほとぼり冷めてからお孫ちゃんが
『実はばあちゃんネットの悪い口コミをものすごい気にするの、大丈夫だって言ってあげて!』って言いに来た。
おばちゃんネットの口コミも見てるのか。
この古き良き日本の宿が素敵だと思えない日本人は逆に可哀想だよね、きっと高くて良いホテルにばっかり泊まってるんだよ。私はめちゃくちゃ好きだしいつも快適に過ごさせてもらってるからあとでそう書いとくね。って伝えた。
そんで本当にそう書いておいた。
(可哀想とは書いてない)
確かに不便なこともあるし
(トイレお風呂が共同なのが特に)
高級なホテルにあるようなサービスはないかもしれないけど
ご飯も美味しいし、従業員もみんな優しいし、田舎の実家に帰ってきたみたいな安心感を味わえるのは、こういう宿だからだな と思う。
現地ミッションは日程変更があったり出張期間が延期になったりすることもあるんだけど、家族が迎えてくれているようなあったかい宿で過ごせているからこそ 安心して任務に立ち向かえる精神的部分がとても大きい。
愛する恋人タミオ君をひとり家に残して旅立ってきた以上、早く帰りたい気持ちももちろんあるんだけれど
来てしまえば、帰るのが惜しくなるような、もう少しここにいたいなと思わせてくれるような空気が、島にはあります。
タミオ君は一人暮らしを頑張っている様子。
昨日も残り野菜をぶちこんで煮込んだお雑煮風のお餅を食べていた。賞味期限当日の豆腐を生で食べても大丈夫かどうかを聞かれたりした。
これから洗濯も回す!って嬉しそうに言っている。文字だからわからないけど多分楽しそう。
これが1か月続くとなればまた話は変わるかもしれないけど、とりあえずの一週間、しかも明日と明後日は奇跡の土日休みを獲得したそうだ。
私が家にいる時に土日休みなら最高なのに。
タイミングは悪いけど二連休も珍しいから、満喫してもらわないとね!
そして土曜日は朝から動けるように今日やっちゃうんだと言って、洗濯機の動きを逐一報告してくれた。かわいいやつだ。私が途中で寝ちゃった。
一人暮らしを満喫しながらも
恋しい気持ちはちゃんと送ってくれる。
私もタミオ君も、久々の『あいしてるぞ』攻撃を毎日送り合っている。
こうして幸せに暮らしていることを
娘さんにもやっぱり伝えたかったな。
ミッションコンプリートまで、あと4日。
まずは目の前のことを、確実にこなす ぞ。