今年の言葉は「ボーダレス」。例えばボンボンショコラクオリティのパンオショコラ
今年のパンを一言でいうと「ボーダレス」
年末なので、ベストパン!といきたいところですが、今年もAll Aboutの読者が選ぶベストパンの投票はありません。
代わりに、今年、私が出会った素晴らしいパンや職人さんを一言で言い表してみます。
それは「ボーダレス」です。
国や職業のあいだを自由に行き来して生まれる、something good(何かいいもの)。
最近の取材では、青山通りの両側に長蛇の列をつくる「amamdacotan」および「I’m donut? 」の平子良太さんの視点にそれを感じましたし、料理人、菓子職人、パン職人やバリスタが肩を並べて同じ場所で働き、オリジナル商品をつくる「Dean & Deluca」にもそれを見ました。素晴らしいパネットーネを焼く「マンダリン オリエンタル東京」の中村友彦さんもそうでした。
そこには国籍に縛られない自由さと柔軟さ、パンだけではなく料理や菓子とボーダレスに繋がっている発想、食のプロならではの経験によるバランス感がありました。そんな今の時代の「ボーダレス」の感覚にこれからは注目していきたいと思います。
BLUE POPPY Bakeryのパンオショコラ
ニューヨークから帰国した山口哲也さんがこの春、二子玉川にオープンした「BLUE POPPY Bakery」のコンセプトは「ブレッドバザール」。彼が5年間暮らしたニューヨークは世界中から食材やスパイスの集まってくる街。イタリアやユダヤの文化にも触れ、中東の賑やかで雑多な市場の雰囲気も感じたといいます。そんな場所をイメージして開いた店には、国籍にとらわれないパンが並びます。甘い系も、たとえばカヌレとアメリカンタイプのチョコチップクッキーが同じ棚に並んでいるのも今様と言えるでしょう。
そしてこのパンオショコラ。世の中にはこんなにおいしいチョコレートがたくさんあるんだから、使わない手はない。長年、一流レストランの厨房でパティシエと肩を並べて仕事をしてきた山口さんならではのひらめきがここにあります。
BLUE POPPY Bakeryに入るとすぐ、そこに並ぶ2種類(あるいはプラスもう数種類)のパンオショコラに気がつくでしょう。見た目は同じ。でもショコラが日替わりで何種類か選べるのです。
カカオ35% 、ビスケット風味の「DULCEY」
カカオ36%、ミルクをキャラメリゼした甘さ控えめのミルクチョコレート「CALAMELIA」
カカオ56%、ナッツの香ばしさの「CARAQUE」
カカオ61%、正統派の「EXTRA BITTER」
カカオ62%、甘酸っぱい黄色いフルーツの風味「MACAE」
個人的に、これまでこんなにパンオショコラがおもしろいと思ったことはなかった。折り込み生地のおいしさもさることながら、こんなにパンオショコラのおいしさを感じたことも、注目したこともなかったです。
BLUE POPPY Bakeryの入口の額の中にある文言に「guilty pleasures」と書かれてありますが、夜、まさにそんな罪な歓びを感じながらこれを食べていて、ふと、Facebookの過去の同じ日の投稿を眺めたら、ちょうど10年前の同じ日の夜にも偶然、山口さんのロブション時代のりんごのデニッシュを、同じような気持ちで食べていました。What a coincidence!!
ロブション時代とはまた違い、より自由になった山口哲也さんの新しいパンの世界、これからも楽しみです。
サポートしていただいたら、noteに書く記事の取材経費にしたいと思います。よろしくお願いいたします。