ミツカン父子引離し事件 イギリスの家族法制度 子の最善の利益とは
先日対ミツカン裁判の第一回口頭弁論が東京地裁で開かれ、その後中埜大輔氏と代理人の河合弘之弁護士が記者会見を行いました。この裁判は原告中埜大輔氏がミツカンと創業家によって組織ぐるみで息子さんと引き離されているとして、訴訟をしているものとなります。
中埜大輔氏は、被告が行っている親子引離しは国際法違反の児童虐待であると強く訴えています。日本は1994年に子どもの権利条約に批准をしています。この条約の第9条には“親子を引き離してはならない”と明記されています。条文には「締約国は、児童がその父母の意思に反してその父母から分離されないことを確保する」とあります。要するに、親子引離しは国際法違反の児童虐待であるからこれを行ってはならないと言う事です。
しかし中埜大輔氏は元義理の両親である、ミツカンの代表者である中埜和英会長と美和副会長により、息子さんと引き離されている状況です。
この会見の中で日本とイギリスの家族法制度の違いが浮き彫りになりました。中埜大輔氏は日本とイギリス(お子さんがイギリス在住)で面会交流調停を申し立てており、以下の内容で親子の交流が認められています。
日本
半年に1度、1時間、第三者の監視付きなら会える。
イギリス
年に7回以上宿泊を伴って会える、毎週末テレビ電話で話すことができる、誕生日・クリスマス・正月などのイベント時には連絡をとる事が出来、近くにいれば会える。学校のイベントには参加でき、手紙のやり取りなどもできる。
これは中埜大輔氏が日本にいて、イギリスに居る息子さんと交流する場合との事。イギリスの代理人には、もしイギリスに移住をした場合は以下の内容で親子の交流が出来ると言われたそうです。
隔週で週末宿泊で会える、息子さんの夏休みと冬休みの半分は一緒に過ごす事が出来る。何故ならば父親と過ごす時間は子どもにとっても権利であると話されていたそうです。
法務省が実施した24カ国調査にはイギリスの面会交流について以下のような記述があります。
面会交流についての取決め
面会交流は認められているが,判例上,親の権利ではなく,子の権利と
されている。両親は離婚後も親権を保持していることから,親の責務の一
環として,子と面会交流をすることになる。面会交流は,離婚の合意又は
裁判所による子に関する取決決定に従って行われることになる
面会交流の支援制度
面会交流の取決決定に従わないことは,法廷侮辱罪に該当し得
る
昨年の5月に中埜大輔氏がイベントでこのようにも話をされていました。
英国で面会交流の裁判をおこしました。息子は英国にいたので、英国の法律であれば、子どもの権利を守ってくれるのではないかと判断した故です
先ず英国では親子引き離しは犯罪です。そして全ての裁判所あるいは相手方とのやり取りの中心には“子どもの最善の利益”があります。子どもの最善の利益を無視した親が監護権を失うという事なので、お互いが子どもの最善の利益を意識した提案をするという形になります。
裁判官に嘘をつくと、或いは子どもの最善の利益を無視した行為をすると裁判官から軽蔑され、一筆書かされる。あなたがもし嘘をついた場合は法廷侮辱罪にあたります、裁判官から軽蔑される事に私は同意しますと書かされます。結果相手方は積極的に子どもの最善の利益に合意します。
日本の裁判所でも面会交流事件のリーフレットに以下のような言葉が書かれています。
“子どもがどちらの親からも愛されていることを実感し、それぞれの親と、温かく、安定した親子関係を築いていくことは、子どもの成長にとって大切なこと”“子どものことを第一に考えましょう”
しかし、書いている内容とはかけ離れた裁判実務と運用がされています。果たして本当の意味で子の最善の利益を叶えるために、どのような改善が必要なのか。考えさせられる記者会見でした。
先日読んだ本にこのような一文が記されていました。
子どもの本当の最善の利益は、子どもの利益だけを見ることからは出てこず、全ての人の利益が考えられたときのみ出てくる。子どもを、彼らの最善の利益だけを考えて育てれば、自分のことしか考えられない大人を作る。全ての人の利益が慎重に継続的に考慮されるときに、自身の最善の利益になると子どもが理解するよう育てる事が健康的だ。
よく使われる“子の最善の利益”。この言葉の本当の意味を、子どもが本当の意味で幸せになるために何が必要なのかを、もう一度しっかり考えたいですね。