アルフィノ「サンクレッドの体臭が気になるんだが」ヤ・シュトラ「えっ」

※サンクレッド推しの方、本当にごめんなさい!
※時系列は蒼天編でアリゼーが暁に合流した辺り

アルフィノ「サンクレッドと行動を共にすると、独特な匂いがするというか……。気を遣わずに言えば、ずばりクサいのだ」

ヤ・シュトラ「あっ……(察し)」

アルフィノ「ヤシュトラにもあの匂いが分かるかい?」

ヤ・シュトラ「アルフィノ様……それは……その……」

アルフィノ「もったいぶらず教えて欲しいのだがね」

ヤ・シュトラ「ハァ……、あの匂いは加齢臭というものよ」

アルフィノ「カレイシュー?幻術か何かかい?」

ヤ・シュトラ「違うわ。いい歳になった男性が発する独特の香り……遥か昔は異性に対するアピールとして機能していたようね。それこそアントが発するフェロモンのような役割があったそうよ。現代では不快なだけだけどね」

アルフィノ「そうか!素晴らしい知見だよヤシュトラ!私の学部ではそんなこと習わなかったからね」

ヤ・シュトラ「魔法大学で加齢臭の講義してたら世も末だと思うけど」

アルフィノ「それにしても、カレイシューか。彼は隠密行動に自信があるような素振りをしていたが、あの匂いでは、敵にバレてしまうのではないか?」

ヤ・シュトラ「少なくとも私はサンクレッドが半径50m以内にいれば匂いで分かるわよ」

アルフィノ「だろうね。本人に伝えて改善させた方が……」

ヤ・シュトラ「ダメよ!あんな死臭のような鼻の曲がるような!!……えっと、匂いを撒き散らしてると、何より自分が加齢臭を発する歳になってしまったと知ったら、サンクレッドの精神が壊れてしまうわ!その前に私の嗅覚が壊れそうだけど!」

アルフィノ「よく分からないが、慎重に扱うべき件ということかな。……キミは私達よりも鼻が利くようだね?種族の差ということか」

ヤ・シュトラ「誇り高きヤ族のミコッテ、なんて言ったりもしたけれど、正直サンクレッドと行動してるときはこの種族に産まれた運命を呪うわ。エンシェントテレポで巻き込むの、ちょっと躊躇したくらいよ」

アルフィノ「ミコッテの視点だとそんなにキツいのか……これは問題だぞ」


アルフィノ「……という訳なんだ。何とかならないだろうか?」

タタル「あわわ……アルフィノ様……ついに触れちゃいけない領域に触れてしまったのでっす……」

アルフィノ「ヤシュトラもそうだったが、そこまで慎重になる必要があるのかい?」

タタル「当たり前でっす!もしサンクレッドさんに『臭いぞ!』なんて言おうものならハラスメント行為に該当して私達は即刻モルディオン監獄送りでっす!」

アルフィノ「そ、そんなに恐ろしい物なんだね」

タタル「コンプライアンスは祝賀会より恐ろしいのでっす!」

アルフィノ「……それで、タタルなら何か解決策を思いつかないかと思ってね。こうして声をかけたわけなのだが」

タタル「う~~~~ん、難しいでっすね……。別の香りで上書きしちゃう……くらいしか思いつかないでっす」

アルフィノ「なるほど!それは良いアイデアだよタタル!香水を作ってサンクレッドに使わせればいい!」

タタル「香水を作るならアレとソレとコレと……ギャザラーをそこそこ鍛えないと入手できない素材が必要でっす!」

アルフィノ「まいったぞ……。私にできるクラスは巴術士しか……!ギャザラーなんてロクにレベル上げしていない!クリスタルブレイブと暁の管理監督で時間が無かったし、蒼天編に入ってからは余計忙しくて……!」

タタル「じゃあヒカセンさんにパシらせるでっす」

ヒカセン「えっ」

アルフィノ「頼むよ、私とキミの仲だろう」

ヒカセン「あっはい」


ヒカセン「素材取って来た」

タタル「そしたらこの素材を錬金術で香水にするでっす」

アルフィノ「私は巴術士しかry

タタル「ヒカセンさんお願いしまっす」

ヒカセン「こんな役ばっかりだな俺」ガチャガチャ シュウウウウ

アルフィノ「おお……すでにイイ香りが漂っているね!」

タタル「爽やかで落ち着く香りでっす!」

ヒカセン「できた」キラーン

アルフィノ「よし!暁の皆に集まってもらおう!」

タタル「はいでっす!」

ヒカセン(お礼くらい言えよ)


サンクレッド「……それで?いきなり病院に呼び出されたと思ったら……何なんだこの集まりは。アリゼーのお見舞い……って空気ではなさそうだが?」

タタル「いつも頑張ってくれているサンクレッドさんに、皆で感謝を伝える会なのでっす!」

サンクレッド「はぁ?なんだっていきなり……?」

ヤ・シュトラ「ふふ、驚くのも無理ないだろうけど。他人の好意は素直に受け取るものよ」

アリゼー「そーよそーよ、聞いた限りだと祝賀会以降はサンクレッドが一番苦労してそうだし、アタシも助けられたわけだし。貰えるもんは貰っておきなさいって」

アルフィノ「実際、ヤミセンとの戦いでは何度もキミに助けられてきた。この場で改めてお礼を言いたいんだよ」

ウリエンジェ「その通りです。私は人に感情を伝えるのが酷く苦手ですが……。それでもこの気持ちに偽りはありません。貴方は危険を冒してでも我々の命だけでなく世界をも守らんと……」

サンクレッド「おいおい、その辺にしとけよ。分かったから」

ウリエンジェ「失礼致しました」

ガチャ

アイメリク「エスティニアン、見舞いに来た……ウッ!?し、失礼する!!」バタン!!!

サンクレッド「何なんだアイツは……」

アルフィノ(アイメリク殿……病室を間違えたのか……)

タタル(匂いにビビって即退散した感じでっす、あぶねーでっす)

アリゼー「アルフィノ、あんたから渡したいものがあったんじゃなくて?」

ヤ・シュトラ「いよいよ本題ね」

アルフィノ「サンクレッド、キミにこれをプレゼントするよ。私とタタルで作ったんだ」

ヒカセン「」

サンクレッド「これは……なんだ。香水のようだが。何故香水なんだ?」

アルフィノ「……!!そ、それは……えーと……!!」

ヤ・シュトラ「あら、女の子を釣るのに便利なアイテムだと思うけど?」

アリゼー(ヤシュトラのフォロー気持ち良すぎでしょ)

サンクレッド「やめてくれ。俺はもう、そういうのは卒業したんだ」

アルフィノ「で、では……受け取って貰えないのだろうか」シュン…

サンクレッド「そんな顔するなよ。女漁りを卒業したってだけで、この香水は大人の嗜みとして存分に使わせてもらうさ。礼をいうよ。この場を設けてくれたみんなにもな!」

ヤ・シュトラ「ほんと、蒼天編に入ってから性格変わったわよね、貴方」

ウリエンジェ「フフフ……行幸と言う他にありませんね。これであの熾烈極まりない悪臭から解放され、後に黄金編でほぼ全編に渡って彼とタッグで行動することになる私にとってはまさに……」

アリゼー「ウリエンジェちょっと黙っててくれる??」

ウリエンジェ「失礼致しました」

アルフィノ「早速だが使ってもらってもいいだろうか?」

サンクレッド「ああ、どうすればいいんだ?」

タタル「脇とか首筋とかにふりかけるでっす」

サンクレッド「こうか」シュッシュッ

アリゼー(ちゃんと体臭をカバーできるかしら?)ヒソヒソ

アルフィノ(大丈夫さ。あんなにイイ香りだったのだから)ヒソヒソ

サンクレッド「……ど、どうだ?」ワクワク

ヤ・シュトラ「ア゜ッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

アルフィノ「……!!!!!」

タタル「ウッ……!!!!!」

アリゼー「こ、これは………」

ウリエンジェ「オエェ!!」ビチャビチャ

サンクレッド「おい!どうしたお前ら!?」

アルフィノ(以前より匂いが酷くなっていないか!?)ヒソヒソ

アリゼー(香水と体臭が混じって絶望的な匂いになっているわ!!)ヒソヒソ

タタル(こんな結果になるなんて……盲点でっした!)ヒソヒソ

ウリエンジェ(うっぷ……さすがの私もノーコメントになるレベルです)ヒソヒソ

アリゼー「あ"あ"っ!?ヤシュトラが気絶してるっ!!」

アルフィノ「なんだって!?」

ヤ・シュトラ「」ピクピク

サンクレッド「おい、いったい何がどうなってる!!」

タタル「わ、わたしは何も知らないでっす!!」

ヒカセン「俺も知らねーよ!!」

ウリエンジェ(これはいけませんね、こっそり逃げておきましょう)スタコラサッサ

ガチャ

エスティニアン「ハァ……ハァ……おい!お前ら!」

アルフィノ「エスティニアン殿!?竜騎士の兜をかぶって……どうなされたのです!?」

エスティニアン「クサいからだ!!兜でなんとか防いでいるんだよ!!」

エスティニアン「そんな事よりも、いい加減にしろ!病院内で騒ぐな!それに……腐ったモルボルのような匂いが病院中に充満しているぞ!先ほどアイメリクが悪臭に耐えきれず倒れてしまったのだ!」

タタル(ヤバいヤバいヤバいヤバいでっす)

エスティニアン「匂いの主はお前だろう!!」ビシッ!!

サンクレッド「待て!これは香水だ!何も悪臭なんてことは……!」

アルフィノ「エスティニアン殿!落ち着いてくれ!」

アリゼー「ちょっとちょっと!!」

エスティニアン「全く、加齢臭を隠す為に香水を振るなど短絡的過ぎるとは思わなかったのか!!他の患者さんの迷惑にもなっているだろうが!!」

サンクレッド「えっ……加齢臭……?俺が……!?」

アルフィノ「」

アリゼー「」

ヒカセン(俺の頑張りは何だったんだ……)

タタル(おわった……でっす)


あれから、ヤシュトラが目覚めることは無かった。

サンクレッドも精神を病み、砂の家に引き籠るようになってしまった。

私はと言うと、タタルやヒカセンと3人で、石の家で自堕落な日々を送り続けている。アリゼーは未だ入院中だし、ウリエンジェは行方不明になってしまったよ。

結局、再起の目途が立った所で暁の血盟は解散寸前に逆戻りだ。

何が間違っていたのだろうか。私はただ、皆の為を思って……。

クリスタルブレイブ、ヤシュトラとウリエンジェにサンクレッドも失って……、もはや私にいったい何が残っているというのだ……!!




???「それで、アルフィノ殿」

???「あなたはこのまま、折れた『剣』になるおつもりか?」

???「自分には、もう何も残っていないと……?」

???「いいや、貴方にはまだ仲間がいるではないか!共に歩むことができる、とびきりイイ仲間が!」

オルシュファン「フフフ、我が友がこうも困り顔でいると……星海から応援せずにいられようか!」

オルシュファン「イイかな、アルフィノ殿。サンクレッド殿が発する加齢臭は俗に『ミドル脂臭』と呼ばれるもので、30代前後の男性に多い加齢臭なのだ。40~50代で発症する物とはまた違ったものだぞ。ミドル脂臭の原因はジアセチルという成分だ。これは質の悪い汗が皮膚の菌と反応することで発生する成分だな」

オルシュファン「ミドル脂臭は主に頭部~首筋にかけて発せられる。つまり重点的に頭部及び首を清潔に保つことが大切になるのだ。だからと言ってゴシゴシと強引に洗うと逆効果だぞ。優しく洗うように気を付けるがイイ!適度に運動してゆっくりと風呂に浸かるのも効果的だ!」

オルシュファン「食生活も重要だな。脂っこいものの摂り過ぎは加齢臭を加速させるぞ!1日3食、バランス良く食べて規則正しく生活することが加齢臭を抑える最大の要点なのだ!」

オルシュファン「さあ、アルフィノ殿!サンクレッド殿にこれらの体臭ケアを伝えて、もう一度踏み出すがイイ!貴方には、貴方にはヒカセンという素晴らしい友が居るではないか……!私も星海からいつまでも貴方達を見守っていよう!」


アルフィノ「……ハッ!?」

アルフィノ「夢か……。オルシュファン卿……」

タタル「アルフィノ様……こんな状況でも国家反逆罪で指名手配されてた時よりはマシでっす。もう一度頑張って暁を立て直すでっす!」

アルフィノ「そう、そうだな。また元気づけられてしまった。全く、オルシュファン卿にもタタルにも頭が上がらない。ああ、そうだ!もう一度、何度だって立ち上がるだけだ!」

ヒカセン「あの、アルフィノくん」

アルフィノ「ああ、ヒカセンか。どうしたんだい」

ヒカセン「これ」スッ

アルフィノ「……封筒?何だい、これは」

ヒカセン「辞表」

アルフィノ「」

タタル「」

END

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