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警告:ケトジェニックダイエットの新たな研究で判明した4つの健康リスク

※この記事は約10分で読めます

「痩せるためなら何でもいい」 そう思っていませんか?
2024年8月、イギリスのバース大学から衝撃的な研究結果が発表されました。

人気の痩せ方として知られる「ケトジェニックダイエット」に、私たちの健康を脅かす重大なリスクが潜んでいることが明らかになったのです。

この記事がおすすめの人

  • ケトジェニックダイエットに興味がある方

  • 現在ケトジェニックダイエットを実践している方

  • 糖質制限で痩せようと考えている方

  • 健康的なダイエット方法を探している方

注意してほしいこと
この記事の内容は健康・疾患・医療に関する一般的情報と個人の見解を提供するものであり、実際に診療する医療者が行うアドバイス・治療に代わるものではありません。必ずしも全ての方にあてはまる訳ではないのでご留意ください。

私は薬剤師として働く中で、多くの患者さんから「ダイエットの相談」を受けてきました。特に最近は「ケトジェニックダイエット」について質問される機会が増えています。

確かに、短期的な効果は期待できるかもしれません。しかし、今回紹介する研究によると、長期的にみると健康リスクが潜んでいるようです。
いったい、どのような健康リスクが明らかになったのでしょうか? そして、私たちはどのように対応すべきなのでしょうか?

ケトジェニックダイエット、なぜ今こんなに人気なのか?

「炭水化物を制限すれば痩せられる」
この単純明快なメッセージが、多くの人の心をつかんでいます。SNSやメディアでは連日のように、ケトジェニックダイエットの成功例が紹介されています。

実際、アメリカの調査会社による2023年の報告では、ダイエット方法の検索ワードで「ケトジェニック」が前年比で150%以上増加。日本でも同様の傾向が見られ、「完全無糖」「糖質オフ」といった商品が続々と発売されています。

なぜこれほど支持されているのか?

ケトジェニックダイエットが支持される理由は主に3つあります:

  1. 比較的早く結果が出やすい

  2. 食事制限のルールがシンプル

  3. 空腹感を感じにくい

特に「早く結果が出やすい」という点は、多くの人を引きつける大きな魅力となっています。

期待される効果とは?

支持者たちが主張する効果には以下のようなものがあります:

  • 体重減少

  • 体脂肪の燃焼促進

  • 血糖値の安定

  • 集中力の向上

  • 肌の調子改善

こうした効果を実感する人が確かにいることは事実です。

しかし、新たな研究結果が問題を提起

2024年8月、バース大学の研究チームが53名の健康な成人を対象に行った研究で、衝撃的な事実が明らかになりました。

ケトジェニックダイエットは確かに体重は減少するものの、その過程で私たちの体に予想以上の負担がかかっていることが判明したのです。

研究チームのアロンヘニスト博士は警鐘を鳴らします。
「体重減少は達成できるかもしれません。しかし、その代償として、重大な健康リスクが伴う可能性があることが明らかになりました」

実際、どのような健康リスクが明らかになったのでしょうか?次章では、最新の研究で判明した5つの重大なリスクについて、詳しく見ていきましょう。

最新研究で判明した4つの健康リスク

バース大学の研究で明らかになった健康リスクについて、詳しく見ていきましょう。特に注目すべきは、腸内環境の悪化とコレステロール値の上昇です。

①腸内環境の悪化 - 善玉菌が激減する

研究に参加した被験者の多くで、腸内細菌叢の大きな変化が確認されました。特に深刻だったのは、健康維持に重要な「ビフィズス菌」の減少です。

なぜビフィズス菌が減少するのか?

研究を指導したラッセル博士は、その原因を「食物繊維の著しい不足」と指摘しています。

ケトジェニックダイエットでは、1日の食物繊維摂取量が15グラム未満になってしまいます。これは推奨量(20-25グラム)の半分程度です。食物繊維は善玉菌の餌となるため、これが不足すると善玉菌が生存できなくなるのです。

腸内環境の悪化がもたらす影響

  • 免疫力の低下

  • 消化器系の不調

  • 感染症へのリスク上昇

  • メンタルヘルスへの悪影響

  • 栄養素の吸収効率低下

②コレステロール値の上昇 - 動脈硬化のリスクが高まる

さらに深刻な問題として、LDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)の上昇が確認されました。

研究で判明した具体的な数値

  • LDLコレステロールの平均上昇率:10-15%

  • 動脈硬化の原因となるアポBタンパク質の増加

なぜコレステロール値が上昇するのか?

アーロン・ヘンギスト博士は以下のように説明します
「ケトジェニックダイエットでは、エネルギー源として脂肪の摂取量を増やします。しかし、食事の極端な偏りにより、体のコレステロール代謝バランスが崩れてしまうのです」

動脈硬化リスクの上昇

コレステロール値の上昇は、以下のような深刻な健康リスクにつながる可能性があります:

  • 心臓病のリスク上昇

  • 脳卒中の可能性増加

  • 血管の老化促進

「短期的な減量効果と引き換えに、長期的な健康リスクを抱え込む可能性があります」とアーロン博士は警告しています。

では、残りの3つのリスクについても見ていきましょう...

③耐糖能の低下 - 糖尿病リスクが増加

研究を監督したハビエル・ゴンザレス教授は、最も懸念すべき点として「耐糖能の低下」を指摘しています。

耐糖能とは、体が血糖値を適切にコントロールする能力のことです。普段の食事では、私たちの体は摂取した糖質を効率よく処理し、エネルギーとして活用しています。

しかし、ケトジェニックダイエットによって極端に糖質を制限すると、この処理能力が徐々に低下していきます。まるで使わない筋肉が衰えていくように、糖質を処理する体の機能も弱まってしまうのです。

特に注意が必要なのは、通常の食事に戻す時期です。ゴンザレス教授は「この時期が最も危険」と警告します。なぜなら、弱まった糖質処理能力のまま通常の食事に戻すことで、血糖値が急激に上昇し、体重も予想以上に増加する可能性が高いからです。さらに、インスリンの働きも低下しているため、将来的な糖尿病リスクが高まることも懸念されています。

④食物繊維不足 - 深刻な栄養バランスの崩れ

研究では、ケトジェニックダイエット実施者の食物繊維摂取量が著しく低いことが明らかになりました。

通常、成人の1日の食物繊維推奨量は20-25グラムですが、ケトジェニックダイエットでは平均して15グラム未満まで低下してしまいます。

これは、全粒穀物や豆類、根菜類、果物といった食物繊維が豊富な食品を制限することで起こる必然的な結果です。

食物繊維は昔は「体にとって必要のないもの」と言われてきました。しかし、今では腸内細菌の餌となることがわかり、私たちの健康を支える重要な栄養素なのです。

食物繊維が不足すると、便秘などの消化器系トラブルだけでなく、腸内細菌の多様性が失われ、栄養素の吸収にも影響を及ぼします。

また、食物繊維には満腹感を持続させる効果もあるため、その不足は過食のリスクも高めてしまいます。

では、これらのリスクを踏まえた上で、私たちはどのように対応すべきなのでしょうか?

健康的に痩せるには、どうすればよいのか?

ここまで、ケトジェニックダイエットのリスクについてお伝えしてきました。では、健康を損なうことなく体重管理を行うには、どうすれば良いのでしょうか?

基本は「バランスの取れた食事」に戻ること

私は薬剤師として、多くの患者さんの食生活を見てきました。その経験から言えることは、極端な制限よりも、食事の質を上げることの方が、はるかに効果的だということです。

大切なのは、三大栄養素(炭水化物・タンパク質・脂質)のバランスを保ちつつ、その質を高めていくこと。厚生労働省が提唱する「健康な食事」の基準では、以下のような割合が推奨されています:

  • 炭水化物:50-60%

  • タンパク質:20-30%

  • 脂質:20-30%

このバランスを保ちながら、これらの栄養源である食材をできるだけ良質なものに置き換えていくことが大切です。

例えば、炭水化物は玄米など全粒穀物に。野菜や果物をたっぷり食べることも大切です。またタンパク質や脂質は、肉類や加工肉をできるだけ減らし、魚や大豆製品から食べるようにしましょう。

極端な制限は、必ずどこかで破綻します。大切なのは、「続けられる」食事法
を見つけることです。

効果的で安全なダイエット、成功の3つのポイント

ここまでケトジェニックダイエットのリスクと、基本的な考え方についてお伝えしてきました。ここからは、より具体的な実践方法についてお話しします。

1. 栄養バランスを整える - 「引き算」ではなく「足し算」の発想で

多くのダイエット法は「〇〇を制限する」という「引き算」の発想です。しかし、それでは長期的な健康は得られません。大切なのは、必要な栄養素を適切に「足していく」という考え方です。

私が患者さんにお勧めしているのは、まず「良質なタンパク質」を意識的に摂ることです。魚や大豆製品などから、体重1kgあたり1.2-1.6gのタンパク質摂取を目指しましょう。これは筋肉量を維持しながら、健康的に痩せるための基本となります。

次に、食物繊維が豊富な野菜を積極的に摂ります。野菜は低カロリーで栄養価が高く、腸内環境も整えてくれます。毎食、血糖値の急上昇を防ぐため、野菜から食べ始めることをお勧めします。

2. 適度な糖質コントロール - 「制限」ではなく「選択」を

極端な糖質制限は避けながらも、賢く糖質をコントロールすることは可能です。大切なのは、糖質の「質」です。

例えば、白米を毎食大盛りで食べていた方なら、最初は「玄米と白米を混ぜる」ところから始めてみましょう。その後、徐々に玄米の割合を増やしていきます。急激な変更は避け、体が適応できるペースで進めることが重要です。

3. 継続可能な方法を見つける - 「我慢」から「習慣」へ

最も重要なのは、継続できる方法を見つけることです。どんなに理想的な食事法でも、続けられなければ意味がありません。

私がお勧めするのは、「80-20の法則」です。80%は健康的な食事を心がけ、20%は多少の贅沢も認める。この柔軟な姿勢が、長期的な成功につながります。

例えば、平日は計画的な食事を心がけ、週末は多少リラックスする。または、一日の中でも、主要な食事は意識的に管理し、間食で少し楽しみを持つ。このようなメリハリをつけることで、ストレスなく続けられる食習慣が築けます。

大切なのは、自分の生活リズムに合った方法を見つけることです。朝型の人は朝食をしっかり摂り、夜型の人は夕食の工夫を。一人一人の生活スタイルに合わせた、オーダーメイドの食習慣を作っていきましょう。

「痩せること」は目標ではなく、「健康的な体を維持すること」が本当の目標です。その視点に立てば、極端な制限は必要ありません。賢く、楽しく、そして長く続けられる方法を、一緒に見つけていきましょう。

まとめ:健康的な体重管理への新しい視点

研究結果から見えてきたこと

今回のバース大学の研究は、現代のダイエット業界に大きな警鐘を鳴らしました。確かにケトジェニックダイエットには短期的な減量効果があります。しかし、その代償として、私たちの体は以下のようなリスクにさらされることが分かりました:

  • 腸内環境の悪化による免疫力低下

  • コレステロール値の上昇による心血管系への影響

  • 耐糖能の低下による将来的な糖尿病リスク

  • 栄養バランスの崩れによる様々な健康障害

目の前の問題だけをみるのではなく、長期目線で改善していくことが大切です。

これからの食事法への提言

私は日々、「薬に頼らない健康な体づくり」を目指して、患者さんをサポートしています。その経験から、以下の3つを特に重要なポイントとしてお伝えしたいと思います:

  1. 極端な制限は避け、バランスの取れた食事を基本とする

  2. 自分の生活リズムに合った、続けられる食習慣を見つける

  3. 体重計の数字だけでなく、体調の変化にも注目する

読者の皆さんへのメッセージ

「とにかく痩せることが健康に良い」この考え方が、実は間違っているのかもしれません。
むしろ、「健康的な生活習慣の結果として、適正体重が維持される」このように考え方を転換してみてはいかがでしょうか。

一時的な体重減少より大切なのは、10年後、20年後の健康です。今回の研究結果を、ぜひその視点で受け止めていただければと思います。

急がず、焦らず、そして何より楽しみながら。 健康的な体づくりへの一歩を、今日から始めてみませんか?

参考文献

主要研究データ

  • Bath University Research Team. (2024). "Long-term Effects of Ketogenic Diet on Metabolic Health and Gut Microbiota" Journal of Clinical Nutrition

  • Aron Henist, et al. (2024). "Cardiovascular Risk Assessment in Low-Carbohydrate Diets" Metabolism Clinical and Experimental

  • Russell Laboratory Studies. (2024). "Gut Microbiome Changes During Ketogenic Diet" Microbiome Journal

その他の参考資料

  • 厚生労働省. (2024). 「日本人の食事摂取基準」

  • 日本糖尿病学会. (2024). 「食事療法ガイドライン」

  • 日本腸内細菌学会. (2024). 「腸内細菌叢と健康に関する報告書」

  • World Health Organization. (2024). "Guidelines on Healthy Weight Management"

※本記事の内容は、2024年8月時点での最新の研究結果に基づいています。新しい研究結果により、見解が更新される可能性があることをご了承ください。
健康・医療に関する重要な決定は、必ず医療専門家に相談の上で行ってください。

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