強制プロポーズと両家顔合わせの話~前編~
逆プロポーズを天使の微笑みでサラリと交わされたあの日から2ヶ月、ちょっと順序はおかしくなったものの(?)ちゃんとプロポーズをしてくれた話をします。
3連休の最終日、昨日は恋人がお休みだったので
兼ねてから計画していた両家の親 初対面を果たしました。
例の如く急に決まった休みだったにもかかわらず、遂行できたのは有り難いの極み。
ふたりのおうちにご招待するという流れで実施したこともあり、正式な顔合わせというよりはフランクな感じではあった。とは言え、結局のところどういうつもりで親同士を会わせるのか、親もどういうつもりでここに来たらいいのかある程度の目安は必要じゃなかろうか という話をタミオ君には吹っかけていた。
本人に結婚の意志があることはわかっていたけれど、具体的な予定を煮詰めるほど話が進むことはなかったし、私もそんな中途半端な状況を逐一親に報告はしていない。実家に帰る度に親から聞かれる と言うタミオ君はその意思を親御さんには伝えているようだった。
私は事あるごとにタミオ君の実家にお邪魔していて、お部屋を探していることやお部屋が決まって引っ越しを終えた際に【これから一緒に暮らしますのでよろしくお願いします】のご挨拶にもお伺いしていたけれど、二人の家が私の実家に近いこともあり、タミオ君はよく我が実家や妹の家に出入りしていたため、今まで私の親には改まって正式に挨拶する機会が作れなかった。
『御子ちゃんのお母さんにもちゃんと挨拶に行かないとね』なんてポロッと口にすることはあった。本音を言えばタミオ君にはちゃんとケジメをつけて欲しいとどこかで期待をしていたものの 私自身もなあなあにしてしまっていた部分があったと思う。
実際のところ、そんな状況に少なからず疑問を感じていたのは母も同じだった。
それでも前日まで我慢してくれていた辺り、私もだいぶ信用してもらえるようになったのかもしれない。申し訳ない気持ちとありがたい気持ちで胸がいっぱいだ。
顔合わせの前日、いつもより少し早めに仕事が終わって帰宅していたタミオ君と、二人ともご飯やお風呂を済ませた21時頃。『明日お父さんお母さんに会う前に、タミオ君と話をさせて欲しい。』と母から電話があり、颯爽と自転車でやってきた母と小一時間家で話をした。
結婚の意志があるのかどうか、明日はどんなテイで来たらいいのか、認識の齟齬や失礼があってはいけないし、娘(私)から状況報告はあってもタミオ君からちゃんと話をしてもらったことがないから今の気持ちを聞きたい というものだった。
私自身もモヤッとしており、タミオ君に問い質しても毎度フワッと結論が出ずに終わるだけ。
いずれ結婚する気はある、ちゃんと話に行かなきゃいけないとは思っている、という意思は聞けても、具体的に日程を決めたり結論を出すには至っていない。
結婚を急いでいるわけではないとは言えど、お互いの両親を会わせるという状況は 要するにそういうことだ。明確な予定は決められていなくても、明確な気持ちを伝えることは大事だと思っている。
母に対して何の反論もなかったので、いつものように寝かかっているタミオ君を起こして母を呼んだ。
最初は和やかに穏やかに疑問をぶつけていた母も
『一応40年間大事にしてきたわけで、猫の子を育てているわけじゃないし、嫁に出すのが寂しくないわけでもない。ちゃんとタミオ君の気持ちを聞かせてもらうことで、自分自身がケジメをつけたい。』
と言って泣いた。
もちろん私も泣いた。
タミオ君は言った。
『二人で暮らせるようになって、楽しくて嬉しくて浮かれてました。幸せで満足してしまっていました。』
正直すぎて笑った。
そういう意味では、私は同棲1か月の今なんてそりゃ楽しいに決まっていると思っている。これから楽しくなくなるというわけではなくて、今は楽しいに決まっている時期だと思ってる。
形は変わるものだし、形が変わっても一緒にいたいと思えればそれでいいわけだし、楽しく暮らせると思っているからこそ一緒になるって決めたんだと伝えた。
『ちゃんとプロポーズされてないんでしょ、それなら今ここでしてもらいな、私が承認になってあげるから。』
と言う母の前で
え!されてないけど!今!? と思いながらも(口にも出したけど)待っていると
口を開いたタミオ君から出た言葉は
『御子さんと結婚したいと思っております。お許し頂けますか。』
私を飛び越えて母に言った。
え、そっち先?
とツッコむ間もなく、母もだいぶ食い気味に「お許し」あたりで『いいよいいよ』と言った。
本人を差し置いて許可が出た。
いや、断るつもりはないけども。
私の恋愛や結婚において最大の難関は【母】だったので、もう何の問題もないけども。
THE 置いてけぼり。
『じゃ、そのつもりで明日は来るからね。』と言って、母は帰っていった。
母が帰った後、二人揃ってコタツに横たわり
満足感のような、罪悪感のような、なんだか複雑な気持ちで呆然とした。
タミオ君は『2023年いきなり失敗しちゃったな』と、男としてのケジメをつけられていなかった自分を恥じていた。
そして『許してもらえて安心したけど、こんなはずじゃなかった。申し訳ない。』と、本当は指輪の箱をパカッと開いたり、ちょっと贅沢なデートの際に なんて考えていたプランを発表してくれた。
実際は穴の開いたステテコ姿で
当事者の私を飛び越えて親に結婚の許可を得てしまい『順番めちゃくちゃになっちゃったね』と言った。
私はそれでも充分だし
指輪なんて今してるペアリングを左に付け替えればいいだけで
ふたりのおうちで二人で幸せに暮らすこの今が既にとても贅沢だ と伝えた。
少し間を空けて、コタツから出てその場で正座に直したタミオ君に
正面切って『結婚、しましょう。』と 言われた。
私も握手を求めて『よろしくお願いします。』と答えると
タミオ君は私が差し出した手を握り返しながらも、母並みに食い気味で『大丈夫?本当にイイの?今は楽しいに決まってるんでしょ?元々同棲はお試し期間だったじゃん?』と聞かれた。
温度差を気にしている。
『もし楽しくないことが出てきたとしても、ちゃんと伝えたり話し合ったり歩み寄ったりできると思ってる。最初に言ったけど、お試しなんて一緒に住む前に済んでるし、私はもういつでもいいと思ってるし、急いでもいないけど結婚したくない理由もないよ。』
正式に一緒に暮らすことで、気に入らない点や不安が出てくるのではないかと心配しているのは今も変わらないようだった。そんなものお互い様だし、自分がそう思われる可能性を考える以上、私にもそういう点が出てくることを恐れているようにも思える。
恐れたって仕方ないし、そうなった時に話し合える関係性を築いておくしかない。覚悟や、覚悟、覚悟を決めんかいタミオ。
こうして正式に?婚約を交わした我々ですが
両親顔合わせを終えた今も、婚姻届けは引き出しに入ったままである。
つづく
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