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些細な日常が人生を作る:「記録する人」が作った文具ブランド OFFOFFONOFF(빵이문구)

最初のポスト「旅して、刺激受けて、その後どうする?―自己紹介に代えて」でも書いたけど、

人生の手綱を自分の手に戻すには」って、ここ数年のわたしのテーマのひとつ。

……って聞くと、たいそう大仰なことをしなくちゃいけないように見えるけど、

実は、今までの仕事や生活をやめてまったく別のことをする、とか、人が驚くような方向転換をする、とか、たくさんの努力の末勝ち取る、みたいなドラマティックで大きなものではなく、

日常のほんの些細なこと、
取るに足らない、人から見たらくだらないことなんだけど、なんとなく好きなことに対して、手を動かしてみる、

ぐらいのことだったりするんじゃないかな(※1)。
ていうか、まずはそうじゃないとハードル高すぎる。

'But near missed things'
by ADER ERROR

今回、今年に入ってからのソウル旅で、印象に残っているお店やブランドを振り返ってみた。

そしたら、わたしがそんなことに関心があるからなのか、
それらの共通点がどれも、

「些細で、取るに足らないけれど、
人生の手綱を自分の手に戻す手段や時間」

を提供しているところのような気がしたの。

5-6 年前に韓国で流行った
「小確幸=小さいけれど、確実に幸せなもの」
と通じるところがあるのかもしれない。

というわけで、これからそんなお店やブランドも、note に少しずつポストしていこうと思ってる。
「小確幸」と相性がよいのか、メディア的な流行りなのか、わたしの中のブームなのか、雑貨屋が多い。


さっそく、ひとつめの
「些細で、取るに足らないけれど、
人生の手綱を自分の手に戻す手段や時間」は

「記録する」

「記録する人」が作った「記録する人」のための文具ブランド OFFOFFONOFF(빵이문구)について。


SNS にあげていた日々の手描き記録が人気に

onemorebag より

OFFOFFONOFF(빵이문구)
※onemorebag 内

韓国語では "빵이" さんの 문구(文具)とあるとおり、イラストレーター?クリエイター?の 빵이 さん(以下、パンイさん(※2))がやっている文具ブランド。

もともとパンイさんは、日々の手描きの記録を SNS にアップしていて、その独特な文字とかわいいイラストで人気になったという。

その後、オリジナルのダイアリーやノートを作り、記録についての本『괜찮은 오늘을 기록하고 싶어서(良い今日を記録したくて)』も出版されたそうだ。

記録する人、パンイです。

『良い今日を記録したくて』を書き、『パンイ文具』を運営中です。 くねくねとした字を愛するためにダイアリーを作ることになりました。

さまざまな記録法を共有し、記録生活の楽しさを伝えます。 愛猫ダコを描きながら、一日一日を好みで満たしていこうと努力しています。
※papago 翻訳

onemorebook IG の自己紹介より

記録する人、パンイです」。

その自己紹介に偽りはなく、本当にパンイさんは「記録する」ことを愛している人なのだ。

丁寧な工夫がぎゅっと詰め込まれたポップアップ

既に人気の OFFOFFONOFF だけど、
わたしは名前も知らず、先月、ソウル・西村の人気雑貨セレクトショップ onemorebag に立ち寄ったところ、ちょうどポップアップショップをやっていて知ることができた。初のポップアップだったんだって。

見た瞬間、ワァかわいい、、、と。

ポップアップど真ん中にある大きい平台
パンイさん手描きのノートの中身の拡大版と商品がある

パンイさんが、日々試行錯誤の上編み出したテンプレ(かわいい!)がいっぱい詰まっているダイアリー、アイディアスケッチ用の白紙ノートなどメインの「記録文具」ほか、ハンコ、キーホルダー、バッグなどなど。

onemorebag より
onemorebag より

商品自体もかわいいのだけど、
なにより、ポップアップの空間自体がすごくよかった!

  • 目の前の壁一面と、真ん中にどんとある大きい平台に、パンイさん手描きのノートの中身が大きく描かれていて、一瞬でパンイさんの記録ワールドにはまる!

  • こまごまと書いてある文字とイラスト、ほんとにずっと見てても飽きないの

onemorebag IG より
  • ステッカーやテンプレ、西村他の手描きマップなど、無料配布がすごく多い。どれも、え、これ無料で持ち帰っていいんだ、と思うレベル。手を抜いてない。

無料配布されていたもののごく一部
お気に入りは西村の手描きマップ
  • パンイさんの作業スペースを再現した(と、あとで知った)デスク、壁にペタペタ貼られてる紙類たちとか、個人的にぐっときた。人の作業スペース見るのって楽しいよね。

  • で、来た人はこのデスクで、実際に書くこともできる。ワークショップもいろいろやっていたみたい。

onemorebag IG より
ゲストブックもかわいかった
  • ものすごくひそやかに、帰り道に聴いてね、っていうサマープレイリストがあった。こういう遊び心に弱い

onemorebag IG より

とにかく、小さい空間の中に、ただただ商品を綺麗にディスプレイするだけではなく

世界観を味わってもらおう!
楽しんで帰ってもらおう!!

という気持ち、丁寧な工夫があちこちに満ちていて、見ていてものすごく楽しかった。

帰国後に読んだ、パンイさんのブログ

帰国後、いいブランドを知ったな、note に書いておきたいな、って調べてみて、初めてパンイさんのことを知った。

で、彼女のブログを読んでみたんだけど(翻訳機とおして)

ブログの文章も、その中の写真もすごくよくて、誠実で、なんだかちょっと
感動してしまった。(特に、ポップアップ終了後に書かれたこのブログがとても好き)

ああ、やっぱり、こういう人がやっていたんだなって。

そして、あのポップアップは、

彼女が大好きな「記録すること」を体験してもらうこと
そして、その魅力が多くの人に伝わってくれますように

というパンイさんの情熱と意思がぱんぱんに詰まってて、
だから何も知らずに立ち寄っただけで、気持ちのよい気分になったのだと。

ポップアップスペースの斜面をすべて記録で埋めたいという欲がありました。
単にダイアリーや文具類を売る店ではなく、記録を経験できる空間になることを願う気持ちで長い間構想していました。
(中略)

onemorebag 代表との最初のミーティングでお話したこのポップアップの目標は
「記録の障壁を低くする」
でした。
この空間に来てくださった方々が「記録、本当にできそうだな」と思うように構成してみようというとても遠大な目標でした。
※papago 翻訳

パンイさんのブログより

(その願い、ちゃんと伝わりましたよ!と、心の中で思った)

なんの事前情報知らなくても(むしろ知らない方が?)、
言葉が自国語でなくても、「愛情」や「熱意」って、そこにいるとわかるんだよなー。なんて、「答え合わせ」をしたような気分。

わたしが感じた、あの空間に流れる世界観、それを成立させる行き渡った丁寧さや誠実さは、パンイさんが最初から意図していたことだったのだ。

「人生を成し遂げるのは大きな事件や逆境ではなく、些細な日常」

<パンイ文具>という名前でポップアップストアを開きましたが、
結局は、わたしの記録を集めてまた別の記録を作り、
わたしの記録で人々に会うことになったのです。
本当に、わたしはこの行為を愛するしかありません。

冒頭で話したように、結局、人生を成し遂げるのは大きな事件や逆境ではなく、些細な日常です。

あまりにも日常的で、実はとても単純な何かがわたしの人生をなし、わたしの人生を導きます。
夜な夜なの記録が、
ある日飛び込んできたダコとの毎日が、
いつもと変わらない友達との会話が、です。

※papago 翻訳

パンイさんのブログより

ポップアップ終了後の長文ブログの最後に書かれている文章。

偶然にも、このポストの冒頭で書いたことと重なるようなことが書いてあるんだけど…

これに限らず、彼女の文章を読むと、
パンイさんが「些細な日常」――名前すらつけずに流していた感情や、すぐに忘れ去ってしまうような小さな喜び、挫折とか――にすごく注目して、大事にしていることがわかる。

だからこそ、彼女にとって「日常を記録し続けること」と、それを振り返ることは重要なことで、
この小さなブランドをやることは、商品を売る以上の何かなんだろうな
と想像する。

そしておそらく、
パンイさんにとっての「記録すること」とは
勝手にわたしのテーマに重ね合わせてみると、「人生の手綱を自分の手に戻す手段」なんじゃないかな、と。


美術館以外のソウルおすすめスポットを note で紹介しよう!と思って、最初にピックアップしたのが今はもう終わってるポップアップストアってどうよ、と思ったんだけど、印象深かったのでやっぱり初回に書いておくことにした。長くなっちゃったけど、満足!

今回ポップアップショップを実施したセレクトショップ onemorebag は、最近東京でポップアップをやっていたので、
早晩、OFFOFFONOFF、日本で買える日もあるんじゃないかなー(もうどこかで取り扱ってたらごめんなさい)

※パンイさんの linktree
https://linktr.ee/offoffonoff


※1:
ちなみにわたしは、昔はこんなこと、絶対に口にする人間じゃなかった。

ほっこり禁止。小確幸なんて言ってないで、大確幸めざせよ!!的な(笑)。ついでに言えば、”雑貨”とかとは縁遠い(幼少期は大好きだったんだけど)デジタル一筋人間でもあった。

そこには、わたし自身の経験や成長(歳とった)もあると思うけど、本当に時代の雰囲気が変わったんだと思う。

※2:
「빵(パン)+이」で、意味的には「パン(bread)さん」だと思うけど、読み方でパンイさんにしました。

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