見出し画像

日本人が不足しがちな栄養素と、効率よく補う4つの食材

※この記事は約8分で読めます

「食事に気をつけていれば薬は必要なかったかもしれない…」

薬剤師として働く中で、こんな言葉を何度も耳にしてきました。特に生活習慣病の治療薬を受け取りに来られる方々からです。
確かに、薬は症状を和らげることはできます。しかし、根本的な原因に対処しなければ、どれだけ薬を飲み続けても完治は難しいのです。

私は10年以上、薬剤師として多くの患者さんと関わってきました。その経験から痛感したのは、「予防」の重要性です。特に、私たちの健康を支える栄養素の不足は、様々な病気のリスクを高める大きな要因となっています。

実は、日本人の多くが気づかないうちに栄養不足に陥っているという事実があります。2023年5月に日本栄養・食糧学会で発表された最新の研究によると、現代日本人に不足しがちな栄養素が13種類も存在することが明らかになりました。

でも、朗報があります。

たった4つの食材を意識的に取り入れることで、これらの栄養素を効率よく補えることがわかったのです。今回は、その研究結果をもとに、誰でも実践できる具体的な方法をお伝えします。

この記事がおすすめの方

  • 健康診断で気になる数値が出始めている方 ・将来の病気が心配で予防に関心がある方

  • 普段から健康に気を使っているけど、効果的な方法がわからない方

  • 忙しくて食事管理が難しい方 ・サプリメントに頼りすぎていると感じている方

注意してほしいこと
この記事の内容は、健康・疾患・医療に関する一般的な情報提供を目的としています。すでに治療中の方は、必ず主治医に相談の上で実践してください。記事の内容は、実際の診療や治療に代わるものではありません。



深刻化する日本人の栄養バランスの乱れ

「バランスの良い食事を心がけましょう」

この言葉を私たちは頻繁に耳にします。しかし、現代の日本人の食生活には深刻な課題が潜んでいます。

日本は現在、「栄養不良の二重負荷」という特殊な栄養問題に直面しています。

これは、過剰な栄養摂取による肥満や生活習慣病の問題と、必要な栄養素が不足する低栄養の問題が同時に存在している状態を指します。

栄養不足の実態

2023年5月、日本栄養・食糧学会の研究で明らかになった衝撃的な事実があります。日本人の食事では、実に13種類もの重要な栄養素が不足していることが判明したのです。

具体的には以下の栄養素です:

  • たんぱく質

  • 食物繊維

  • ビタミン類(A、D、B1、B2、B6、葉酸、C)

  • ミネラル類(カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛)

この深刻な栄養不足の背景には、現代の食生活の変化があります。毎日の食事の30〜40%が「超加工食品」で占められており、これらの食品では多くの重要な栄養素が失われています。

栄養不足がもたらす健康への影響

薬剤師として数多くの患者さんを診てきた経験から、栄養不足は以下のような健康問題を引き起こすことがわかっています:

  • 慢性的な疲労感や倦怠感

  • 免疫力の低下

  • 骨密度の低下

  • 筋力の減少

  • 生活習慣病のリスク上昇

特に注意が必要なのは、これらの症状が徐々に進行するため、気づいたときには既に病気が進行しているケースが多いという点です。

予防医学の観点から

重要なのは、これらの健康問題の多くが適切な栄養摂取で予防できるということです。薬は症状を和らげることはできますが、根本的な原因である栄養不足を解消することはできません。

例えば、高血圧の患者さんの多くでカリウムやマグネシウムの不足が見られます。これらのミネラルを十分に摂取することで、血圧のコントロールがより効果的になる可能性があります。

では、具体的な対策とは何でしょうか?

この研究で、たった4つの食材で効率的に不足栄養素を補えることがわかってきました。次の章では、その具体的な食材と摂取方法についてご紹介していきます。

栄養不足を補う4つの食材

2023年の研究で明らかになった、不足しがちな栄養素を効率的に補える4つの食材をご紹介します。これらは日本の食文化に馴染み深く、日常生活に取り入れやすい食材ばかりです。

1. 茶(緑茶・烏龍茶・紅茶など)

お茶には、水溶性食物繊維、ビタミンC、カリウム、マグネシウムなどの重要な栄養素が豊富に含まれています。特に注目すべきは、強力な抗酸化作用を持つカテキン類です。これらの成分は細胞の老化を防ぎ、血圧の安定化や腸内環境の改善に貢献します。また、脂質代謝を促進する効果も期待できます。

効果的な摂取方法

  • 1日3〜5杯を目安に、食間や食後に飲む

  • 急須でいれる場合は80〜90度のお湯で2分程度が最適

  • 熱すぎるお湯は苦みが強くなるため注意

2. コーヒー・ココア

コーヒーとココアには、食物繊維、ビタミンB群、カリウム、マグネシウム、ポリフェノール類が含まれています。これらの成分は代謝機能の向上や血糖値の安定化に寄与し、脳機能の活性化も促します。

おすすめの飲み方
コーヒーは1日3杯程度を目安に、ココアは食後のデザートとして楽しむのがベストです。ただし、砂糖や乳製品の過剰な添加には注意が必要です。また、空腹時の摂取は胃への刺激が強くなる可能性があるため、控えめにすることをお勧めします。

3. きのこ類(しいたけ、えのき、まいたけなど)

きのこ類はたんぱく質、食物繊維、ビタミンD、ビタミンB群、亜鉛といった栄養素の宝庫です。これらの成分は免疫力の向上や骨密度の維持に重要な役割を果たします。また、腸内環境の改善や体内の解毒作用の促進にも効果があります。

効果的な調理法
毎日の料理に50g程度を目安に取り入れましょう。生食よりも加熱調理がおすすめです。加熱により栄養素の吸収率が高まり、うま味も増します。干しきのこの戻し汁には栄養が溶け出ているため、スープや煮物に活用すると良いでしょう。

4. 藻類(わかめ、のり、ひじきなど)

藻類には食物繊維、ビタミンA、カルシウム、鉄分をはじめとする豊富なミネラル類が含まれています。これらの栄養素は貧血予防や骨の健康維持、甲状腺機能の正常化、そして便秘予防に貢献します。

日常的な取り入れ方
味噌汁や副菜として取り入れるのが効果的です。乾燥品を使う場合は戻し過ぎに注意が必要です。生のわかめやのりは手軽な間食としても活用できます。保存の際は高温多湿を避け、乾燥した状態を保つことが重要です。

これらの食材は、単体で摂取するよりも、日々の食事の中で組み合わせることでより効果的に栄養を補うことができます

まとめ:健康な未来のために今日からできること

これまでご紹介してきた内容を振り返ってみましょう。2023年の研究により、現代の日本人には13種類もの栄養素が不足しがちだということが明らかになりました。しかし、茶、コーヒー・ココア、きのこ類、藻類という身近な4つの食材で、これらの栄養素を効率的に補えることもわかっています。

予防医学の観点から見ると、病気になってから治療を始めるよりも、予防の段階で適切な対策を取ることが重要です。栄養バランスの崩れは、様々な健康問題の引き金となりますが、それは同時に、私たちが食事の改善を通じて健康をコントロールできるということでもあります。

明日から始める具体的なアクション

ステップ1:現状把握
まずは今の食事を見直してみましょう。毎日の食事に上記の4つの食材がどのくらい含まれているでしょうか。

ステップ2:簡単なところから
最も取り入れやすい食材から始めてください。例えば、普段の飲み物を緑茶やコーヒーに変えるところから。

ステップ3:継続的な改善
少しずつ他の食材も加えていき、徐々にレパートリーを増やしていきましょう。一度に完璧を目指す必要はありません。毎日の小さな積み重ねが、やがて大きな変化をもたらします。

参考資料

  • 『現代日本の食生活において不足しがちな栄養素を茶、コーヒー・ココア、きのこ類、藻類で効率的に補えることが明らかに』(第77回日本栄養・食糧学会大会、2023年5月)

  • 日本人の食事摂取基準(2020年版)

  • 令和元年国民健康・栄養調査

  • World Health Organization(WHO)の健康的な食事に関するガイドライン

いいなと思ったら応援しよう!