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晴れて夫婦となれた暁には

ショッキングな事件があったあの日

恋人タミオ君とそのことについて文字で語り合いながら
給料が少なくてもいいから
政治家とSPには転向しないでね、と伝えた。

今でも毎日ケガしないで帰ってこれるよう願ってやまないのに。


そして、生きているタミオ君に無性に触れたくなった。
私がアキエさんに感情移入しすぎていた結末故。

その夜、一緒に朝を迎えるためだけに来てくれたタミオ君と、ただ隣で、とにかく体温を感じながら、よく寝た。


私が悲しいニュースに魂を吸い込まれて自分のメンタルに傷が付くタイプの人間だと把握してくれているので

朝方、正確な時間を知るためだけに流れているテレビでたまたま逃れられなかったニュースを一緒に見ることはあっても
意図的に思い出したりぶり返したりしてその件を話すことはなくなった。


話題には上がらずとも
脳みそや心に残っているモヤモヤや得体のしれない悲しみが思いのほか染み付いてしまっていて

床に転がって寝ているタミオ君がちゃんと息をしているか時々確認してみたり

朝になるまでの間、何度となく目覚める度に
隣にいるタミオ君の姿を見て安心するなどしている。



大切な人が、自分のすぐそばで、生きていてくれる 
という何気ない日常を
こんなに愛おしく思えるのは

それを失った時のことを
リアルに妄想する機会ができたから。


きっとこのニュースに少なからず胸を痛めて悲しい気持ちに苛まれている人の多くは、ある日突然大切な人が予期せぬ事態で消え失せることへの恐怖心と共存しているんではなかろうか。

※私はそうです。


いつもどんな時も一緒にいたい!っていうようなキャピキャピした恋愛感情とは少し違う、この先の人生において  残り時間を少しでも大切に一緒に過ごしたいという気持ちは間違いなく増強した。


本当は誰かの不幸に触れずとも、ありがたみに気付ける規定値を保持していたいけど。なかなか難しいよね、人間ってやつは
ないものねだりな生き物だから。


恋人タミオ君の中でも
一緒に過ごす時間を大切にしたいと思う気持ちだったり、少しでも長く一緒にいたいという思いを膨らませてくれた模様。

加えて、この先1ヵ月にわたる夜勤の予定が突然舞い込んだことにより 逢瀬プランが狂い散らかして予想できなくなったため

猶更

早く一緒に暮らしたい

と思ってくれたようだった。

直接的にそのような希望を言葉にされたことは
実はほとんどなかったので

そんな事を言われて
とても嬉しかった。

ホッとした という表現が合ってるのかな。



現実は甘くない。

いや、自分で甘さ控えめにしすぎているだけで
もう少し勢いがあれば。

ちょっとぐらい遠くても
実家から離れても職場から離れても
大丈夫だって言いきっちゃえば決まるんだろうな、すぐに。


現実は甘くないけど、現状に甘えている二人。


今不自由なく会えることも、十分幸せだと感じているからこその 惰性なのかな。



********



家族ぐるみで仲良くしている幼馴染が、去年結婚した。

仕事でずっと東京にいて
籍を入れてからもなかなか一緒に暮らせなかったり
半年以上経った今年に入ってから、やっと両家の顔合わせも実現したらしい。

今年の年末に結婚式をしようと思っている と言って
昨日電話をくれた。



感染対策についての考え方は人それぞれだし

結婚式に参加することも、東京に行くことも
賛否両論だからこそ

まずは招待状を送っていいかどうかの打診を
そのあたりのヒアリングも兼ねて。


文字では伝わらない熱量があるし、少しでもお互いの心情を伝える・汲み取れるように電話で連絡していると言っていた。

一人一人に連絡を取るのは大変だけど、今のご時世この誠意は必要で
このご時世だからこそ
直接会える貴重な機会としても考えたいと言った。



私の考えも正直に述べて、仕事上致し方なくお断りせざるを得ない状況になる可能性も説明しつつ、招待状を送ってもらうことにした。


9月まで検討して、執行が決まったら招待状を作って
実際の式は12月に東京で行う予定。

人脈も交流も果てしなく広いはずの二人が
ほぼ親族しか呼ばないようなこじんまりとした結婚式に私を呼んでくれた。


本当は余計な事考えずに参加したい。

今から2カ月で事態は変わるだろうし
さらにそこから3カ月でまた変わると思う。


その時に二人がどんな決断をしようとも、そこに私が足を運べない結果になろうとも、お祝いする気持ちは変わらないと伝えておいた。



こんなご時世だからこそ
会えない理由が多すぎるからこそ
二人は結婚を決めたそうだ。

結婚することになった
と、最初に電話をくれた幼馴染は
とても嬉しそうに
それでいて少し寂しそうだったのを覚えてる。


私と恋人の行く末も案じてくれながら
何度もお礼を言い合って電話を切った。


とんでもない時代になってしまったよねぇ本当に。


そりゃ確かに考え方は人それぞれだし
何においても賛否両論あるのは仕方ないけど

せめて人が幸せになることを
単純に喜べる世界がいいよね。



一緒に暮らしていない恋人に会うことも
お互いの家族に会うことも

結婚式を行うことも
呼ばれた結婚式に出向くことも
マスクを外して写真を撮ることも
その幸せをみんなに報告することも


他人の目を気にして
他人に気を使って

できなくなったり
しないことを選んだり
すべきじゃないと思ってしまったり


悲しいの極み。

みんなが自分の大切な人と自分を守るためだけに
自分にとっての正解を決められたらいいのにね。



ついでに私は、実は結婚式を挙げることに全く興味がないんですが

そのことを隠して、幼馴染との会話を隣で聞いていたタミオ君にも勢いに任せて確認したところ

『結婚式には特別興味も憧れもない』という共通意見の発覚となりました。万歳\(^o^)/

我々は、本当に夫婦となることができた暁には
結婚式を挙げずに記念写真だけ撮って
泊まりで旅行に行くことにした。

お互い希望休を出して仕事を休んで
1泊でもいいから遠くにお出かけする。

昨日決めた。


いつか叶えばいい、夢の話でした。


年末までに少しでもこのパンデミックが落ち着いて

幼馴染と奥様が
本人達も参列者もみんな元気で安全に結婚式が挙げられて

必要以上に気負いすることなく
幸せ噛みしめられますように。



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