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一見無地

February 7, 2019

「江戸小紋はいいわよ。そのうちあたしのを着てね、いまにお迎えがくるから」と大正生まれの伯母が、鼻にしわをよせて笑ったときはまだ「江戸小紋って?」と聞き返していたのだった。それがいま、こんなに好きになるなんて。

単色で、一見無地に見える江戸小紋は、近くで見ると繊細な文様が型染めされている。江戸小紋のほかには、柄はないが光の加減でうっすらと地紋が浮きたつ無地も好きだ。

わたしの着方は通常、帯まわりの色をあわせても、全部でたいてい三色ほどにおさえる。アクセサリーの類はつけない。きものには、地味に抑制しているようでいて、じつはものすごく自由で深い、遊びの世界があることを知った。

大好きだった伯母が箪笥に遺したきものは、色褪せて風化してしまったみたいに見えた。整理をかさねたあとで、意外に少なかった。しかもそれらも、ある時点で手入れがされなくなってしまったからだろう、色やけやしみや糸の経年劣化はなはだしく、修復できない、またはしないと着ることができないものが多かったのだが、わたしは確かに、伯母によってきものの楽しみを、江戸小紋などのよさを知った。知ることができて、よかった。

※写真は無地のお召と、木賊の江戸小紋の道中着。

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