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松庵文庫

February 1, 2019

何年か前、犬の散歩中にとても魅惑的な古い家を見つけた。魅惑的、と思った一番大きな理由は、表通りに面した窓から、家の中を通過した向こう側にも窓があって、裏庭が見えたことだ。

ひとは住んでいないようなのに、ようこそ、と招き寄せているような空気の流れを感じて、そっと覗いてみたりして、ここは何なのだろう?と散歩のたびに思っていたのだった。

裏庭には樹齢百年にもなるツツジの木があり、季節になると、通りから家を通過した向こうに、ピンクの炎のようなツツジが映える。

その家はやがて松庵文庫として一般に開かれた。おいしいコーヒーやお菓子、料理を楽しめるカフェと、レンタルスペースとして機能し、手工芸品や本の販売もある。

気に入って通っていた(けれど閉じていた)場所が開かれたことで、わたしはよろこんで中に入った。ひろい玄関で靴を脱いで上がる。家の外側から眺めるのと内側から眺めるのとでは、違った風景が楽しめる。家は古びているけれど、お客たちを迎えいれることで、息をしている気配がある。

この居心地のいい場所に、『BAKERS おいしいパンの向こう側』と『月の本棚』を置いていただいている。わたしには、夢のような風景だ。


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