そこにロマンはあるんかぁ?エンジニア/回路設計者の矜持、プライド
前回の記事をお読みくださった皆様、ありがとうございます!
さて今回はエンジニア、回路設計者/メーカーとしてのロマンや矜持、憂うべき日本のエフェクター事情についてお話ししたいと思います。
前回は僕がエフェクターメーカーを始めたきっかけについてお話ししましたが、その中に”日本のエフェクターメーカーには有名既製品のコピー品が多いと思われる”ということについて少し触れたと思います。
僕は正直、そういうメーカーは好きではありません。
しかし、一方でそういうメーカーが存在していても良いというのは認めています。
要は需要と供給の問題で、ネットを見てますとコピー品(クローン)に強い興味を持っている方や、それを値段に関わらず購入する人、購入したがっている人が多くいらっしゃるので、そこにコピー品の供給者がいればビジネスは成立します。
もちろん、コピー元が特許で保護された権利を持つ技術を使っていたら話は別で、コピーは違法になりますが、特許がなければぶっちゃけ丸コピーも許されるのです。
コピーメーカーはまず開発費や開発に要する時間、オリジナル回路のリスク(市場不良など)に対する責任はほぼ発生しません。
さらに今の時代、ネットを探せば既製品の回路図なんて簡単に手に入りますし、昔のようにリバースエンジニアリング(製品実物から回路を読み解くこと)をする苦労もお金もかかりません。
なので、電気電子の知識がなくても作れてしまう。。。
そして、コピー元製品の品質が良ければ、なんの苦労もなく優良な製品が作れてしまいます。
以上のように、そこそこの品質を伴ったコピーメーカーって比較的苦労せずに誰でもできるんです。
あとは多少コストをかけて外観さえ既製品のようにすれば立派なメーカーになれます。
そして、悲しいことに、そういうコピー製品って売れるんですね。。。
おそらく買う側も”有名なx○のコピーだから音は確か”という安心感もあるのでしょう。
手に入りにくかったり、あまりに希少すぎて値段が高すぎるオリジナル製品が欲しい場合、コピー品があればそれで事足りるのも事実です。
という売り手側の作りやすさと売りやすさ、買い手側の買いやすさが合致していて、かなりのビジネスになっていると思われるのが今の日本のエフェクター市場の内情だと思います。
この実情について、もちろん僕がそれを否定する権利はありません。
しかし中にはコピー品、クローン品と謳わずオリジナル製品という体(てい)で売ってるメーカーがあったり、x○という有名既製品に”インスパイヤー”されて作った、みたいに僕に言わせればコピーではないと逃げているメーカーもあり、僕は心情的にはあまり快くは思わないです。
他人の褌で相撲を取るという言葉がそのまま当てはまりますので。。。
インスパイアー品は丸コピーではなく、回路定数(抵抗値やコンデンサの容量値)を変えて音をモディファイしていると主張するメーカーもあると思いますが、僕に言わせればコピーとほぼ同じです。
強いて一つ言えば、コピーメーカーも製品の外観だけはカッコよく作っていますね。
そこは買い手の心をかなりくすぐるポイントだとは思います。
以上のようなコピーメーカーに対して僕が常々疑問に思うことは、彼らはどういう気持ちや目的でメーカーをやってるのだろう?ということなんですね。
間違いなく言えることは、自分の頭と耳で生み出した自分オリジナルの作品で勝負しようという考えや概念はまずないだろうということ。
これはコピー品である限り、できないことは明らかです。
というと、やはり利益を出すことが主な目的であって、自分の能力がどこまで通用するかというような部分は欠落しているとも想像できます。
しかし彼らには、そもそも自分のセンスで勝負するというところに価値観はないのでしょうね。
だから僕のような人間が何をどう言っても、残念ながら価値観の違いということで決して交わることはないんでしょう。
あと、僕が心配することは、もし製品に不具合があって修理依頼が来たとき、彼らは原因を見つけて修理できるのだろうか、ということ。。。
また、お客様から製品内部に関する質問が来た場合、適切に回答できるのだろうか、ということも心配します。
特に不具合解析は電気的な知識がないとまず無理で、そうなるとできることは新品交換くらいになるでしょうね。。
まあ、それでいいと言うならそれ以上僕が何かいうことはありませんが。。。
では僕の価値観とは何なのか。
まず、利益オリエンテッドでないうことは最初に言っておきます。
もちろんお金が儲かればそれに越したことはないのですが、それなら僕もコピー、クローンを作って売るでしょうね(死んでもやりませんが!)。
しかし僕はそこではないんです。
僕は過去にソニー、東芝、今でも外資系メーカーでエンジニアとして昼の仕事(!)をしています。
ソニーでは長らくカラーTVの映像信号処理ICの設計をやっていて、晩年のブラウン管TVは裏蓋を開けると中はスカスカ、その映像信号処理ICが大きい基盤の真ん中に鎮座ましましているという感じでした。
そしてそのICがTVの画質を決めると言っても過言ではなかったです。
当時は家電の花形といえばカラーTVでしたので、国内外含めてその性能競争はまさしく生き馬の目を抜く状況でした。
なので、新製品を開発する段階では、試作品をいろんな他社のTVと並べて画質を比較するんですね。
そこで、決して負けちゃいけないんです。
負けは許されない。
東芝時代は超低ノイズオペアンプや電源ICの開発をしていましたが、競合(強豪!)他社のデータシートと比較されて、数値で定量的に勝負させられました。
もちろん、カラーTVも電子部品のICもそこに他社が持っていない新機能などをふんだんに盛り込み、頭1個2個抜きん出る必要があるんです。
そうしないと世界に認めてもらえない、売れないんですね。
そういう非常に厳しい状況には置かれていましたが、これは自分という人間が世界でどれだけ通用するかの腕試しをするのにいい場所になるんです。
そこで僕はオリジナル製品、オリジナリティというところに価値を見出すようになったんです。
他社と同じようなカラーTVやICを作る、ましてや丸コピーするなんて、僕には耐えられない屈辱です。
なぜなら、負けを認めることですので。。。
負けるなら、最後までそのままの自分を押し通して納得して負けたいですね。
そしてその腕試しにはロマンがあったし夢もあった。
以上を一言でいうと、自分の存在価値なんですね。
僕がカラーTVやオペアンプを開発するのに価値がある人間なのか。
それを確かめたくもあり、存在価値を出したくもあった。
そしてこれは今僕がやっているエフェクターに対しても全く同じです。
コピーメーカーの存在価値って何?
いや、コピーなら中国のメーカーに勝てませんし、その時点で存在価値がなくなってしまいます。
中国の通販アプリで探してみればわかりますが、いろんなエフェクターのコピーが驚くような安価で売られています。。。
そこにどうやって勝つのか??
強いていえば、先程言ったように、外観だけでしょう。。。
僕はエフェクター開発においても、僕でなきゃ作れない製品を1個でも多く世の中の人に使っていただいて、喜んでいただくことに価値観を見出しています。
なので、これ面白い機能でしょ?!面白い音でしょ?!こんなの他にないでしょ?!FSLしかないでしょ!という製品を開発していきたいんです。
どうですか、ロマンがあるでしょう!!
僕の製品を購入していただいたお客様の中にはメールで感想を言ってくださる方がいて、すごくありがたいです。
そこに”こんな機能初めて見た”とか”いい音ですね!”、”もっと広まってほしい”というレスポンスがあると、本当に嬉しいです。
その瞬間がエフェクターブランドをやってて良かったと思える瞬間であり、自分の存在価値が少しづつ高まっていくことを感じています。
僕はコピー(クローン)メーカーをやめろなんて決して言いません。
どうぞご自由にやってくださいという感じです。
しかし、技術立国と言われた日本のメーカーがコピー品を作って喜んでいることには僕はやはり寂しさを感じてしまいます。。。
もっと日本のレベルを底上げしていきたいとも思っています。
何かを生み出すときにロマンを感じることがでるというのは僕は幸せなことだと思っていますので、僕はそれを続けていこうと思っています。
それに共鳴してくださるお客様がより多くいれば、なお幸せですね!
そこにロマンはあるんかぁ?
あ!すんません、パクりました!!
ファッツサウンドラボラトリー
代表:厚木ファッツ
※お客様が共鳴できない場合のことも考えて、FSLは商品到着から10日間以内に申告していただければ、返品OK、全額返金システムを取っています。
(返送料はお客様負担となりますが。。。)
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